総合日本の長時間労働を考える(8)多様な人材に企業が適応を
この連載では日本の労働時間がなぜ減らないのかを考えてきました。問題を解決するためには、法律や報酬制度といった「見える」障壁の改革と同時に、雇用慣行や社会規範など働き方に埋め込まれた「見えない」要因を考慮する必要があります。
日本の生産年齢人口は今後減少が続きます。日本企業は景気変動のバッファーとして社員の労働時間を調節弁としてきました。しかし、社員の労働時間を今以上に増やすことは困難です。また正規社員の替わりに非正規労働者を増やす手法も待遇格差などが問題視され、長期的な解決にはならないでしょう。
労働時間増加が懸念されるのは、人手不足が短期的ではなく、恒常的になる可能性が高いためです。働き方の量の制約を克服するためには、働き方の質の改革が不可欠になるわけです。
人と組織の関係を考えた場合、日本では組織が人に適応するのではなく、人が組織に適応することが求められます。例えば外国人や海外から帰国した日本人は一刻も早く「日本人化」することが求められます。集団意識が強く働く社会では個人の才能や能力はフルに活用されず、組織への適応力が重視されます。この仕組みの中で企業が理想とする従業員とは、無理を強いられても文句を言わず、組織に服従し、順応できる日本人男性でした。
しかし、人口構造の変化やグローバル化に伴い、人材は多様化しています。女性や外国人労働者の労働参加は増え、優秀な人材は日本人男性とは限りません。また長時間労働が当たり前とみなされる時代ではなくなりました。働き方改革には、個人の改革と同時に組織の改革も求められます。無理に現状を維持しようとすれば、優秀な人材を失ったり、引き付けることができなくなります。
多様化する人材が組織に適応できるように、人材に「日本人男性化」を求めるのではなく、逆に組織が多様な人材に歩み寄る努力が求められています。長時間労働の是正は、企業の競争力を高める長期的な投資だという認識が必要です。