日本の長時間労働を考える(4)生産性より労働投入量を重視 一橋大学教授 小野浩

総合日本の長時間労働を考える(4)生産性より労働投入量を重視 一橋大学教授 小野浩

アウトプット=インプット×生産性とし、インプットを労働投入量(労働者数または労働時間)にしたとします。労働時間が長くなる現象は生産性を上げるよりも労働投入量を増やして成果を出す手法が根付いていることを示しています。働き方改革の軸にある「量から質への移行」とは、インプット重視を見直し、生産性を重視した働き方に移行する必要があるという議論に置き換えられます。

インプット重視の雇用慣行は、長時間労働が日本で根付いた大きな原因と考えられます。戦後に高度成長期を迎えた日本では、結果を出すために全員が一丸となって一生懸命働くことが求められました。このような風土の中、残業を気にすることは弱音であり、忠誠心が弱いと見られました。

加えて日本人には努力すること、頑張ることが美徳と映ります。この価値観は人事評価にも反映されていると考えられます。現に企業内データを使った最近の実証研究では、労働時間の長さが昇進確率を高めることが確認されています。

また日本的雇用慣行の柱である年功賃金制度は、勤続年数という企業への忠誠心を評価する仕組みです。成果よりも何年間企業に貢献したかというインプットに応じて給料が上がっていきます。

インプット重視の給与制度が残っている理由の一つは、労働時間や勤続年数といったインプット指標の方がアウトプットよりも観察しやすいからです。年功制度から成果主義への移行は進展していますが、難航していることも事実です。その最大の理由は、客観的で公平な評価基準を確立できないことです。工場など一部の職場ではアウトプットは見やすいですが、事務職では正確に(個人の)成果を見いだすことはとても難しくなります。

インプット重視の組織では、効率良く働き、良い成果を出して早く仕事を切り上げるよりも、夜遅くまで仕事をしている方が報いられます。すなわち能力や生産性といった人的資本よりも、仕事に一生懸命打ち込むシグナルの方が評価されます。労働時間を減らすより、むしろ増やす方にインセンティブが働いてしまうかもしれません。