新卒準大手の前田建設に就活生が続々集まるワケ 人手不足に悩む建設業界でなぜ人気なのか
2020年の東京五輪に向けて都心の再開発やインフラ整備が加速し、バブル期以来の好決算を謳歌する建設業界。その中で投資家や学生の注目を集めている準大手ゼネコンがある。1919年創業の前田建設工業だ。

もともとトンネルなどの土木に強い前田建設がここ最近、他社と一線を画すのが「脱請負」事業。ゼネコンの収益柱はデベロッパーや官公庁から大型工事の施工を請け負う建設事業だが、脱請負はその名の通り、自らが事業主体となって企画や運営も手掛けるビジネスだ。
前田建設は「脱請負No.1」を掲げ、政府が推進するコンセッション(インフラの運営権を民間に売却する事業)や、太陽光などの再生可能エネルギー発電事業にいち早く目を付けた。請負以外の分野に力を入れる背景には、少子高齢化とともに縮小していく国内の建設市場への危機感や、景気に左右されやすい請負業特有の体質から脱却する狙いがある。
愛知県の有料道路の運営権を獲得
2016年10月には森トラストなどと愛知県の有料道路8路線の運営権を獲得。これはコンセッションとして、東急電鉄などと参加する仙台空港に続く2件目となる。今2017年3月期の通期決算からは、本業の建設事業とは別に、これら脱請負の取り組みをまとめたセグメントでの売り上げや利益を公表するという。
投資家からの評価は高まりつつある。愛知の有料道路の運営が始まった昨年10月以降、株価は上昇基調をたどり、中間決算発表後の11月28日には過去20年間で最高値となる1091円を記録した。トランプ相場も重なり、昨年末は多くのゼネコンが高値を付けたが、業界内でも値上がり率は際立っていた。
そして就職活動中の学生からの人気も高まっている。同規模のゼネコンからは「内定を出した学生も前田建設にとられていった」という声も上がる。脱請負に対する関心が高いのか、特に目立つのが、将来的に経営企画や経理などを担う「事務系」を志望する学生だ。「昨年は想定以上に優秀な学生がたくさん応募してきて、事務系社員は当初の予定を上回る人数が入社する見通し」(同社)。
バブル崩壊後の建設不況時代、ゼネコンは新規採用を抑える時期が続いた。そのため30~40代前半の社員が少ないいびつな構造の会社が多く、各社は近年採用人数を増やしている。ただ、業界内では知名度や利益水準でスーパー5社(大成建設、大林組、清水建設、鹿島、竹中工務店)が圧倒的優位に立つ。準大手以下からは「内定辞退で予定していた数の学生を確保できない」(中堅ゼネコン幹部)という悩みも聞こえる中、前田建設のようなケースは特殊といえる。
オープンイノベーションを推進
2018年、同社は茨城県取手市に新技術研究所を設置する。メインコンセプトとなるのが「オープンイノベーション推進型」。最先端技術を取り扱う研究所は閉鎖的空間となるのが一般的だが、さまざまな分野のベンチャー企業がともに研究開発できるスペースを広く確保する計画だ。
前田建設はオープンイノベーションを推進する専門部署を設置してベンチャー発掘を進め、2015年からは資金的支援を開始。これまでに自動施工に必要な測位技術や、蓄電技術を開発するベンチャー3社に出資している。
共同研究を通した新事業の創出も視野に入れており、ベンチャー企業と積極的に連携する動きはゼネコンでは珍しい。「新しい価値やビジネスを生み出すような技術はベンチャーにこそある。技術の種はたくさんあるが、何に使えば付加価値を生み出せるのか、ゼネコンだからこそわかることがある」(大川尚哉・取締役常務執行役員)。
他のゼネコンでも、開発事業(施工だけでなく土地の仕込みから建物の管理運営まで担うこと)や洋上風力発電など、従来とは異なるビジネスを始める動きはある。ただ、会社によってはバブル期に開発事業を拡大した結果、地価の暴落で大損を招いた苦い経験もあり、本業以外の分野の開拓には本格的に足を踏み出せていないのが現状だ。
脱請負やベンチャーとの連携をはじめとした先駆的な事業がどこまで発展していけるのか、いまだ見通せない部分は大きい。それでも前田建設に注目が集まるのは、従来のゼネコンの保守的な姿勢が変革していくことへの期待感の表れなのかもしれない。