先行ベンチャーに学ぶ、「働き方改革」の始め方

総合先行ベンチャーに学ぶ、「働き方改革」の始め方

政府の旗振りの元、多くの企業で「働き方改革」の導入が進んでいる。NewsPicks上で実施した働き方改革についてのアンケート結果と、先端企業のケーススタディから、“成功する改革”の実践法を考える。

2016年末にNewsPicks上で実施したアンケートの結果によれば、回答ピッカー全体の47%が、「働き方改革に取り組んでいる」と答えている。さらに「働き方改革に関心があり、検討中である」を含めれば、全体の70%が何らかのアクションを起こしており、働き方改革が大きな潮流となっていることがわかる。
従業員一人一人が自分の能力を最大限に発揮できる環境を提供するためにも、働き方改革は重要なテーマとなっている。
今回はスタートアップ企業である株式会社 FiNC でのケーススタディをもとに、働き方改革の進め方を見ていく。
──設立から5年目のFiNCでは、従業員数が急速に増え続けるなか、「働き方改革」にも力を入れています。
南野:僕たちの場合は「働き方改革」というよりも、FiNCが目指す“ウェルネス経営”の実現に向けた組織設計が、たまたま時流にマッチしたという感じです。社員数が50人を超えたころから、本格的に着手しました。
小島:一般的なITベンチャーと違い、FiNCの従業員には、トレーナーや栄養士などのプロフェッショナルも多数在籍しています。創業当時から女性比率も40%と高く、私も含め子供がいる社員も多かったので、「時間に制約のある人材をいかに活用するか」「一人ひとりの生産性をどう高めていくか」は、早い段階から課題でした。
南野:もう一つ、FiNCの大きな特徴は「多様性」です。創業当時からグローバルに進出することを視野に入れているので、人事戦略として、グローバルに多様な人材を受け入れていくための制度設計を考えていました。
現在、社員全体の13%が外国籍、出身地は17か国にまたがりますが、彼らに“日本的ビジネスの常識を理解してもらう”のではなく、“日本人社員がグローバルの常識を身につける”ことを前提にルールを作っています。
──FiNCの社員は、実際にどんな働き方をしているのですか?
南野:エンジニアやデザイナーなどのクリエイティブ職種は、裁量労働制です。あまりフレキシブルにしすぎると逆効果なので、「出社は10時」を標準として、あとは自由。部署ごとに多少の違いはありますが、前日までに申請すれば基本的にリモートワークもOKにしています。
あまりルールで縛らず、個人と上長の裁量に任せている部分が大きいです。ただし、仕事が好きで長時間働きがちな社員には、ウェルネス経営の名に恥じないように、一定の労働時間を超えないよう総労働時間を規制しています。そこは、いま副社長の乗松が中心となって改革を進めています。
小島:栄養士やトレーナーなどのプロフェッショナルチームでは、固定時間で働くメンバーもいれば、時短勤務を行うスタッフもいます。子どもがいる社員は、時には子連れで出勤してもOKなんですよ。小さい企業だからこそ持てる柔軟性も、まだかなり残っていますね。
──生産性の向上と多様性の実現のために、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。
南野:従業員の健康を「フィジカル」「メンタル」「エンゲージメント」の3軸で日々測定しています。自分でフィジカル面の健康管理をできる人がやはり一流のプロフェッショナルです。そういう人材を増やす仕組みをFiNCとして作っていきたい。
メンタル面では、会社以外でのところで本人が持つ様々な環境や状況、例えば育児や介護の責任を負う社員たちが、働く時間や場所の強制によるストレスを受けずに、どう働いてくことができるのか。そういった面から従業員の心身の健康を考えています。
自社サービスの「FiNCインサイト」を活用すれば、個々人の健康診断の結果や、生活習慣などのパーソナルサーベイ、ストレスチェックの回答結果から、3軸それぞれのスコアを数値化できます。それをもとに、個人、部門、組織ごとにアプローチすべき課題もおのずと見えてくる仕組みです。
クラウドで「タスク管理」を効率化
南野:一方で、2016年1月に社内の業務処理ツールを「Office 365」に全面的に移行しました。さらにActive Directory と組み合わせることで、社内のデータリソースへの厳格なアクセスコントロールと、モバイルや外部ツールを含んだ一括管理体制を確立しています。
これを基盤として、業務の徹底的な効率化にも取り組んでいます。最近だとOffice 365を使い、「会議」と「タスク管理」の仕組みを一気に効率的にできるようにシステムを作り、全社にルールとして浸透させました。
FiNCでは、会議に3つのルールがあります。「事前に開催目的を通知すること」、「議事録を取ること」、「アクションアイテム(Action Item)を決めること」です。いくら盛り上がっても、その後の具体的なアクションが決まらない会議はなにより非効率。誰が何を行うか、まで必ず落とし込むことをルールにしています。
そのために、すべての会議室にモニターを上下2台並べ、会議をしながら全員でリアルタイムに議事録をチェックしています。話し合われた内容は「OneNote(ワンノート)」にどんどん箇条書きしていって、誰かの行動に落とし込むべき事柄については、タスクとして設定します。
会議が終わったら、議事録の内容をOneNoteでタスク管理ツールと組み合わせます。会議で設定されたタスクについては「誰が・いつまでに行うか」を指定するだけで、各自のカレンダーにリマインダー付きで追加されるんです。
これを全社に徹底することで、タスク管理ツールを見れば、どのメンバーがどれだけの仕事を抱えているか、どれだけの仕事を完了させたかも一目でわかります。各メンバーの成果を可視化できるし、「その仕事は後回しでいいから、こっちを」といったやり取りもスムーズにできるので、パフォーマンスの最適化にも役立っています。
Office 365 を活用することにより、会社の成長とともに生じる課題についても比較的容易に解決することができています。
一番難しい「カルチャー」の浸透
小島:ITの活用や仕組み化で、効率化や多様性といったさまざまな問題を解決してきましたが、難しいのは「カルチャー」の浸透です。この部分は、テクノロジーだけでは解決できません。人が増えていくほど会社の雰囲気は変化していくので、ITだけに頼らないFace to Faceのコミュニケーションを上手く使う必要があります。
南野:われわれはよく、「手のひらのような組織を目指そう」と言っています。各社員は「指先」のように、それぞれ違っていて特徴があっていい。でも組織として、「手のひら」のようなコアとなる共通の部分を持っていたい。
変わらない「カルチャー」を変軸にしながら、新しい制度やルールは部署単位で試験的に導入して、PDCAを回しながら、どんどん進化させていく。これを実現できているのは、代表である溝口の強いコミットメントと、現場リーダーの「やり切る」という覚悟、この両方があるからだと思います。