総合採用面接で候補者にダマされない究極の方法
年度の変わり目は何かと「面接」が多い。上司と部下の面接、新メンバーとの面接、採用面接…。面接時の問答による見極め確度を高めるためにはどうすればよいか。多くのビジネスパーソンが直面している課題だ。(リブ・コンサルティング人事部長兼組織開発コンサルティング事業部長 山口 博)
面接で「あなたは誠実ですか」と
直球質問をする間抜けな人事部
企業の採用活動のサポートをしていると、必ずといっていいほど聞かれるのが「採用面接で、候補者を見抜くことができないのだが、どうすればよいだろうか」という意味のフレーズだ。採用面接で散々質問を繰り出して、慎重に見極めたはずなのに、いざ採用してみると見事にアテが外れたという事例が後をたたない。
「あなたは堅実ですか?」と質問をして、「堅実です」と返事が来れば安心する、というような、あまりに無意味な採用面接をしておいて、後になって「話が違う」と慌てる企業は少なくない。採用面接で企業側が工夫すべきことを改めて考えてみる必要があるどのような質問を繰り出しているかを聞いてみると、実に素直な質問が多い。堅実な人を採用したい場合に、「堅実ですか」と聞く。柔軟な人を採用したい場合に、「柔軟ですか」と聞く。たいていの候補者の「堅実です」「柔軟です」という応答を確認して、面接官は安心して採用する。なかには、チェックリストのようなものを手にしながら、確認したというチェックを入れていく。
しかし、入社して、堅実とはいえない場面に直面したり、柔軟でないようなケースに出くわしたりすると、「あの時、堅実だと言ったではないか…」「柔軟だと言ったはずだ」と愚痴りつつも、採用面接で確認していたから自分の責任ではない、できることはやったと、自らを慰める。
私はこれを採用のための面接ではなく、アリバイのための面接と呼んでいる。「面接時に確認した」「面接時に問いただした」という証拠を残すためだけの面談で、候補者が面接時の発言に違えた行動をとったとしても、面接時に確認しているから、人事部門は悪くないという理屈だ。
これは、望ましい人物を採用するための面接になっていない、典型的だが、トンデモな事例だ。
人事部と採用部門の対立が
アリバイづくりの元凶
さらに、アリバイのための面接に陥っているケースのほとんどで、人事部と、採用部門との関係が悪い。採用部門は、良い人材が採れないのは人事部の責任だと思っている。一方の人事部は、採用部門に文句を言われるから、面接できちんと確認したというアリバイを残して、人事部が悪いのではなく候補者が悪いと言う。かくして責任の押し付け合いが繰り返される。
私はこのケースに直面すると、まずはアリバイづくりのためのチェックリストをやめさせる。その上で、人事部と採用部門の合同で、採用面接の際に、候補者の特性を見極めるための質問例をつくっていただくことにしている。
その際、「同業他社の質問例を教えてくれればいい」「効果のあった質問例を提供してくれさえすればいい」などと言われることが多いが、それでは思考停止の悪循環から抜け出せない。採用後にトラブルが発生すれば、今度は提供された質問例が悪かったのだと、コンサルに怒りの矛先を向けるだけだ。大切なのは質問の良し悪しそのものよりも、当事者同士が知恵を絞って、質問例をつくること、それ自体なのだ。
人事部と採用部門が知恵を出し合った結果、初期の段階で出てくる質問例が、「堅実ですか」「柔軟ですか」と質問する代わりに、「堅実だった事例を挙げてください」「柔軟に行動した事例を挙げてください」という事例を洗い上げる質問だ。
候補者の実態を見極める
最も効果的な手法とは
すぐに事例を返答できるかどうかで、見極めようというわけだ。単に「あなたは堅実ですか」などと聞くよりは、見極めの度合いは高いと思われるが、企業が求める人材要件に照らして、実施してきたことを説明できるように、あらかじめ返答例を準備してくる候補者も少なくないので、これとて万能な方法とは言えない。あくまでもベターな質問である。
また、「堅実か、柔軟か、どちらのタイプですか」と聞く質問もある。「堅実ですか」とストレートに聞く代わりに、「堅実か、柔軟か」とニュートラルに聞く方法だ。
しかし、堅実な業務遂行を求めているのか、柔軟な業務遂行を求めているのか、募集ポジションの業務性格から見当がつくようなポジションであれば、質問者が期待する回答をする可能性がある。それを回避するために、「どちらでも結構なのですが」「良い悪いではなくて、どのような志向かお聞きしたいのですが」、という前置きをする工夫例もある。
この質問例が挙げられた際に出された反論で、「堅実な人材を採用したいのに、『どちらでも結構ですが、堅実ですか、柔軟ですか』と聞くとは不誠実ではないか」というものがある。これはもっともな質問だ。不思議なもので、面接官の不誠実さは、フレーズを繰り出す表現の微妙なニュアンスで伝わるものだからだ。
しかし、不誠実さを伝えない方法もある。本心から堅実でも、柔軟でもいいと思うことだ。「堅実であれば、この仕事をしてもらえばよい。柔軟であれば、別の仕事もしてもらえるかもしれない」というように、面接する人自身が固定観念から脱すればよいのだ。
こうしてより効果的な質問例を、人事部と採用部門が、知恵を出し合って検討すること自体が、採用の原動力となる。しかし、質問と回答によるフレーズによる見極めには、やはり限界がある。
さらに見極めのレベルを上げるためには、質問に対する回答内容そのもので見極めるだけではなく、候補者の行動にも着目するといい。例えば、面接時間や面接会場や面接者を急に変更してみる。その際の行動を見て、柔軟度合いを計るという方法だ。
こう話すと、よく受けるリアクションが、「それは邪道だ」「面接ではない」「候補者を引っかけるのか」というものだ。面接以外で候補者を見極めるなど、ルール違反だという意見だが、果たしてそうだろうか。言葉のやりとりだけではなく、行動そのもので見極める。その方がよほど見極めの確度が高いと思うのは、私だけだろうか。