離職者の多い会社にありがちな6つの特徴 社員を適正に評価できない会社は伸びない

総合離職者の多い会社にありがちな6つの特徴 社員を適正に評価できない会社は伸びない

あなたの会社は、次々と人が辞めてしまい、人材確保に苦労していませんか。私は人事コンサルタントとして1000社を超える企業を見てきました。拙著『人が辞めない会社がやっている「すごい」人事評価』にも詳しく解説していますが、次々と人が辞めてしまう「残念な会社」には、共通する6つの特徴があります。

次々と人が辞めてしまう「残念な会社」の特徴

(1)社員を甘やかし、ほめてばかりいる

先日、あるテレビ番組を見ていたら「とにかく社員をほめる!」という企業が紹介されていました。ほめて伸ばすのは、確かに一理ある人材育成法です。しかし、「ほめる」と「甘やかす」は違います。多くの企業がこの違いを認識できず、社員を甘やかした結果、彼らの増長を許し、生産性を下げてしまっている現状があります。

人材不足の状況を受けて、一部の企業は、「社員に迎合し甘やかすことが人材流出を防ぐ唯一の手段である」と勘違いしてしまったのです。

(2)「ワンフレーズ」で企業の方針を示している

社員迎合型の企業、人材育成に関して明確なポリシーを持たない多くの企業には、共通の特徴があります。彼らは、「充実の福利厚生」といったワンフレーズのスローガンを、やたらと強く打ち出す傾向があるのです。

スローガンは単なる言葉であり、その企業に決定的に欠けている要素の裏返しです。しかし、企業にとって本当に必要なものはスローガンではなく、具体的で明確な努力目標でしょう。

(3)中途入社の社員に前職と同じ給与を保証している

中途採用した社員に対して、その人の実力も見極めずに前職と同じ給与を保証することです。もしも中途入社した社員が実力不相応な給与をもらっていれば、以前から働いてきた古参の社員が不満に思い、退職の理由になりかねないことは想像に難くありません。

(4)下の評価は上司が「何となく」決めている

たとえば、上司が自分の仕事の合間に部下を観察しただけのイメージで部下の評価を何となく決めていませんか。上司としてはきちんと見ているつもりでも、評価される側の社員にいわせれば、「何を基準に評価されているのかわからない」となります。数字がはっきり表れる営業のような職種ならまだしもですが、事務職や現場作業など、なかなか数値化しにくい職種もあります。入社して日の浅い人や、異動したばかりで経験の乏しい人に、いきなり数字を求めても無理があるでしょう。

(5)社員が遅くまで一生懸命働いている

度を越した長時間労働は、社員のワークライフバランスの観点からも是正されるべきでしょう。周囲から「ブラック企業」と呼ばれるリスクを避ける意味もあります。

なにより、長時間労働によって社員が疲弊してしまうと、結局「生産性」が下がります。政府の「働き方改革」でも、指標としての生産性は重要視されています。このことからも、生産性は企業経営に欠かせない視点です。

(6)「結果」だけで社員を評価する

「成果主義」は、もっともわかりやすい反面、決定的に欠けているものがあります。そもそも「成果」とは、過去から現在までの業績を表したものです。つまり、成果主義の目線は、つねに後ろ向き。未来への前向きな目線、社員の能力の「伸びしろ」に対する評価が、成果主義には欠けているのです。

社員の「本当の価値」を見極める

こうした会社は、なかなか人が定着せず、業績が上がらず、やがては人的倒産の危機に瀕してしまいます。しかし、こうした危機と無縁な企業もあります。その違いは何なのか。私が考えるキーワードは「フェアバリュー」です。フェアバリューとは、社員一人ひとりの「本当の価値」のこと。それを見極めて、それに見合うだけの待遇を与えることです。

たとえば、「年功給」は、能力に関係なく勤続年数で給与が上がっていく制度であり、フェアバリューを実現しているとはいえません。前職の給与を無条件に保証する前提で中途採用を行う企業も、やはり社員のフェアバリューを無視しています。

