新卒3大就活サイトの戦略差
2018年春大学卒業予定者の採用活動が本格化している。人手不足感が高まり企業の求人意欲は強い。学生の就職活動の「情報インフラ」としての役割を担うリクナビ、マイナビ、キャリタス就活の大手就活サイトに掲載された企業数(3月1日時点)は延べ6万2508社と前年の2割増と拡大した。短期決戦が確実視されるなか、学生と企業のマッチングをどう進めるのか。就活サイトを運営する人材支援企業の戦略をみる。【生活報道部・渡辺精一】
掲載企業数は6年で5倍
「ムードに圧倒される。どの企業か迷う」。新卒採用の広報活動が開始された3月1日、リクルートキャリアが千葉市美浜区の幕張メッセで開いた合同企業説明会。友人と訪れた駒沢大の女子学生が話す。2日間に企業1131社が出展し学生3万5000人が参加。人気企業のブースは順番待ちの長い列ができた。
この日、ウェブの就活サイトも一斉に本格オープン。同社が運営するリクナビの掲載企業数は2万7558社。前年より21.7%と大きく伸びた。マイナビ(マイナビ運営)は1万9900社(同16.0%増)、キャリタス就活(ディスコ運営)は1万5050社(同14.7%増)。大手3サイトの延べ数では6年で5倍と伸びが大きい(グラフ)。
掲載企業数を押し上げているのは、新たに新卒採用に乗り出した中小企業群だ。中小企業は従来、転職市場で経験者を中途採用していたが、人手不足で思うように採用できず、新卒で確保しようという動きにつながっている。
リクルートワークス研究所が毎年4月に公表している大卒求人倍率は17年卒採用では1.74倍と高い。昨秋行った18年卒見通し調査でも、引き続き堅調の様相だ。ただし、特に求人意欲が強いのは飲食サービス、小売業など採用に苦戦している業種。人気の高い金融はマイナス金利の影響で求人を絞る動きもみられ、地合いが変わりつつある。
新卒採用が売り手市場であるのは間違いない。ただし、そのぶんミスマッチも広がる。先輩の就活体験の影響を受けやすい学生は、いきおい大手志向を強め不人気業種を敬遠する傾向が強いが、実際には中小企業や不人気業種ほど人材を欲しがっている。採用日程の短期化から、インターンシップなど企業と学生が「事前接触」する機会も広がるが、それを利用して企業・業界研究や自分のキャリア観を高めている学生と、楽観して動かない学生の「二極化」も進む。
大手就活サイトでは3月1日時点でエントリー数が前年の2~3倍に膨らむ大手企業もあった。インターンで企業研究など準備が進んでいる可能性もあるが、「単に大手志向が強まっている可能性があり、ミスマッチが心配だ」(大手人材支援企業)との声がある。
リクナビ AI活用、技術志向鮮明に
大手就活サイトは学生が企業を探すプラットホームの役割を担う。利用度合いは濃淡があるが、就活するほとんどの学生が会員登録している。ミスマッチの解消は大きな使命だ。
「掲載企業数の充実にはこだわった。学生の選択肢を増やしたいためだ」とリクルートキャリア・就職みらい研究所の岡崎仁美所長は説明する。多くの選択肢のなか、学生と企業が効率的に出合えるよう、リクナビの18年卒サービスでは人工知能(AI)活用など技術志向を強めた。
ひとつは、企業から求める学生を探しアプローチできるスカウト型サービスだ。逆求人型、ダイレクト・リクルーティングとも呼ばれ、ここ数年、アイプラグ(本社・大阪市淀川区)のオファーボックスなどのサービスが出ている。企業は応募を「待つ」より積極的な採用ができるメリットがある。一方で、学生は自分のプロフィルに自信を持つ積極タイプに限られるとされてきた。
この点、リクナビは13年から提供するサービス「オープンES」を活用した。学生が履歴書やエントリーシート(ES)をあらかじめ登録しておくことで複数企業に提出できる機能で、約30万人が利用する。この文章の中身をAIを用いて分類することで、単純検索では見つからないような人物の特定ができるようにした。
もうひとつは、動画を使い会社を紹介する「リクナビキャスト」。米グーグルやデジタル動画のビーバー(本社・東京都品川区)が協力。文字では表現できない会社の雰囲気を伝える。動画はYouTubeにも掲載し、企業はその効果を知ることができる。
さらに、より効率的に就活できるよう、学生の行動履歴をAIで解析し、その学生に合ったサイト画面を表示したり、サポート機能を持たせたりするようにした。「技術を駆使し、より効率的で使いやすいサイトに進化させる」と開発責任者の大西哲朗マネジャーはいう。
マイナビ ウェブ中継で制約乗り越える
広報開始の3月1日、マイナビは東京都渋谷区で開いた合同企業説明会でインターネット中継を初めて実施した。第一生命保険など約60社が参加し、累計視聴数は約5万にのぼった。
人材不足が高まるなか、就職・採用活動では場所・時間の制約が課題だ。地方企業ではUターンの呼び込み、首都・関西圏企業では地方学生との接触が大きなテーマだ。学生も過密日程が続き企業説明会に足を運ぶ時間の確保が難しくなっている。
新たな機会の提供として、マイナビはウェブ説明会の拡充を進めている。会社説明会をネット中継する「公開生放送」で、導入は1000社を超える。「地方学生は東京に行かないと重要情報が入らないと焦り、交通費負担も大きい。企業も多くの学生に説明したいという思いは強い。そのハードルを下げる」と同社で新卒採用事業を担当する粟井俊介・統括部長はいう。
サイトでは、一社一社の情報を分厚く提供し、検索のしやすさ、リコメンドを強化した。自分の大学の採用実績があるのかどうかわかるようにするなどきめ細かな対応も進める。
キャリタス 大学とも連携、情報精度高く
大手企業に強みがあるとされるキャリタス就活の駒形一洋編集長は「優良企業との出合いを提供するというのが軸。短期決戦にあわせ、3月以前から就活準備の仕掛けを用意してきた」と話す。
昨年6月のプレオープンから、離職率など学生が知りたい情報を検索でき、ウェブで企業研究が可能なサービスを用意。インターンシップや企業研究などをテーマにしたイベントも充実させ、大学と提携して内定者体験やグループワークも提供してきた。「2月中に志望する企業群をつくるよう呼びかけており、そうした企業情報の提供を強化していく」(駒形編集長)
1999年からの大学向けの就職業務支援サービス「キャリタスUC」も強みだ。企業が配信した求人票を大学が学生専用サイトに公開するクラウドサービス。大学別に情報をきめ細かく配信でき、希望に沿う求人票を優先的に公開する精度の高い情報提供ができる。
コンサルタントが学生に企業を紹介する新卒紹介も行う。以前は、就活を進めても企業が決まらない学生の利用が主だったが、最近では「客観的に合う企業を紹介してほしい」と学生の意識が変化し、早期段階からの利用が増えている。
模索は続く
2000年代以降、学生の就活は、就活サイトに登録し、そこを「入り口」として企業情報を得る手法が主流になったが、ここ数年は関係者でも「想定していなかった規模になっている」と驚くほどだ。雇用環境が変わり、企業の採用の早期化、多様化が進むなか、人材支援企業の模索はなお続きそうだ。
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170316/mog/00m/100/001000d#csidx9eb001fbc7c36e890260fc5b9e6ff25 
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