総合多様性があるから面白い! カヤック人事に聞く「面白採用の作り方」
面白法人カヤック。一度はその名前を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
同社は「日本的面白コンテンツ事業」を掲げるWeb制作企業で、サイコロを振って給料を決める「サイコロ給」や、社員の似顔絵を名刺にする「漫画名刺」など、斬新な取り組みを数多く行っています。
そんなカヤックは、人材を採用するときも、ユニークな方法を次々と実施しています。中でも話題になったのが「いちゲー採用」。2010年から開始している「面白採用キャンペーン」の一環で、「ゲームのうまさで内定を出す」という型破りな選考でした。2017年3月からスタートしたこの採用には、2017年6月の時点で300名以上の応募が殺到し、すでに2名が採用されています。採用難の時代をものともせず、応募を殺到させる秘訣は何なのでしょうか?
今回、「エゴサーチ採用」と「いちゲー採用」を考案した、人事のみよしこういちさんに取材を敢行。さらに「面白採用」で採用された社員2名にインタビューを行い、「面白採用で採用された社員は本当に面白いのか?」を調べてきました。
(写真は左から「エイプリル採用」で入社した小坂祐貴さん、人事のみよしこういちさん、「エゴサーチ採用」で入社した野村岳史さん)
第一回インタビューでは、「いちゲー採用」と「エゴサーチ採用」を考案した人事のみよしさんのインタビューをお伝えします。
みよし こういち
筑波大学大学院・数理物質科学研究科を修了後、就職せずボードゲームを作って生計を立てる。シナリオライターの学校やよしもとの学校を卒業後、面白法人カヤックの人事部に参加。これまでに、バスで日本各地をまわる「旅する会社説明会」や検索ワードだけで応募できる「エゴサーチ採用」、ゲームの上手さで内定を出す「いちゲー採用」などの企画を手がける。
自社が得意とする「広告」の手法を「採用」に応用
- ―面白採用がはじまった経緯と目的を教えてください。
はじまったのは2009年ですね。
当時は面白法人カヤックという名前が今よりも無名だったので、新卒採用を始めるときに、あまり知られていない状態で新卒採用をやってもうまくいかないという話になりました。
そこで、うちの会社が広告事業をやっているので、広告の手法、特にバズの手法を使って、SNSで話題になるような採用をやれば、自分たちの強みが生かせるな、と考えたのがきっかけです。
また「面白法人」と名乗っているので、できるだけ今までにないこと、他がやっていないことをやろうと。その頃はまだナビサイトが全盛期だったので、ナビサイト以外の方法を作ろうと考えていました。
「エゴサーチ採用」の採用ページ。「検索で自分の情報が一番上にくるワード」を入力し「このワードで応募する」ボタンをクリックすることで、採用にエントリーすることができる。
- ―みよしさんが立ち上げた「エゴサーチ採用」についてお聞きします。検索結果を履歴書代わりにして応募者を採用する「エゴサーチ採用」ですが、この企画を実施しようと思ったきっかけはなんでしょうか?
うちのコピーライターとプランナーから、「エゴサーチ採用というアイディアを思いついたんですけれど、どうですか。検索ワードを入れたら、応募できるというものなんですけど」と言われまして。話題が広がっていくイメージが見えたので、やろうと思ったんです。
- ―エゴサーチというと、自分の名前でSNSを検索して、自分の評価を確認してしまう、あのエゴサーチですよね。
そうです。だから実は、エゴサーチ採用というのは「名前だけで応募できて、あとは人事がその名前で検索してどんな人か探る」というのがいちばん最初の案ですね。
- ―企画の段階では「名前だけで応募」という形式だったんですね。
はい。「検索でトップに出ることを条件にしよう」だとか「ブログのタイトルやアカウントでもオッケーにしないと、名前だけでは取りこぼしてしまう人がいる」といったことを考えているうちに、「検索は履歴書になる」というフレーズを思いつきました。その時点で、「これはいけるな」というイメージがあって。あとはどうやってWebサイトと採用プロセスに落とし込んでいくのかということを2、3カ月考えましたね。
優劣をつけずに「見られていないところを見る」採用
- ―その2、3カ月は、どのようなことを考えたんでしょうか?
Webサイトの文章や、この企画をやる意味で悩んでいました。あまり「検索結果が1位の人がすごい」という言い方をしたくなかったんです。
- ―どうしてでしょうか?
僕は優劣をつけたいわけでは全くないからです。もちろん「検索結果1位の人しか1次選考を通さない」という意味においては、優劣や合否はつけているんですが、「否」だった人がうちに入れないかといったら、「エゴサーチ採用ではだめだけど、他の採用だったら別にいいんじゃないか」と思います。
面接とかエントリーシートとかで一側面でしか見られていない状況で、他の側面を見るということがやりたかったので、「検索結果1位がえらい」とか「検索結果1位以外の人がだめだ」ということではなくて、「検索結果1位の人はこれで応募したら楽だと思います」という言い方にしたかったんです。
- ―面白法人カヤック会社案内(書籍)の中で、「面白い」の定義は「多様性」だという話がありました。面白採用も多様性を大切にする採用ということでしょうか。
そうですね。もちろん、履歴書だけで面白い人が、Webではさらに面白い可能性もあります。書けることもたくさんありますからね。
検索結果が「独特」な人を評価する
- ―エゴサーチ採用がはじまったのが2015年ということでしたが、2015年にはどのくらいの応募がありましたか?
