VOL.3 あなたは管理職として、「何のためにこのチームが存在するのか」を語れますか?

総合VOL.3 あなたは管理職として、「何のためにこのチームが存在するのか」を語れますか?

井上 社員がイキイキと、当事者意識を持って、日々の仕事の手ごたえと満足度を感じる会社は、経営がガラス張りで、評価がフェアである、と。敢えて聞くけれど、それは規模によらずどこにでも共通していることだろうか。

前川 規模にはよらないね。人を活かすという観点でいくと、むしろ中小企業の方が進んでいる。採用力が弱いから。それこそ優秀な、経験値豊富な30代の人を採りたいと思っても採れないからね。そうなると、今いる人たちに最大限頑張ってもらうしかない。そこで、人を活かす経営能力が磨かれるんだと思う。
逆に大企業の方が、優秀な人材はたくさんいるけれど、40~50代の男の人はみんな金太郎飴みたいになって、その能力を活かしきれていない企業が散見される。一人ひとりが持ち味や個性を活かせず組織に埋もれてしまうのは、本当にもったいない状況だと思う。

DSC04166
井上 女性の登用もそうだね。

前川 本当にびっくりするけれど、女性であるというだけで、会議に出させてもらっていないとか、名刺を持たせてもらっていないとかね。本人も当たり前だと思っているし、男性の管理職や経営者も、「女性スタッフも会議に出した方がいいんだっけ?」みたいな意識の会社も多い。僕からしたら、ありえないと思うけれど、そういう会社は多い。
例えば、うちの社員でFさんという女性がいる。最初はパートで入ってもらい、その後、彼女の可能性に気づいた僕は三顧の礼でお願いして社員になっていただいて、営業やプロデュースなど全部をやってもらっている、とても優秀な社員です。ところが、彼女が大手企業で働いていたときには、「上司から意見を聞かれたことがない」というんだよね。逆に、「前川さんはじめFeelWorksの仲間は、何かあると『どう思う?』と聞いてくる」と(笑)。僕は、せっかく優秀な人がいるのにその意見や能力を活かせないともったいないなあと思って聞いているんだけどね。

井上 先ほどの話に戻すと、社員のモチベーションを上げるためにも、財務状況をガラス張りに、といったことを提案することもある?

前川 僕たちの専門は「人を活かす」ことで、財務コンサルティングはドメインではないので、さすがにそこまではない。ただ、今一番「上司力」でこだわっているのは、先ほども言ったように、「ポストと報酬による外発的動機付けから、チームの目的と個々の尊重リスペクトによる内発的動機付けに変えていきましょう」ということ。
今までは、頑張ったら頑張った分だけ出世して、それに応じて報酬も上がっていくことがインセンティブだった。しかし、今、女性の活躍推進コンサルティングをしていても、昇進意欲のある女性って4割しかいない。男性も含めた若手社員というくくりで見ても、彼らは管理職になりたくない。上司を見ていると、忙しいばかりで責任も大きいから、あんなふうになりたくないと思っている。

井上 そこで彼らに「頑張ったら課長になれるよ」と言ってもモチベーションは上がらないよね。

前川 管理職が、ビジョンや目的と、数値目標との違いを整理できていないのも問題だよね。例えば、部長クラスや役員クラスの人でさえ、「あなたの束ねている組織の目的は何ですか?」と尋ねても、明確な答えが返ってこないことがある。営業本部長の場合で言うと、「今期のビジョンは何ですか?」と聞いているのに、「売上目標◎◎億です」と答えたりね。
経済的な豊かさがすべての人の共通目的だった昔はそれでもよかったけれど、今は違う。「売上が上がっても別に嬉しくない」と思う社員たちを束ねるには、ちょっと青臭いけれど、「何のためにこのチームが存在するのか?」という、社会貢献を重視すること。会社全体で言えば経営理念や中期経営計画でおける中期ビジョンをしっかりと立てる。それを踏まえて、一人ひとりが持ち味や強みを出してどうやって貢献していくのか? というような役割設計をしっかり積み重ねて組織戦略を練る――。我々はそうした支援を、通年のアクションラーニングで徹底的に支援している。

井上 実際問題、いま前川君が話してくれたことは、僕もリクルートで育っていることもあって、考え方はすごく一致している。

前川 社員の帰属意識の薄さというのは、経営層や現場の上司にもその一因があるよね。部下に対して、仕事の目的やチーム全体の中での自分の役割をしっかり伝えている人は少ない。
リクルート時代の経験にもそんなことがあった。僕が統括編集長になったときに、チームリーダーを一人ひとり呼んで、「あなたの仕事は何ですか?」と質問してみたら、みんな自分の担当業務を説明するだけで、チーム全体が何を目的に働いているのかを語る人は誰もいなかった。これでは、チームワークや部署間の連携にも問題が出て当然だった。
やっぱり、管理職は部下と丁寧な対話をして、チームの目的やそれぞれの役割や、お互いの仕事がどう連携しているのかといったことを、きちんと説明してあげないといけない。

井上 企業に対して幹部社員をご紹介する僕の立場から言うと、紹介する企業にもビジョンがあり、一方、幹部として採用される側の人にも、自分なりのビジョンや理念は持っていてほしいと思う。転職の場合は、それがある面でちゃんと合致する会社がいいですよという話をしているわけだけれど、先ほどの前川君の話に戻すと、転職ではなく、既存の人たちの研修の中でそういったことを考えてもらったときに、寝た子を起こすような話になるケースもあるんじゃないかなと思うんだけど、どうなんだろう?
つまり、「今まで気づかなかったけど、もう一回自分のビジョンや、やりがいや、人生のテーマといったことをちゃんと考えてみたら、自分の居場所はここではないと気付いた」みたいなことが……。

DSC04157
前川 それは正直あるかもしれない。例えば、自分自身でキャリアを考え、会社に対する貢献は何かと考えていくということは、結局、社員に自立を促しているわけだからね。そうした内省の結果、実は今いる会社が、自分の目指している方向と違うと気づいたときには、それはそれで仕方がないんじゃないかと思っている。
例えば、うちには、今年設立した、株式会社働きがい創造研究所の社長になってもらった田岡英明という逸材がいるんだけど、彼は某製薬メーカーでトップ営業マネージャーだった。それで、40歳ぐらいのときに次世代経営幹部候補に選ばれて、さまざまな業種の人と交流しながら、自分の就業感をもう一度考え直すことをした結果、「自分のやりたいことはMR(医薬情報担当者)ではない」と気づいてしまったという。「やっぱり、人を育てることをしたい。若い人たちの目を輝かせてあげたい。そして、その先に、子供たちの目が輝く社会をつくりたい」という思いが抑えられなくなり、FeelWorksに入ってきたんだよね。

井上 それで、いいと思う。働いている中でそういった思いが創られていくことがあるから。別に田岡さんが最初に製薬メーカーに入ったことが間違っていたわけではなくて、そこでいろいろ経験したことを踏まえて現在があると思うのでね。