ホールスタッフの求人倍率は7.5倍。“超”売り手市場の飲食業界で採用活動を勝ち抜くには?

アルバイト・パートホールスタッフの求人倍率は7.5倍。“超”売り手市場の飲食業界で採用活動を勝ち抜くには?

多くの飲食店が今、従業員をどのように確保するかに頭を悩ませている。特に都内は若い働き手が不足しており、著しい売り手市場。せっかく雇っても、なかなか定着してくれないという悩みも少なくない。こうした状況の中、弊社では8月3日に「飲食店の事例・データから考える! 人手不足解決のための採用対策セミナー」を開催。「求人@飲食店.COM」を運営する西澤美能里が講師役を務め、飲食店のオーナーや採用担当者に昨今の状況、採用に関するデータ等を開示しながら対応策を提案した。

都内は求職者1人に7社が殺到「選びたい放題」

セミナーではまず、昨今の飲食業界の求人事情についての説明を行った。東京の全職種における有効求人倍率は2.04。有効求人倍率はハローワーク(公共職業安定所)で扱った有効求人数を有効求職者数で割ったもので、分かりやすく言えば、東京では1人の求職者に対して、ほぼ2件の求人があると考えればいい。それだけで売り手市場であることがわかるが、飲食調理業は5.79、接客業では7.58となっている(2017年6月)。つまり都内の飲食業界、接客業界では1人の求職者に対して6社から7社が「ウチに来てください」と言っている状況。「求職者は選びたい放題と申しますか、求職者にすれば仕事が多くて好ましい状態です。一方、採用担当者からすると、かなり厳しい状況と言えます」(西澤)。

この極端な売り手市場は決して偶然ではない。東京への一極集中が進む中、少子高齢化、若年層の減少という日本社会が抱える構造的な問題と密接にリンクしている。接客業、飲食調理業の主要な担い手となる20歳~39歳の人口は2000年から2010年の10年間におよそ300万人、2010年から2015年の5年間に300万人減少した(総務省統計局)。15年間で600万人の若手が減り、減少するスピードも加速している。物理的に若者が減っているのだから、待遇を良くして「ウチの店に来てください」と言っても、簡単には集まらない。

20歳~39歳の人口推移

運良く採用できても、正社員の勤続年数は5年未満が67.2%と定着率は低く、アルバイトを雇用しても勤続1年以内が52.1%(飲食店.comのアンケート)。売り手市場が長らく続いている影響で、飲食業の社員の平均給与も年々上昇しており、より良い条件の職場へ移ってしまうという現象も考えられる。その結果、採用担当者は1年中、採用に走り回ることも珍しくない。そうした雇用環境において人材を確保するためには今まで以上に他社との差別化が必要になる。「7倍という求人数がありますから、求職者は常に他のお店との比較をしている状態にあります。ですから採用側としては『自社の強みはどこなのか』『他社に比べ求職者を引っ張るポイントはどこなのか』を明確にしていくことが、採用難に打ち勝つポイントです」と西澤は力を込めた。

採用難克服のために「求職者のことを知る」

この採用難を克服するためには、採用側が求職者のことをよく知ることが必要。つまり求職者は会社選びにおいて、どこにポイントを置いているのかを知り、そのニーズに合わせた採用対策をするのである。「飲食店.COM」が調査したアンケートによると、求職者が仕事探しで重視するポイントは20代、30代ともに「仕事内容」が1位だが、2位は20代が「休日・勤務時間」、30代は「給与」となる。このようないくつかの調査結果から、求職者の大まかな傾向、考え方が把握できる。

20代、30代の求職者が会社選びにおいて重視すること

■求職者の傾向
・独立希望者が半数以上
・20代はアットホームな店舗を好む
・20代は給与よりも休日重視
・30代は業界内での知名度、経営規模などを重視
・30代は休日より給与を重視

