アルバイト・パート, 派遣人手不足でも賃金上昇はまばら 物価上昇に必要な「儲かる経営」
人手不足のために派遣やパートの時給が上昇していると報じられている。しかし、実際は業種によるばらつきが激しい。
ジョブズリサーチセンターによる「派遣スタッフ募集時平均時給調査・三大都市圏」にそれが表れている。前年比を見ると、5月のIT・技術系は+6.9%と高い伸びを示していた。しかし、営業・販売・サービス系は+2.3%、オフィスワーク系は+1%で、いずれも昨年暮れより伸び率が低下した。医療介護・教育系に至っては前年比マイナスである。
同社の「アルバイト・パート募集時平均時給調査・三大都市圏」の4月は947円だった。前年は943円、3月は948円だ。外食産業で時給を大きく引き上げているイメージがあるが、全体で見るとまだそれほどでもない。
日銀が調査している企業サービス価格は、需給ギャップの縮小による賃金上昇を比較的反映し易い物価統計である。その前年比は今年4月は+0.8%だった(消費税増税要因を除く)。3月よりも+0.1%上昇したが、年度が変わって非正規雇用の賃金の改定が行われ易いタイミングの割には上昇は限定的だった。
4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)前年比は消費税要因を除くと+1.5%だ。1年前は▲0.4%だったので、明確に上昇してきている。しかし、円安による輸入物価の上昇、公共事業による建築資材や工賃の高騰、制度要因(高速自動車国道料金は+41%、公立高校授業料は+524%)によって押し上げられてきている面が強い。
ユニクロは秋物の値上げを予告しているが、為替レートが横ばいで推移するなら、円安による前年比上昇は全体としては夏場以降は剥がれてくる。代わりに、賃金上昇による物価上昇が顕在化してこないと、来年のインフレ2%達成は難しい。あと1年程度で2%に行くには、一段のインフレ期待の上昇が必要である。
しかし、筆者は無理に金融政策で2015年にインフレを2%に持っていく必要はないと考えている。それは長期金利の急騰を始め、さまざまな問題を起こす恐れがある。円安や公共事業にも頼らないで、日本経済にとって適度で持続的な「良いインフレ」を起こすには、賃上げの原資となる企業収益の向上が何よりも必要だろう。
英「エコノミスト」誌(6月7日号)は、日本の自動車メーカーが利益率の高いプレミアム市場でシェアを落としてきている問題を厳しく指摘していた。全世界の自動車産業において、高級車は販売台数では全体の12%だが、利益は全体の50%を占めている。
日本を代表する高級車、トヨタのレクサスですら世界の販売台数では押され気味だPhoto:REUTERS/アフロ
ドイツ勢(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)は積極的な投資で世界の販売台数を順調に伸ばしてきたのに、日本勢(レクサス、インフィニティ、アキュラ)の伸びは低い。両者の差は年々広がっている。日系は米国以外では弱く、レクサスでさえ世界の販売台数でジャガー・ランドローバーに抜かれつつある。この記事は、せっかくの高品質イメージを持ちながら、1990年代以降、高級車市場への投資に消極的だった日本メーカーの経営判断を残念がっている。
欧米の優良企業に比べると、日本企業の売上高営業利益率は驚くほど低い。儲かる経営の実現が真のデフレ脱却につながる。