「逆OB訪問」「逆求人」、就活戦線に異変あり 空前の売り手市場で今年は企業が攻める

新卒「逆OB訪問」「逆求人」、就活戦線に異変あり 空前の売り手市場で今年は企業が攻める

2018年卒新卒採用では、昨年とは違う企業側の動きが見られそうだ。

2017年卒新卒採用では、前年からのスケジュール変更などの影響を受けて大半の企業が苦労していたが、今回は同じ轍(わだち)を踏まないように企業はさまざまな工夫を行っている。今年はどのような変化が起きているのだろうか? HR総研では、企業の人事担当者に2018年卒採用でどのような活動を行う予定か、アンケート調査を実施した。

大学と積極的な接触を図る企業

まず、広報開始の3月までにどのような活動を行うか、人事担当者に聞いた。

「大学キャリアセンター訪問」が最多で47%、「大学主催の業界研究セミナー」への参画が45%。半数近い企業が大学へのアプローチを行っていることがわかる。3月からの広報開始で就職ナビでのエントリー受け付けが始まるが、企業はその前から採用したい大学に向けて動いているのだ。「研究室・ゼミ訪問」をする企業は30%、「大学主催のキャリア支援講座」に参画する企業も20%ある。自由記述でも「大学との積極的なコミュニケーションを行う」(従業員規模1001人以上、商社・流通)、「学内説明会への積極的な参画」(301~1000人、情報・流通)などの声が挙がっている。

企業が積極的に大学へアプローチするのはなぜだろうか。実は2017年卒の採用が思うようにいかなかったことが背景にある。選考開始時期が8月から6月に変更されたことで、実質的な採用活動が2カ月短縮され、就職ナビに頼った企業では母集団形成(応募者を集めること)が想定よりも難しくなった。

また、学生の半数程度が2社以上から内定を得る一方、企業にとっては多くの学生から内定辞退されてしまい、予定の採用人数を確保できず採用選考が長期化してしまった(HR総研「2017年新卒採用 選考解禁後の動向」調査結果)。こうした2017年卒採用での反省から、企業は就職ナビでのエントリーに頼る”待ち”の採用から、採りたい学生がいる大学のキャリアセンターへ直接訪問し、「御校の学生をぜひ弊社に」と応募を働きかける、”攻め”の採用にシフトしてきている。

つまり、大学のキャリアセンターには、「この大学から採用したい」という企業からの求人票が3月1日以前にあるということだ。

水面下で広がる「逆OB・OG訪問」

他にもさまざまな変化がみられる。「2018年卒採用から新しく始めようと考えていること」について自由記述で回答してもらったので、代表的なものを紹介しよう。

◆大学との連携
・OB・OGの活用(1001人以上、メーカー)
・推薦応募の受け付け(1001人以上、メーカー)
・教授訪問・研究室訪問の拡充(301~1000人、メーカー)
◆早期化
・面接時期を早める(1001人以上、メーカー)
・早期に内定を出す(300人以下、メーカー)
・インターンシップによる早期接触(301~1000人、メーカー)
・インターン生への早期選考開始(300人以下、メーカー)
◆逆求人型の活用
・逆求人型サイトの活用(301~1000人、商社・流通)
・逆求人のより活用(301~1000人、メーカー)
・逆求人の媒体を利用してみたい(300人以下、メーカー)
◆女性採用
・女性向け座談会の開催(1001人以上、情報・通信)
・女性採用のため、就職サイトの女性向けシステムの利用(301~1000人、情報・通信)
◆情報発信・選考方法
・SNSでの情報発信(300人以下、運輸)
・動画のオープン配信(300人以下、メーカー)
・コース別・職種別採用の実施(300人以下、サービス)
・選考学生をタイプ別に分け、タイプに即した選考方法を実施(1001人以上、情報・通信)

OBやOGの活用については、OB・OG訪問を学生から受け付けるのではなく、採用実績のある大学に若手社員を使ってアプローチする「逆OB・OG訪問」の手法が広がっている。クラブやサークルの後輩に対し、口コミでセミナー告知をするなど、公開情報とは違うルートで学生に接触しようとしている。

また、企業規模にかかわらず、採用活動の早期化が半ば公然と行われている。経団連加盟の大手企業でも、実質的な採用選考活動は6月以前に開始している。「懇談会」「面談会」などと銘打って学生と会う機会をつくったり、インターンシップに参加した学生がエントリーした際、早期に選考を開始したりしている。表だって選考とは言わないものの、実質的には選考だと考えたほうがよい。就職戦線で勝ち抜くためには、こうした企業の採用活動に乗り遅れないようにしたい。

「逆求人」「ダイレクトリクルーティング」というのは、ここ数年普及してきた採用支援の仕組みだ。就職ナビでは、企業が募集要項や自社アピールを掲載して就職活動をする学生がエントリーするのに対し、「逆求人型サイト」では就活生が自分のプロフィールを同サイトに登録、採用企業がそれを検索して応募してほしい学生に、スカウトメールを送って応募を促す。

