新卒タクシー業界の社会的評価を変える社員を、採用・育成するチームを作りあげる
新卒採用が売り手市場にあるなか、成功している企業の取り組みを紹介する新企画。第4回は、会社が採用活動に力を入れていくなかで最前線の担当者はどのような心境にあったのかに迫る。ゼロから新卒採用がスタートし、採用人数は2012年10名だったのが、2013年に43名、2014年には一気に100名を越えていく過程で、採用担当者がやるべきことも、業務量も一気に変わった。
葛藤を抱えながらも始めた採用活動が成功していった背景には何があったのか。管理部人財採用課の青木雅宏氏に話を聞いた(2017年1月下旬取材、聞き手・撮影:編集部)。【写真:社員研修や採用活動などで使用する「Hospitality House」へと続く階段の踊り場にて】
青木 雅宏(あおき・まさひろ)
国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長
2009年に新卒で国際自動車株式会社へ入社。総合職として配属先の営業所でドライバーの運行管理や総務系の業務を3年半担当。その後、4カ月ほど本社営業課の勤務を経て2013年より管理部人財採用課へ異動。新卒採用担当として、説明会の企画、運営から選考、入社対応までを行うとともに、リーダーとして新卒採用チームのマネジメントを任せられる。2015年には管理部人財研修課を兼務し、産業カウンセラーの資格を取得。
内定者に気付かせてもらえた仕事への自信
入社5年目で抜擢された新卒採用の仕事。会社としてもゼロから新卒採用がスタートさせたばかりで、ノウハウやマニュアルはない。手探りの中で始めた新卒採用において、一番苦労したことは、採用担当者として自覚を持てなかったことだ。
- ――いきなり任された採用担当の仕事。当時はどんなことに苦労しましたか?
採用することに責任を持てない。と言ったら変ですけど、自信がなかったんです。自分自身がどこか納得できていない部分があって、うまくいってないなと思うことがありました。面談をしていても、自分が信じていないものを本気で話してなかったとしたら、結局伝わらないですし、どれだけ自分が考えられるかということが重要なので……
- ――何が信じられなかったのですか?
何ていうんですかね。「タクシードライバーの魅力」に自分自身が全然気付なかったというか、会社が持っているその魅力と自分が考えているものが一致してなかったんです。そこが一番苦労しました。でも、自分の会社が持っている本当に良いところ、価値に気付けるようになって、腹落ちできてからは、ものすごく仕事が進むようになりました。2年目から一気に採用できるようになりましたね。そこに至るまでは、無意識のうちで心のどこかで、自分を偽ったり、良く見せたりという気持ちがあったんじゃないかと思います。
- ―――どのようなきっかけがあって、気付くことができたのですか?
学生の声ですね。いまでも学生と話をしていて色々な気付きをもらえますが、ターニングポイントになったのはある内定者から聞かされた話でした。
その人はとにかく車が好きで、うちとディーラーを受けて両方から内定をもらっていました。最後までどちらに行くのかを悩んで、採用担当者に相談をすることにしたんです。まずディーラーの方に話を聞こうと、行った際に、もう1社はどこを受けているのかと聞かれて、「タクシー会社を受けている」と答えたときに、タクシー業界のことをめちゃめちゃ馬鹿にされて、「何を考えてんのお前?」「そんな会社に入って、タクシードライバーになってどうするの?」といったことを言われました。
その瞬間、彼はものすごく腹が立ったらしく、「何でそんなことを言われないといけないのか。自分が知っているイメージだけで判断するような人たちは一緒に働きたくないです」と言ってその場で内定を蹴った。そして、彼はうちの会社に入りますと言ってくれたんです。その話を聞いた時に、勇気もらえたし、採用活動をやっていて良かったなと思えました。
まだ入社したわけでもない彼が自分ごとのように本気で怒ってくれた。その意味を考えると、自分たちが伝えたかったことがきちんと伝わってくれていたのかなと思えますし、心からもっと頑張ろうという気になったんです。それが採用担当者になって1年目の最後のころです。
- ――そこから学生への向き合い方はどのように変わっていきました?
