総合売り手市場でも、ソフトバンク採用担当が喜ぶわけ ソフトバンク採用・人材開発統括部の源田泰之統括部長
携帯電話大手のソフトバンク。地方創生インターン「TURE-TECH(ツレテク)」、スポーツや学術などいずれかの分野で1位をとった学生を採用する「ナンバーワン採用」など、これまでもユニークな採用を実施してきた。新卒一括採用とは異なり、新卒・既卒を問わず、どんな時期でもエントリーできる「ユニバーサル採用」も2015年から導入し、採用状況は好調だという。採用・人材開発統括部の源田泰之統括部長にソフトバンクの独自の採用手法や戦略などについて聞いた。

■インターン応募者が1・5倍に
――17年の採用実績を教えてください。
「17年度の新卒は、4月に390人入社しました。これから、7月、10月に入社してくる人もいます。中途で100人、トータルで500人というのが17年の新卒と16年度の中途採用の目標だったので、かなり順調に採用ができた、と手応えを感じています」
――売り手市場のなか、手応えを感じたのはなぜでしょう。
「一つは、海外採用に力を入れたこと。2つ目はインターンです。8月から9月、約250人の学生を対象に本社で最低2週間、ソフトバンクの社員と働いてもらうインターンと、『ツレテク』という地方創生インターンを実施しました。前者のインターンについては、応募数が15年の2000人から3000人に増えたので、インターンの認知度があがってきました」
「年によってばらつきがありますが、入社する学生のうちの3分の1ほどはインターン経由です。ミスマッチが少ないので離職率も低くなります」
■長野で地域社会の課題解決
――地方創生インターン『ツレテク』について教えてください。
「2016年から始めました。長野県の塩尻で実施し、エントリーは約1400人、参加した数は30人でした。今年も実施する予定です。日数は1週間、まず東京・汐留の本社で事前課題を出し、チームを作って地方の抱える社会的な課題に対する仮説をたててもらいます。その上で塩尻に行き、実際に街の人に話を聞いて、仮説を検証してもらう。だいたいみんな木っ端みじんになっていますね(笑)。その後、それぞれの課題に対する提案をしてもらいます。テーマは、空き屋の対策だったり、街のICT(情報通信技術)化だったり、インバウンド収入をどう増やせばいいかだったり、いわゆる地域社会の課題です」
――ソフトバンクグループ社長の孫正義氏は、世界のIT業界の革命児としてよく知られた経営者。ただ地方創生、というと「携帯大手ソフトバンク」のイメージからは離れていますが、実施する理由はなぜですか。
「理由は2つです。1つめは、もちろん採用活動につなげることもありますが、海外の学生に比べて日本人の学生は優秀だけど社会性がない、といわれる状況を改善したいのです。学生のときから働くこと、将来どうなりたいかを考えてもらいたいし、このインターンがそのきっかけになってほしい」
「2つ目は、本社でのインターンもそうですが、学生にリアルなソフトバンクで働くことや、様々な職種のイメージを持ってもらいたいからです。『ツレテク』では、学生5人のチームに2人社員がついて、学生のキャリア相談に乗ったり、社員の仕事内容を話してもらったりしています。採用活動をしていて、学生にとって『ソフトバンクで働く』というイメージがつきづらい、ということがわかってきました」
「携帯電話メーカー、ニュースを騒がすような買収、孫さんのイメージ、いろんなイメージが錯綜(さくそう)しています。しかし、実際にどんな仕事があり、どんな働き方なのか。理解しづらいのだろうと思います。極端な例だと、店舗でずっと携帯を売る仕事だけ、と思っている人さえいる」
――インターン経験者は、どのような採用フローに入るのですか。
「1週間、一緒にがっちり過ごすので、もちろん選考の参考にはします。あとは、その前に事実上の面接のようなものを実施しているので、面接のプロセスを減らすといったことはしています」
■「ユニバーサル採用」が効果的
――ソフトバンクは新卒一括採用ではなく、「ユニバーサル採用」という通年での募集を実施しています。学生側に認知されてきたのですか。
「ユニバーサル採用がいいのは、『チャレンジしたが、なんらかの理由でうまくいかなかった優秀な人』への門戸を開いていることです。たとえば、起業を準備していたり、親の商売を継ぐつもりだったがいったん就職しよう、留学から戻って就活しようとしたのに、時期が微妙、といったような人たちです。多くの会社は、期間が終わると採用ページを閉じてエントリーもできないようになってしまう。当社は『いつでも採用します』と伝えてきたので、12月や1月に応募する学生が増えてきました。理由を聞くと、本当にすてきなチャレンジをした優秀な人だったりする。うれしいですね」
――採用にあたって制限はありますか。
「一応新卒は30歳未満ですが、第二新卒も問題ありません。実は、『新卒なのに中途の要件も、満たして入ってくる人材』がこないかなとねらっています。たとえば、○○マネージャー職で、このスキルと、この経験がある人を求めている、と中途人材を募集しているとします。そこに、『新卒ですが、プログラムも書けたり、インターンを通じてマネジメント的なスキルが磨かれていたり、資格もあったりして、中途の募集にエントリーしたいのですが』という人が出てきたら、非常に面白いと思います。そうすれば、(能力のある学生を)新卒の画一的な給与や待遇ではなくても採用できます。なんとかしたいんですけど(笑)、絶対いると思います」
――学生にとっては、競争が厳しくなりそうですね。ソフトバンクはその方向に向かっていくのでしょうか。
ソフトバンク「両方ですね。新卒入社だから決まった条件と仕事内容で入社する形もいいと思うし、そうではない形もあっていいんじゃないかなと思います。とにかく時期や年齢で制限されるのはよくないなと」
――源田部長が採用時に見るポイントを教えてください。
「やはり変化が激しい会社なので、変化を楽しみ、前向きにチャレンジできる人ですね。ソフトバンクの人事制度も『チャレンジ』を意識して作っているので、その環境を使い倒していける人は楽しいと思います」
――アグレッシブな社員が多いのでは、というイメージもありますが。
「一方で、ソフトバンクの働き方も、考え方も多様です。なぜなら、当社の歴史そのものが、自分たちよりも、従業員の多い大企業を買収し、文化を吸収してきたからです。多様な文化、働き方、価値観の人たちが集まっている会社、というのが実態です。『自分はアグレッシブな性格ではないから』と思わず、ぜひ応募してほしいですね」
