アルバイト・パートバイトも「逆求人」 人手不足、企業がオファー
アルバイトやパートの採用で、企業と働き手の立場が逆転する「逆求人」が広がっている。求職者があらかじめ希望の勤務条件を登録し、採用企業側がスカウトを送る仕組みだ。人手不足が深まるなか、企業が働き手の多様なニーズに合わせる時代がやってきた。
「オファーが来てうれしかった」――。4月からゲーム会社に新卒入社した笠松雅也さん(22)が振り返る。就職を前に一人暮らしの資金をためようと、大学在学中の今年1月に飲食店の短期アルバイトを探していた。
■スマホが仲介役に
当初は求人広告をあたったが、卒業まで3カ月しか働けないのがネックとなり、いい仕事が見つからなかった。そこでアルバイト求人サービス「LINEバイト」で今年から始まったサービス、逆求人機能を利用。2日で3件のオファーが来た。そのうち1件の居酒屋のアルバイトを決めた。
逆求人の仕組みはこうだ。働き手はスマートフォン(スマホ)のアプリであらかじめ希望のシフトや勤務地、給与水準などの要望を登録。企業の担当者は登録者から条件に合う人を検索し、スカウトのメッセージを送る。その後は面接などを経て採用が決まる。面談日程や条件の調整はアプリ上で行える。
逆求人サービスの登録者数は50万人を超え、利用する企業数も増えている。運営するAUBE(東京・千代田)の上土達哉社長は「採用難のなか、変わるべきは企業側だ」と話す。企業が働き方を提示して、応募を待つ従来の手法では人手が集まらなくなっている。
笠松さんにオファーを送った「日本酒原価酒蔵 五反田店」(東京・品川)の安井虎太朗さん(30)は「求人広告を出して待っているだけでは怖い」と話す。企業側から働きかけることで、就労は短期ながら飲食店のバイト経験がある即戦力の笠松さんを採用できた。
人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)も1月、仕事探しアプリの「スタンバイ」に逆求人の機能を加えた。以前から正社員の中途採用で企業が直接、求職者をスカウトするサービスを運営しており、今回、アルバイト採用に応用した。メッセージに定型文を用意し、やりとりが素早く進むよう工夫している。
■広がる人手不足
逆求人サービスは人手不足の飲食店店員や、事務職の採用に用いる企業が多い。制約がある働き手の登録が多いが「企業がいい意味で譲歩している」(同社の円谷雄人マネージャー)。登録者1人あたり6~7件のスカウトが来る。
アイデム(東京・新宿)は逆求人ができるアプリ「パートnavi」を2016年6月から提供している。採用側の企業は6千社に達する。主なターゲットは主婦層。求職者のダウンロード数は累計1万8千回で、9割近くが女性という。「介護や医療系の資格保有者の求人が多い」(清水三郎リーダー)。
同社は新卒採用向けに逆求人サービスを運営しており、パートnaviを始めるきっかけになった。正社員から始まった逆求人の動きは、いまやアルバイト採用に広がっている。
人手不足でアルバイトやパートの採用は一段と難しくなっている。リクルートジョブズ(東京・中央)がまとめた3月のアルバイト・パートの募集時平均時給は、三大都市圏(首都圏、東海、関西)で前年同月比2.3%上昇の999円。ここにきて上昇は加速している。
短時間労働者の有効求人倍率(季節調整値)は2月に1.74倍。特に飲食店や小売店の店員、物流施設の作業員に不足感が強い。正社員が中心だった人材紹介サービスでもアルバイトの紹介が増えている。働き手の確保に向けて、従来の枠にとらわれない様々な採用手法が登場している。

