「脱時間給」制度 職種を限定した導入は妥当だ

総合「脱時間給」制度 職種を限定した導入は妥当だ

働き方改革を停滞させぬよう、引き続き政労使の協調関係構築へ向けて努力すべきだ。

 高収入の専門職を労働時間規制の対象外とする「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度の導入を巡り、政府、経団連、連合の政労使合意が見送られた。

 一時は条件付き容認を表明した連合が、態度を転じたためだ。かねて「長時間労働を助長する」と反対してきただけに、組織内の反発が強く、撤回を余儀なくされた。政労使協調を主導した事務局長の会長就任も立ち消えになった。

 組織内外の信頼を大きく損ねた連合執行部の責任は重い。

 政府は、連合が求めていた健康確保策を強化した上で、新制度導入を含む労働基準法改正案を今秋の臨時国会に提出する方針だ。

 労基法は、労働時間を「1日8時間、週40時間」と定め、これを超える残業や深夜・休日労働に対して、割増賃金の支払いを企業に義務づけている。

 新制度には、この規定が適用されない。賃金は働いた時間に関係なく、成果や能力に応じて決まる。既存の裁量労働制も実労働時間にかかわらず、一定時間働いたとみなして賃金が決まるが、割増賃金などが適用される点で異なる。

 企画力や発想力が問われる仕事では、働いた時間と成果は必ずしも一致しない。短時間で成果を出すより、漫然と長く残業する方が賃金が高くなる現行制度になじまないのは、明らかだ。こうした職種は増えている。

 一定の職種について、本人の同意を条件に、賃金と労働時間を切り離すことは、妥当だ。生産性向上の効果も期待できる。

 対象は、為替ディーラーなどの高度専門職で、年収1075万円以上の人が想定される。法案には、平均賃金の3倍超と明記する。雇用者の3%未満とみられる。

 労働側には、残業代の負担という経営側にとっての歯止めがなくなることで、「際限なく働かされる」との懸念が強い。

 工場労働や一般事務職に適用されれば、そうした事態も起こり得よう。対象は、個人の職務範囲が明確で、働く時間や仕事の進め方を自分で決められる職種に限定することが重要である。

 働き過ぎの防止策も欠かせない。新制度では、一定の休日確保などが義務づけられる方向だ。

 野党は「残業代ゼロ」と批判するが、長時間残業ありきの考え方だろう。レッテル貼りではなく、建設的議論が求められる。