求職者の傾向がつかめたら、次はその対策。たとえば独立希望者が多いという点に注目するなら、独立時の条件等を具体的かつ詳細に示さなければ有効な手段とはならない。のれん分け、初期費用の一部負担、物件取得のアドバイス、企画・マネジメントのフォロー、食材などの関連業者の仲介、開店時の従業員ヘルプなど、具体性を持って示す必要がある。西澤はこの点については「ただ単に『独立支援します』『独立サポートします』だけでは分かりにくいでしょう。その支援、サポートの内容を求人広告の原稿に細かく書く、面接などで話すなどすれば、求職者にインパクトを与えられると思います」と説明した。

実際に応募があった後は正しい処理、フォローが必要となる。応募後に気をつけなければならないのは、面接率、採用率、定着率をいずれも高くすることだ。

面接率(面接を通知した者が、実際に面接に訪れる割合)は採用側のレスポンスの早さ、メールと電話の両方で適度な追跡をすること、メールの返答は選択式で返答できる形式のものにする、面接日前日のリマインドなど、通常の人間関係と共通する部分が大きい。

採用率(内定者が採用に応じる割合)では、会社のネガティブな面も正直に開示することの重要性が説かれた。これは求職者が採用担当者の対応で好感を持つポイントについて聞いたアンケートで「返信や連絡が早い」に次ぐ2位だったことからも明らかである。

採用担当者の対応で、好感を持つポイント

採用担当者の皆さん、こんなことをしていませんか?

面接する側の人間が腕組み、頬杖をするなど偉そうな態度をしたり、求職者に対して興味のないような姿勢を示すことは厳禁。「腕組みしたり頬杖をついたりすのは、日常生活ではよくあることなので、ついやってしまいがちです。採用担当の方は面接の相手に対しては店舗の代表、会社の代表でもあるので、そういう態度をとることで求職者の『ここで働きたい』という気持ちを削いでしまっているかもしれませんから、十分に気をつけてください」と西澤は注意を呼びかけた。

また、採用後、定着率(採用者が一定期間離職しない割合)を高めるために、採用の前後でギャップが生じることを避けることが大事になる。「こういう会社だろう」と思って入った会社が、事前に想像した通りであれば離職する可能性は低くなるのは当然。この点については採用前の店舗見学、マイナス面も正確に伝える、現場のスタッフによる面接などが有効であろう。そして早期離職にストップをかけるには初日が大切で、歓迎会を開き本人への期待度を示すとともに、ハウスルールを共有させることなどが必要であって、その上で本人に仕事の目的や、求める役割を伝えて「あなたは必要とされて、この会社に来たのだ」ということをより理解してもらえるように努力することが大切だ。

スライドに映し出されたデータ資料を、スマホで撮影する参加者の皆さん

参加者も危機感「どこもやっていないようなことをしないと」

今回のセミナーに参加した都内でフレンチ、イタリアン、和食等38店舗を経営する会社の採用担当者の男性は「今後も出店を伸ばしていくには、どうしても採用が追いついていかなければいけませんが、人材は限られています。そこで有望な人材を採用して、業界で一番になるにはどうすればいいのか、日々、考えています。今日のセミナーでは世代(20代と30代)によって会社に求める物が違うというデータが大変参考になりました。求人倍率が7倍ということで、他社さんと同じことをしていたらダメだなというのは感じましたね。だからどこもやっていないようなことをしないといけません。ナンバーワンになるためには、まず、求職者が何を求めているのかを徹底的に調べることかなと考えています」と話した。

西澤は「データを示した時に、皆さん、スマホで写真を撮ってくださるなど、熱心に聞いていただけました。抽象的に人を集めるのが大変だ、と嘆くだけでは状況は改善されません。何で大変なのか、それに対してどうアプローチしたらいいのか、具体的な対策ができれば、状況は改善されていくと思います。20代、30代が求める物が違うという部分であれば、それを対策の中でうまく取り入れて使い分けていただければと思います」と話した。

弊社では「求人@飲食店.COM」で飲食店に特化した求人サイトを運営するなど、人材と飲食店を結びつける役割を負っている。こうしたセミナーを今後も多く開催し、飲食業界の抱える問題の解決に関与していく考えである。