採用上手のサイバー 「ドラフト」で学生にアピール

総合採用上手のサイバー 「ドラフト」で学生にアピール

「サイバーエージェントの採用戦略には、いつも注目している」――。複数の人材コンサルタントが「採用上手な会社」と評価するインターネット広告大手のサイバーエージェント。2017年卒から始めた選抜型インターンシップ「DRAFT(ドラフト)」や1次面接の「トライアウト方式」など、これまでもユニークな手法に取り組んできた。採用育成本部・新卒採用責任者の小沢政生氏に戦略を聞いた。

■エントリーの人数は追わない

――18年卒の採用人数、応募人数を教えてください。

「ビジネスコース、いわゆる総合職が100人と、エンジニアとデザイナーをあわせた技術職が70人の合計170人です。19年卒の採用も動き出しましたが、18年卒の採用も続いています」

「エントリー数を追いかける採用は数年前からやめました。応募の母集団を何万人も作るやり方だと、『なんとなくエントリーしました』という学生が圧倒的に多いし、どうしても数をさばく採用になってしまう。リクナビ、マイナビといった大手の就活ナビサイトも使っていません。エントリーは当社のマイページのみです。今は、こちらから働きたい人に直接会いに行く、攻める採用に切り替えました」

――採用選考の流れを教えてください。

「通年採用が大前提です。17年卒採用では、早い人は6、7月のインターンシップに参加しました。秋、冬、春にも実施し、事業部も多いので45種類にもなりました。参加回数に上限はありません。春はゲーム部門、秋には広告を受けるようなケースも多いです」

「インターンシップに参加した人と面接し、内定までいくのが5、6割です。残りは、説明会にきて面接、内定という流れです。いずれにしても学生に合わせて変えるので、面接の回数なども人によって違います。内定前後にインターンする人もいます」

■優秀な学生を集める「ドラフト」

――17年卒から始めたインターン「DRAFT(ドラフト)」について教えてください。

「6月は1日だけのインターンで、本格的なのは8、9月からです。総合職を対象にしたインターン『ドラフト』は、それまでのインターンに応募した3000人の学生の中から優秀な学生を30人選び、翌年の2月に2泊3日の合宿をするものです。事業責任者や役員・経営陣も参加し、学生に新規事業を考えてもらいます。コンセプトは『トップ1%の闘い』です」

「参加者は、各事業の責任者がインターンで接触した学生のなかから『一緒に働いたら面白そうだ』と思う人を選び、我々採用担当と擦り合わせて決めます。17年卒ではドラフト参加者の半分以上が入社しました。しかし、なかには当社に入るより『個』で戦う会社の方がふさわしい人とか、起業向きの人もいます。藤田(晋社長)も『能力が高い人より、一緒に働きたい人を採用する』と話しています」

サイバーエージェントの本社が入るビル(東京都渋谷区)

「ですからドラフトで選ぶのと、採用選考は完全には一致しません。どちらかというと、その年の優秀な学生と当社の役員が『ガチンコでバトルする』という採用ブランディングの意味が強いです」

■お題に答える「トライアウト」

――面接は、どんな形式ですか。

「1次面接は、社員1人に学生5人の『トライアウト』と呼ぶ形式でやります。出された課題について考え、自分なりの答えを面接官にぶつける90分間の選考です」

「たとえば、『あなたは来月からマネジャーになります。年上のメンバーが入ってきた。どうやってモチベーションを上げますか』といったものです。社内で新しくマネジャーになるとき、こういったケーススタディーの研修をやります。選考の場でも、とってつけたようなお題より、実務であり得ることを考えてもらうほうがいいと思います」

「基本的に正解のないお題です。自分で考えず正しい答えを求めるタイプの人には『もう少し考えたほうがいいよ』とアドバイスします。その人の志向や突破力、どれほど周りへ配慮ができるかを中心に見ます。これ以降の面接は、1対1で30分間です」

■「とにかく会いに」 大学のカフェへ

――ナビサイトを使っていないそうですが、学生とどうやって接触するのですか。

「口コミです。ちょうど19年卒の採用が始まりましたが、採用担当の6人が全国を飛び回り、内定者や社員に知り合いを紹介してもらいます。それで、とにかく会います。具体的には、大学内のカフェに座り、朝10時から夜8時までずっと学生と面談しています。会った学生に『ほかに興味ありそうな人がいたら紹介して』と頼み、とにかくつないでいくのです」

「デジタルの会社なのに採用戦略はどんどんアナログにシフトしています(笑)。マンパワーに限界もあるので、複数の支援会社に人集めを手伝ってもらっていますが、まずは学生に『あの人に会ったら得だ』と思ってもらうのが一番大切です」

「面談では、学生から聞かれるまでは採用のことを話しません。身構えられてしまうし、本音が見えなくなるからです。私服で出かけて、パソコンと紙とペンだけ持って『コーヒーでも飲もうよ』という感じです。どんなことがしたいかとか、悩みは何かといった相談にも乗ります」

「当社が何をしているか会社か、知らない学生も多いです。ゲームに興味がない人にゲームの話をしてもまったく響きませんし、学生のニーズを聞く意味でも、こんなやり方が大事です」

■地方の学生、「オンライン面接」も

――会いに行くといっても、地方では難しいのでは。

「地方からのエントリーが増えているので、『採用の半分くらいは地方の学生に』という目標をゆるやかに掲げています。いつも会えるわけではないので、面接をオンラインでやったり、インターネット動画の『FRESH!(フレッシュ)』で『就活チャンネル』という番組を流したりしています。歴代のインターン生や社員に就活の経験談を話してもらったり、採用担当者が選考のポイントを話したりします。こういうお知らせはフェイスブックで個別に送っています」

――ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で学生とつながっているのですか。

「2000人ほどの学生とつながっています。メールはほぼ使いません。合否の連絡はマイページです。ただ、最終面接の案内は特別な感じを出したいし、メリハリをつける意味で個別に電話で連絡します」

――御社の新卒採用の取り組みはかなりユニークです。失敗はありませんか。

「インターンシップは45種類あるのですが、なかには『すべった』ものもあります。ただ、学生が何を求めているのか、採用マーケットがどう動いているのかは、やってみないと分からないところもあります。いいと思ったら、まずやってみるという方針です」