IoT人材の特需はせいぜい5年と思っていたら「100年」続くらしい

総合IoT人材の特需はせいぜい5年と思っていたら「100年」続くらしい

「とにかく人が足りない」。識者や取材先から、こんな話をよく聞くようになった。とりわけIoT(インターネット・オブ・シングズ)関連の取材を進めていると、人材を求める声が大きい。ベンダーもユーザーもIoT人材の育成や獲得の必要性を強く感じているようだ。

企業はIoTの仕組みを使った新しいサービスや新規事業の開発に躍起だ。投じる人員も増えて、IoTの人材の需要が拡大しているのだ。

企業がIoTの仕組みを用いた新事業を始めたいと考えたら、組み込みソフトはもちろんだが、クラウドやネットワーク、オープン系の情報システムなど、幅広い人材が必要になる。

「求人は増えている。特需ともいえる伸び具合だ」。こう話すのは、転職サイト「リクナビNEXT」の藤井薫 編集長だ。

確かにIoT人材は「特需」を迎えているようだ。しかしそれはいつまで続くのか。こうしたブームは、5年もたてば終息するものだ。

そこで藤井編集長に「この特需はいつまで続くのか」と質問をぶつけてみた。すると、次のような答えが返ってきた。「IoTが新たな時代の産業革命を象徴するのであれば、IoT人材の特需もこれから100年間は続くだろう」。

リクナビNEXT編集長の藤井薫 氏
 本当だろうか。

大手もソフト開発者をかき集めている

まずは、現状でどれだけ熱い人材獲得競争が繰り広げられているのか、だ。藤井編集長によると、リクルートキャリアが2017年2月に発表した1月の転職求人倍率で、最も高いのは「インターネット専門職」の4.97倍。「建設エンジニア」の4.44倍、「組込・制御ソフトウエア開発エンジニア」の4.09倍が続く。これらがトップ3だ。全ての職種の転職求人倍率は1.81倍だから、トップ3は、まさに「特需」といえそうだ。

このうち「IoT人材」にあたるのは、組込・制御ソフトウエア開発エンジニアだろう。1年前の2016年1月は転職求人倍率が3.26倍だったという。それが1年で4倍超の倍率になるほど、獲得競争が加熱している。

こうした人材獲得競争に熱心なことで知られるのは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。2011年にサンフランシスコにソフト開発拠点を設け、1500人の開発エンジニアやデータサイエンティストを集めたという。同社が外販しているIoTプラットフォーム「Predix」の開発も、同社が進めるデジタルトランスフォーメーションの一環だ。

国内の大手製造業も同様だ。例えば、工作機械大手のファナックは、同社のWebサイトでソフトウエア開発人材を募集している。同Webサイトには「IoTの時代に対応するため」と明記している。

工作機械大手ファナックのWebサイト。「IoTの時代に対応するためにファナックのソフトウエアの開発を増強いたします」と明記されている

募集人数は、2017年3月時点で100人となっている。その内訳は組込みソフト開発者が50人、工場用生産管理ソフトウエア開発者が20人、GUIアプリケーション開発者が30人だ。

「当社規定による」ではなく、雇用条件を明記

こうした競争の中で、「人材を求める企業側にも変化がある」(リクナビの藤井編集長)という。募集時の雇用条件が、明確になってきた。

リクナビNEXTで、「IoT」というキーワード検索で調べてみると、100件以上の検索結果が得られた。ここには、技術職と営業職両方が含まれる。検索結果から、各募集をみていくと、年収例が記載されている。一部抜粋すると下記のようなものだ。

 880万円/46歳 月給51万円

 800万円/経験20年、チーフエンジニア、42歳/月給53万円

 977万円/月給55万円 52歳 経験30年

藤井編集長は「IoT人材の検索結果を見ると、年収例を公開している求人が増えているのが分かる。条件を具体的に示すことで、より良い人材を獲得したいと考えている企業の考えが現れている」と分析する。かつては、「当社規定」「委細面談」といった四字熟語が並ぶ求人が多かったそうだ。

また、「50歳を超えたエンジニアが転職するケースが増えている」という。「経験とスキルを持っていれば、年齢は問わない」と考える企業が増えているのかもしれない。

それでもIoT人材が足りないワケ

IoT人材を求める動きは、量も質も変わってきた。人材の流動性が高まり、企業のIoTへの取り組みは加速していくことだろう。

しかし、あらゆるモノがネットにつながるのは、まだまだ先の話だ。藤井編集長が述べた「100年」というのはざっくりした表現には違いないが、確かに、数年では実現できない。世界のすみずみまで、あらゆるところにIoTが浸透するまで、IoT人材を求める企業は絶えないのかもしれない。

工場ではロボットが会話しながら作業を進め、街の空を数千台のドローンが舞う。クルマは話しかけるだけで目的地に連れてってくれる。まるでSFの映画かマンガの世界だが、こんな世界が100年後にくるのであれば、可能な限り待っていたい。