逆求人型の採用がさらに普及

こうした仕組みはもともとは2010年ごろからキャリア採用で活用されてきたものだ。日本では「ダイレクトリクルーティング」、海外の人事業界では「ダイレクトソーシング」と呼ばれる。従来は人材紹介会社に頼っていた採用を、自社の採用担当者が自社の要件に合った人材を直接呼び込むことで、マッチング精度が上がり、コストメリットも生じることで普及してきた。こうしたキャリア採用の仕組みを新卒にも応用したのが、「逆求人型」「新卒ダイレクトリクルーティング」と呼ばれるサービスだ。

代表的なサイトのひとつに、i-plug社が運営する「OfferBOX(オファーボックス)」がある。2017年卒の就活時期には4万2000人の学生が登録したという。学生にとっての一番のメリットは、エントリーシートの形式に縛られず、自己アピールをできること。大学時代の活動だけでなく、幼少期からどのように成長したのかなど、自分のありのままを自由なスタイルで表現できる。エントリーシートは各企業の形式に合わせて1社ずつ記入しなければならないが、「OfferBOX」では1度登録するだけでよく、さらに就活中に登録内容を書き換えることもできる。

企業がダイレクトリクルーティングを使い始めているのは、採りたい学生が採用できていないという危機感からだ。全国展開をしている企業であっても、説明会は主要都市でしか行えないが、この仕組みでは採用したい地域の学生に直接接触することができる。また機械工学や電気工学といった機電系の学生や、TOEIC800点以上の学生など、欲しい人材要件を満たす学生だけに絞ったアプローチも可能。学生には名が知られていないBtoB企業などは、就職ナビに掲載しても、学生からのエントリーを必要人数集めるのに苦労しているが、企業が学生に直接アプローチすることで、自社を知ってもらうことができるわけだ。

2016年4月から女性活躍推進法が施行され、企業には女性管理職比率や女性社員の採用状況など、女性社員の活躍に関する目標設定や情報公開が義務づけられた。企業も目標を達成すべく、2018卒採用では女性採用に特化した取り組みも増えている。

自由記述のコメントを見ると、「女性向け座談会の開催」(1001人以上、情報・通信)、「女性採用のため、就職サイトの女性向けシステムの利用」(301~1000人、情報・通信)といった声があがる。特に情報・通信系の企業が積極的だ。IT企業は理系の就職先と思われがちだが、プログラマーやシステムエンジニアなどの職種は、理系だけでなく文系の女子学生も採用しているし、先輩女性社員も数多く活躍している。そうしたモデル人材と学生が触れ合う機会を増やし、女子学生の応募を多く集めようとしている。

もちろん、女性を積極的に採用する企業は、IT系だけではない。女性活躍推進を所轄する厚生労働省が作成した「女性の活躍推進企業データベース」には、登録企業約7000社の「採用した労働者に占める女性労働者の割合」「採用における男女別の競争倍率」「男女別の育児休業取得率」「管理職に占める女性労働者の割合」など、気になる情報が公開されている。各企業がどのような女性活躍推進策に取り組んでいるか、チェックしてみてはいかがだろうか。

選考方法そのものを見直す企業も

SNSを使った情報発信もかなり浸透してきている。HR総研の調査では、2016年卒学生のうち、文系の93%、理系の88%がLINEを使い、さらに文系の75%、理系の69%がプライベートでFacebook を使っている。学生へのアプローチ方法として、これらのSNSを活用していこうというのは当然だろう。また採用ホームページ上に学生が自由に閲覧できる、自社の紹介動画を掲載する企業が増えてきている。先輩社員や職場紹介も動画コンテンツにすれば、写真やテキストよりリアルに伝えることができるからだ。セミナーに参加しづらい地方在住の学生対策としても有効である。

選考方法でも工夫を凝らす企業が出ている。これまで職種を分けずに採用してきた企業では、「コース別・職種別採用の実施」(300人以下、サービス)を行い、採用後のミスマッチを減らそうとしている。さらには、「選考学生をタイプ別に分け、タイプに即した選考方法を実施」(1001人以上、情報・通信)という、新しい選考方法を実施する企業も出てきた。適性診断テストに性格やタイプを判別する設問を取り入れ、分析されたタイプによって選考方法を変えるのだ。こうすることで、学生の人物像をより詳細に見ていくことができる。新卒社員の早期離職を防止するため、企業はより自社にマッチする学生を採用しようとしているのだ。

企業側の採用の早期化や多様化が進む中、就活生側も就職ナビの利用だけでなく、大学キャリアセンターの活用やダイレクトリクルーティングサイトへの登録、OB・OG訪問によるリアルな口コミ情報の入手など、多様な就活を展開することが成功への近道といえるだろう。