伝わる人がきちんといるんだという自信を持てたことで、無理をしなくなったんです。100人いて100人に響かせることは絶対できないですから、100人いて1人でも2人でも響かせられる、気付いてもらえる人がいる。マッチングする人は絶対いるから、その人たちを探すために自分は採用活動をやれば良いんだと思えるようなりました。もちろん、100人いて100人に響かせられたら最高なんですけどね(笑)。
それから、今まで以上に自分の会社の良いところを、色眼鏡なくちゃんと見つけられるように意識するようになりました。
チームにまず教えたことは、「自分を偽らないからこそ、学生にも向き合える」
採用活動が順調に進み、目標人数を100人から150人へと増やしていった。イベントの参加回数や選考する学生の量は倍増。発生した膨大な業務量をこなしていくため、新卒入社の社員を加えた採用チームの体制づくりを任される。リーダーシップを発揮していく必要があった。
- ――新卒採用のチームには青木さんが採用担当者になったときよりも早いタイミングで採用業務を任されることになった社員も多かったと思います。かつての自分のように不安に思う社員もいたのでは?
おっしゃる通りです。特にジョブトレーニングで来ている社員の中には、もともとやっている普段の仕事について自信を持てていなかったり、不満に思っていたりすることもあるように感じ取れました。
そこで、カウンセリングというわけではないのですが、「自分がなぜこの会社で働いているのか」を改めて認識をしてもらうことを徹底的にやりました。一人ひとりと面談をして、「どうして働いているのか」「何が楽しいのか」「何が嫌なのか」というようなことをきちんと整理してもらう中で、自分が今大切にしていることは何なのかを、自分自身で気付いてもらうんです。それができてはじめて彼らも、学生に対して同じように問いかけることができるだろうと考えました。
- ――先ほどの青木さんのように、偽らない自分をつくりあげることが大事であるということですか?
そうです。嘘をついても仕方ないですから。働いている社員も当然、自分自身で嘘をつきたくないわけです。だから、嘘をつかないでいいから、自分は何が好きで何をやりたいのかっていう事を明確にするっていう事が大切になります。
- ――結果的にそのことは、他の仕事よりも採用の仕事が好きだということを認識してしまう社員もでてくるのでは?
今、採用課にいる社員は10名ですが、ジョブトレーニングを通じてドライバーから異動してきた人が5人もいて、やりがいも感じてやってくれていると思います。ドライバーの時とは給与体系は変わっていますが、採用という仕事に喜びを感じて残ってくました。彼らと一緒に働いて僕自身は共に成長できればうれしいと思っているので、同じ思いで仕事に臨んでもらえるようにしたいと考えています。
社長になるような人財を育てたい
青木さんの夢は、タクシー業界のイメージを変えるような存在を増やしていくことだ。
- ――今後の目標を教えてください
私は採用だけに限らず育成もやっています。その立場から言えるとすれば、採用した人たちがどんどん上に駆け上がっていってほしいと思っています。
別にうちの会社とは限りません。国際自動車にいたことがポジティブに働いて、良い経験となり、次の会社でも良いステップを踏めるようにしたい。うちの会社の中でも、班長や僕みたいな係長であったり、もっと上に上がって社長になったりするような人財がどんどん出てきてもらえたらいいなと思っています。
そうすれば、結果としてこの業界の社会的評価見られ方なんかがどんどん変わっていくと思うんです。そういう社員を育てる、採用できるようなチームにしていきたいですね。
- ――ありがとうございました。
青木さんの「ある日の1日のスケジュール」
- 6:30
- 起床。昼食のお弁当を作る
- 8:00
- 出社。採用関係のニュースをチェック
- 8:30
- 役員と来年度の採用計画についてmtg
- 10:00
- 新卒チームメンバーとmtg
- 12:00
- 昼食。お弁当を食べる。
- 16:00
- 採用チームメンバーと個人面談
- 17:00
- 終礼。今日の結果と今後について新卒チームmtg
- 18:00
- 翌日の予定とタスクのチェック。
- 17:00
- 採用面接
- 19:00
- 帰社。買い物をして帰宅
- 21:00
- 夕食。夕食後は撮り溜めておいたお笑いテレビを鑑賞
- 23:00
- 就寝。
青木さんの年間スケジュール(取材時時点)
【第1回】タクシー業界・国際自動車編おわり