1000件くらいですかね。1次選考では1割くらいを通したので100人くらいが通過しています。最終的に採用したのは3人ですね。
- ―採用の過程では応募者のどのようなところを評価しますか?
トップに出てきたものに驚きがある人を選んでいますね。このあと登場する、「エゴサーチ採用」で採用した野村君の場合は、「墨田区の経営者」という記事が出てきました。学生起業家だったんですが、「なんでこの子が応募してきたんだろう」と疑問に思い、印象に残ったので通しましたね。
- ―他にエゴサーチ採用で応募者を評価する基準はありますか?
どれだけ違ったことをしているかや、Web上の活躍がめざましいかなどですね。1位だけじゃなく、10ページなり20ページなりがその人の記事で埋まっていて、さらにその中身が違っていたら、それだけその人はWeb上で活躍しているんだなと思います。
- ―検索トップの内容だけでなく、検索結果として出てきた他の内容も見て判断するということでしょうか?
そうですね。検索トップしか見ないというわけではないです。
一括採用は悪くないが、それ以外の方法がなさすぎる
僕は一括採用が悪いとも全く思っていないし、ナビサイトが悪いとも思ってないんです。基本的には採用のためのツールなので、使い方次第だろうと思っているんですけど。ただ、それ以外の方法がなさすぎるとは思っているんです。
サークルで代表をしていたとか、学生団体をやっていたというのは、昔はすごかったと思うんです。SNSのようなツールがなかったころは評価基準だったかもしれませんが「それを本当に書きたいのか、みんな?」とは思います。
- ―本当は書きたくないことを、みんな履歴書に書いていると?
「みんながサークルをがんばってるわけではないし、みんながバイトをがんばっているわけでもないし、大抵の人はそんなにがんばってなくない?」とは思っていました。まあ僕ががんばってなかっただけかもしれませんが。
ESには、たいていの人が学生時代「がんばったこと」を書くわけですけど、がんばってやったとしたら、それは「苦痛が伴っていることをなんとかしようとした」ことになるので、あまりよくないと思ったんですよね。僕はゲームと数学が大好きだったからたくさんやっていたんですが、好きなことを「がんばっている」とはあまり思わないんです。それは好きだからやっていたんだと思うので。
好きなことを好きにやってきた人のための採用
「いちゲー採用」の採用ページ。PS4でプラチナトロフィーを獲得した方が応募できる「プラチナトロフィー選考」、ゲームと過ごした時間や想いを思う存分書く「ゲーム履歴書選考」、用意されたゲームソフトをみんなで攻略する「協力プレイ選考」が用意されている。
- ―「面白採用」は、好きなことを好きにやってきた人のための採用、という側面があるのでしょうか?
そうですね。いちゲー採用をやったきっかけは、「ゲームをやってきたことが言いづらい」という話を聞いたことです。全国1位を大会で取っていたり、ランキング1位を取っていたりしたら、それはすごいんじゃないかなと思いまして。そういうことを書きやすいようにしたいなと思って企画しました。
エントリーシートとか面接とかグループワークとか、そういう方法で人を評価するやり方はもちろんいいと思うんですけど、それでは測れない人たち、もしくはそれ以外の方法のほうが自分をよく表せる、自分の本質を表しやすい人たちがいるとは思っていて。もちろん数少ないんですけどね。でも僕らにとっては、少ないけどもその人たちがいることが大事なんです。
「面白採用」が通常採用の広告にもなる
- ―面白採用とそれ以外の採用で入った方の、社内での比率はどのくらいでしょうか?
面白採用で入る人数は、1企画やって1~5人なので少ないんです。ただ、そのあとにカヤックのサイトの採用フォームから入る人たちが3分の1くらいはいるので、ブランディングが効いているという意味では、30~50%くらいは、面白採用に伴って入ってくる人たちですね。
- ―面白採用をやることによって、自社エントリーで入ってくる方が増えているということですか。
そうですね。「いちゲー採用」は5、6人いたのでやや多いです。すべての採用の中での面白採用の割合は、おおよそ10~15%くらいですね。
面白法人カヤックでは、人事も「つくる」
- ―採用の仕事の中で大切にしていることを教えていただけますか?
うちは「つくるひとを増やす」というのが経営理念なので、ものをつくるのが好きな人に来てほしいんですが、そのときに、求人広告で「ものづくりが大好きな人を募集しています」とか「面白い人はうちに来るといいと思います」というような広告はあまり打ちたくないです。面白くないので。
デザイナーやエンジニアやディレクターと比べると、僕はクリエイターではないですが、その人たちから「あ、いいものをつくってますね」と言われるくらいには、クリエイターらしいことをしていようと思っています。