しかし組織には必ずしも能力が高くない社員もいます。そうした人々を切り捨てるわけではありません。そうした社員に対しては、能力の向上を促す制度を導入して、業績のアップを図る。これこそ、会社と社員でWin-Winの関係を築くことにほかなりません。

それを可能にするのが適正な「人事評価制度」です。「人事評価くらいウチの会社でもやっている」と思われるかもしれませんが、多くの企業では、せいぜい給与の査定くらいの目的でしか行われていないのが現状です。私に言わせれば、大変もったいない状況です。人事評価制度を上手に活用すれば、有能な社員を定着させ、今いる社員の能力の底上げを図ることができ、ひいては業績アップにつなげることができるからです。

産休後の復帰率100%の職場になる

実例をご紹介しましょう。私の知っているある広告代理店は2008年リーマンショックをきっかけに、業績が大幅に悪化しました。

そこで、徹底した成果主義の給与体系を導入。その結果、2011年には、同程度規模の広告代理店の中でトップクラスの売り上げを達成しました。ところが、社員数が約100人まで増えた2012~2013年ごろ、成果主義の弊害が出てきたのです。

売り上げだけで社員を評価した結果、皆が数字だけを追いかけるあまり、クライアントへのフォローを忘れたり、チームワークが悪くなったりしました。社内の雰囲気がギスギスしてくる悪影響ばかり目立ちはじめたのです。

その結果、ある年は10人の中途採用社員のうち7人が半年以内に辞める事態になってしまいました。これでは一時的に業績が向上したとしても、社員が育たないので、会社の発展も期待できません。この苦境を打開する切り札が人事評価制度でした。評価の基準として、仕事に対する「誠実さ」といった、会社の理念を体現する内容を盛り込んだところ、社員の意識が徐々に変化し、クライアントからのクレームはほぼなくなりました。

効果はそれだけにとどまりません。まずはマネジャーと社員の間で交わされる会話の質が変わりました。これまでは営業実務の話、つまり業務連絡しかありませんでした。それが、「あいさつは元気にしようよ」「営業だってチームワークが大事だ」「書類の提出期限は守ろう」といった、仕事の取り組み姿勢についての会話が生まれるようになったのです。

マネジャーの育成にもつながりました。社員の評価を的確に行うには、メンバーとのコミュニケーションが不可欠だからです。つねにメンバーを観察し、そのうえで自身の能力向上に努めるなど、マネジメント層の意識が大きく変わったのです。

その結果、「安心して働ける」という意識が広がり、社員の定着率が大幅に向上しました。昨年採用した新卒はまだひとりも辞めていません。

社員数もアップしました。2015年1月時点で150人だった社員(グループ全体)が、いまでは270人に。2年で1.8倍です。ちなみ社員のうち60%を女性が占めますが、彼女たちが産休を取った後の職場復帰率は、なんと100%。人事制度の改革は働きやすい会社の風土に直結しているようです。

人件費が3%アップしたが利益も10%アップ

『人が辞めない会社がやっている「すごい」人事評価』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ある印刷会社では、業務の見える化、効率化を目指し、人事評価制度を導入しました。力を入れたのは、社員一人ひとりの「目標設定」です。会社の目指す方向を示したうえで、社員自ら業務改善に関する目標を掲げ、その達成度を給与に反映することにしたのです。

その結果が初めて給与に反映されたのが、2016年。約50人の社員のうち、約40人の給与アップが実現しました。もっとも給与が上がった社員は、基本給が2万4000円もアップしたそうです。

この人事評価制度によって、人件費がおよそ3%ほど上がりました。しかし、利益は約10%も上がったそうです。会社と社員がWin-Winの関係になったことを、数字が証明したといえるでしょう。適正な人事評価制度は、業績アップや社員の満足度向上に貢献し、ひいては「人が辞めない」定着率の高い会社を実現させることができるのです。