「新卒一括採用」のメリットとデメリットは、どこにあるのか

新卒「新卒一括採用」のメリットとデメリットは、どこにあるのか

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26日は、経済評論家の辛坊正記さんが出演。「経団連、平成31年春入社も就活日程継続 3月説明会、6月選考解禁」(産経ニュース)を題材に、新卒一括採用のあり方について解説しました。
新卒一括採用の成り立ち
サッシャ 今日は、「経団連が平成31年春入社の就職活動の指針を発表」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の辛坊正記さんです。
辛坊さんは一橋大学を卒業後、住友銀行に入社。企画、開発、海外、証券など、銀行員らしくない仕事を転々とした元“はぐれ銀行員”の経済評論家です。よろしくお願いします。
辛坊 よろしくお願いします。
サッシャ プロフィールが面白いですね(笑)。まずは、このニュースを選んでいただいた理由を教えていただけますか。
辛坊 新卒を一括で採用するのは、ある意味で日本独特の制度です。
本当であれば、経団連がこんなスケジュールを決める必要はないんですけれど、日本では新卒の学生を真っ白な状態で採用して、会社でトレーニングをして、定年まで長く働いてもらうという仕組みであることが多く、会社としても採用は本当に重要で、ここをきちんとしないと大変なのです。
だまっていると、色んな会社が「優秀な学生を早く採りたい」となり、就活がどんどん早くなります。そうなると学業にも支障が出てくるので、こういうルールが必要ということなんです。
サッシャ 大学1年生から就活をされたら困っちゃいますもんね。
辛坊 このスケジュールは何度も変わってきました。でも、新卒一括採用だけは変わっていないんです。
サッシャ そもそも、なんで日本は海外と違って新卒一括採用、終身雇用が成り立っているんですかね。
辛坊 高度成長時代には、働く側にも会社側にとっても、非常によい制度だったんです。若い人が大量にいて会社も成長していましたから。
さらに、会社としては“先進国を追いかける成長”だったため、どの方向に人材を育てるのかを決めても間違うことがなく、中途採用をするよりも新卒採用でトレーニングをして、定年まで働いてもらう方が、両者にとって安心できる制度でした。
サッシャ 他の先進国だと、学校に行きながらインターンをしたり、資格を取ったりして、技術を身につけてから会社に入るシステムが一般的ですよね。
辛坊 そうです。それがまさに同一労働同一賃金で、給料のベースはそれぞれが磨いた技術や仕事のスキルなんです。
日本は違います。ある会社や官庁に入って、そこでのメンバーシップを手に入れたら、あとはそこで言うとおりに働いたら、一生の給料と仕事を保障してくれる。そこに大きな違いがあったんです。
終身雇用は変わらざるを得ない
サッシャ 終身雇用はもう崩れつつありますよね。
辛坊 もう変わらざるを得ないんです。日本では、働き盛りの人の給料は、仕事の成果よりも少し低く抑えてきました。
その代わり、年をとった人に手厚く給料を払い、老後を安心して迎えてもらう。そして、その中間層で浮いた分の一部を若い人の育成に使うというシステムでした。
これにより、働き盛りの年代の人材が多い時には、会社の人件費は労働効率よりも低かった。だから会社を支えられたんです。
ところが、年をとった人が増えてしまうと、会社がその負担に耐えられなくなってくる。だから変わらざるを得なくなってきているんです。
サッシャ 年金のシステムと全く同じ話ですね。
寺岡 高齢化社会が、企業にもあるんですね。
辛坊 そうです。だからいま雇用制度改革で議論になっている、「働き過ぎ」や「多様な働き方ができない」、また企業側でいうと「事業構造に合わせて柔軟に人をそろえられない」といった問題も、年金や終身雇用の問題と同じところから出ている話なんです。
一括採用のメリット・デメリット
サッシャ 「新卒一括採用なんてやめちゃえばいい」とはならないんですか?
辛坊 ただ、この制度はすごくメリットもあります。ヨーロッパでは若い人の失業率が高いと問題になっていますが、日本ではあまり問題になっていません。
経験のベースで採用される国では、どんなスキルを持っているかで就活が決まりますから、新卒は不利なんです。
ところが先ほどお話ししたように、日本では真っ白な新人を採用して会社がトレーニングすることが前提となっていますから、経験がなくても不利にならない。
これは一括採用のメリットですから、若い人は活かさない手はないんです。
サッシャ でも、1年くらい世界旅行をして人生経験を積んでから会社に入りたいとか、野心を持って人生設計をしている学生にとっては難しいシステムですよね。
辛坊 非常に難しいシステムです。そこが最大のデメリットです。
それともう一つ、会社に入るまで自分にどんな仕事が与えられるのか分かりません。
働く人は自分で自分のキャリア、つまり「どういう仕事でどうやって食べて行くのか」を決められない。それは会社が決めるんです。その代わりとして、仕事は与えてくれるわけです。
サッシャ 食いっぱぐれないと。
辛坊 そうです。ただ、会社の伸びる方向性がわかり、言われたとおりに仕事をすれば一生安心な社会であればよかったのですが。いずれも変わってしまいました。
今後、採用システムは変わるのか
サッシャ まだ経団連が就活の指針を発表するということは、新卒一括採用のシステムは引き続き変わらないのでしょうか?
辛坊 いまの日本社会の枠組みだと、どうしても簡単に変えられないところがあるので、文部省、経産省、厚労省など色んな役所が絡んで、枠組みはまだまだつくられていくと思います。
これを変えるためには、「就職のあっせんの仕方をどうするか」「職業訓練のやりかたをどうするか」、あるいは「会社を離れた人をどうやってサポートするか(失業給付)」などの、大きな社会の枠組みを変えなければいけない。
そこが雇用制度の見直しの中で少しずつですが進んでいるので、それに応じて徐々に変わっていく性質のものだと思います。
サッシャ いま若い人が少ないので、売り手市場ですよね。そうなると、新卒一括採用ではない方が、会社としては採りたい人材を採りやすくなると思うのですが。
辛坊 そういう可能性はあります。ですから、最近は通年採用など1年のうちに何度も採用する取り組みが始まっています。
ただし、学生側の意識、大学側の意識、会社側の採用における効率の問題もあると思いますし、そこから離れるためにはそれなりの努力が必要になるため、まだ続いているのだと思います。
サッシャ そうなんですね。でもシステムとしては損をしているような気がしますね。
寺岡 就活生はどうしたらいいんでしょうね。仕組みはまだまだですが、世の中の雰囲気は変わりつつあるなかで。
辛坊 そこは考え方次第だと思います。「自分はこういうキャリアを積んでいくんだ」という思いがあり、学校でも専門的な勉強をしていて、見極めができる人は新しいやり方に飛び込むのもいいと思います。昔と違って転職のマーケットもできていますから。
ただ、「ちょっと迷うな」という人は、せっかく未経験でトレーニングしてくれる会社があるのならば、就職すればいいと思います。
そこで大事なのは、「自分はどんな生き方をしたいのか、どんな仕事がしたいのか」をきちんと考えて、入る会社がそういう能力を養う場として納得できるか、判断したうえで就職することだと思います。
サッシャ 辛坊さんは元はぐれ銀行員ということですけれども、はぐれにはまだ難しいシステムが続いているなという気がしますね。
今回のような話って「いまどき新卒一括採用をやっているの?」となりがちですけれど、辛坊さんにそのメリットを教えていただいて、「それがあるから成り立っていたんだ」ということがよくわかりました。どうもありがとうございました。
辛坊 ありがとうございました。