総合在宅残業にも細かな配慮 進むサントリーの働き方改革
夕方、オフィスの仕事を早めに切り上げ、子供を保育園へ迎えに行く。帰宅後、家事がひと段落してから、仕事の続きを少しする――。こんな柔軟な働き方を実現しているのはサントリーホールディングスだ。

サントリーホールディングスは現場に重点を置いた改革を進める
週1日の上限を緩和したり、1日単位ではなく10分単位でも利用できるようにしたりと、在宅勤務制度を2010年に大幅改訂。社外から社内サーバー上の仮想パソコンを利用できるテレワーク環境も整え、家事を終えた後といった“隙間時間”を生かせる働き方が浸透している。
2017年現在も「濃く働く」をキーワードに、効率のよい働き方の追求が続く。「限られた時間で確実に成果を出しながら、1日で働く時間を短くする。それを実現するIT(情報技術)を整えている」と、サントリーホールディングスの竹舛啓介人事部課長は話す。
■端末移行でテレワークの幅が拡大
同社は社員が日々利用するデスクトップパソコンを老朽化に伴い、2015年から順次刷新。社員の働き方に合わせて、薄型の軽量ノートパソコン「ウルトラブック」などに切り替えてきた。2016年でパソコンの切り替えは一巡。社外から社内ネットワークに接続できるVPN(仮想プライベートネットワーク)も整えた。
これによりテレワークができる場が広がっている。「以前は会社か自宅に限られていた。今は、移動中など業務に充てられる隙間時間が増え、メール処理や資料作成の仕事も社外で進められる」と竹舛課長は話す。
2017年も引き続き、「いつでもどこでも仕事ができる環境」の整備を進めていく。外部のサテライトオフィスサービスを社員が利用できるようにして、営業部門の社員が訪問先のそばですぐパソコン作業に集中できるようにする。社外でもノートパソコンから電話の発信や着信ができる仕組みも導入していく予定だ。
■社外での「サービス残業」もチェック
社外にいる社員の働き過ぎチェックも怠らない。サントリーホールディングスでは2010年以降、在宅勤務の状況を把握する「新外形管理システム」を導入。テレワークにも応用する。
このシステムでは、在宅勤務の社員が勤務状況を日次で報告するだけでなく、社員が社内ネットワークに接続している時間も計測。勤務報告と違いがないかを比較して、サービス残業をしていないかどうかをチェックしている。
2016年初めからは、新浪剛史社長の号令もあり、働き方改革を、サントリーグループの経営戦略の一策として取り組み始めた。残業時間の削減率や年次有給休暇の取得日数などの全社目標を設定。各部署が達成を目指した。
■2016年の全社改革で残業1割減

グループ内で働き方改革の取り組み事例を共有するサイト「変えてみなはれ」も開設
各部署では、四半期ごとにPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回し、「業務の棚卸し」など取り組んだ施策の効果を検証。これを踏まえて新たな施策を講じるといったプロセスを繰り返した。結果、2016年は前年比で残業時間を1割、削減できた。
2016年の一連の改革で、人事部は各部署に向けて、「メール」「会議」「資料作成」といった改革対象のキーワードを提示し、改善に取り組んでもらった。しかし「開く会議が少ない」といった部署特有の理由から、取り組みが進まないケースが少なくなかった。
「部署の仕事内容を踏まえて、働き方に関する課題を抽出し、解決していく。働き方の中身に重点を置けば、より一層改革が進む」。こう考えた竹舛課長は新しいアプローチで改革に臨む。
■部署ごとにリーダー、人事評価対象に
2017年1月からは、グループ会社の部署ごとに、現場の仕事に精通したキーパーソンを「働き方改革推進リーダー」に任命。部署ならではの働き方改革を推し進める。推進リーダーの仕事は、取り組み成果が人事評価につながる“業務”と認定。改革が確実に進むようにした。
推進リーダーの任命によって、各部署で独自の働き方改革が動き始めた。例えば、サントリーグループで、顧客対応を一手に担うサントリーコミュニケーションズお客様リレーション本部では「全員参画」の働き方改革に取り組む。
具体的には、2017年1月と2月に、約40人の所属社員が全員参加するワークショップを実施した。第1回のワークショップでは、部署を統括する役員と働き方改革推進リーダーが率いる推進チームが、部署の働き方改革の目的を説明。外部講師を招き、改革事例も学んだ。
そのうえで、「ありたい姿」を社員個人で検討。それをグループディスカッションと社員全員でのミーティングで共有した。その結果、「お客様に必要とされる組織」「経営に貢献する・全社から頼られる組織」「お客様インサイト発掘のプロ組織」といった、部署のありたい姿を明確にできた。
2月に実施した第2回のワークショップでは、ありたい姿を具体化するアクションプランを練った。複数のグループに分かれたうえで、「フレックスタイム制度を全員で積極活用する」「他部署と働き方に関する勉強会を行う」「始業段階で、帰る時間を宣言する」といった具体案を出し、全員で共有。投票により、取り組むべき施策を決めた。
2017年3月以降は、実践に移った。竹舛課長は「1年後、創意工夫で現場の仕事を効率化していくことが当たり前の状況になっているよう、現場を支援していきたい」と語る。

