厚労省「ジョカツ部」、働き方改革で苦悩

総合厚労省「ジョカツ部」、働き方改革で苦悩

厚生労働省は10月、女性活躍推進に向けて「ジョカツ(女活)部」を立ち上げた。省内に部屋を割り当てられるような部局ではないが、塩崎恭久厚生労働相が直々に20~30代の若手職員を部員に任命。若手の有識者などの話を聞いて、女性活躍推進に向けた「特効薬」を探るのがミッションだ。

ジョカツ部は創部から約2カ月しかたっていないが、今月中に中間的な結論を出す方針だ。政府が年度内にまとめる働き方改革の実行計画にも反映させたいからだ。同省幹部は「奇策でも構わない」と発破をかけるが、ジョカツ部は「そう簡単に見つからない」と苦悩している。

■きっかけは内閣官房の依頼

 

厚労省が立ち上げた「ジョカツ部」は20~30代の若手で構成する

厚労省が立ち上げた「ジョカツ部」は20~30代の若手で構成する

創部のきっかけは、内閣官房から「働き方改革の目玉として、女性の活躍につながる施策を何か考えてほしい」と厚労省へ依頼があったことだ。厚労省は4月に「女性活躍推進法」を施行したばかり。推進法には女性の働きやすい職場づくりをするよう大企業に実行計画を提出させる内容が盛り込まれている。さらに発展させるとすれば、大企業に限っていた実行計画の提出義務を中堅企業などにも広げることが真っ先に浮かぶ。ただ、この政策は経済界からの反対の声が根強く、調整が進んでいない。

厚労省幹部は「『いずれは』というただし書きつきで、実行計画の提出を中堅企業にもお願いするというのはどうか」と内閣官房に提案した。返答は「NO」。政府の働き改革の目玉で「いずれは」といった中途半端な政策は通用しない。

厚労省には女性の労働参加を30年間推し進めてきたという誇りがある。何も出さないのでは厚労省のメンツがつぶれる。そこで厚労省は若手をあつめ、塩崎厚労相直属の女性活躍推進チームである「ジョカツ部」を創部した。経営者側から反対されず、かつ、女性の活躍を後押しする新政策を絞り出すことが求められている。

ジョカツ部は10月下旬から有識者のヒアリングを開始。重鎮の学者ではなく若手・中堅に絞り、いわゆる「ブラック企業」のアナリストである新田龍氏や、ミニ保育所を手掛けるNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏らを招いた。手あかがついていない「奇策」のヒントが出てくることを期待した。

だが、両氏が言及した具体策は「36協定の特別条項廃止」や「インターバル規制の導入」など。36協定は労働基準法36条にもとづき、労使協定を結べば残業や休日労働が認められる仕組みで、特別条項を付けると残業時間を制限なく延ばせるというもの。政府は残業時間に上限を設ける検討をしているが、「特別条項の廃止」となると経済界の抵抗は強い。

インターバル規制は従業員が職場を退社してから翌日に出社するまで一定時間を空ける制度だが、こちらもルールの強制的な導入には経済界が難色を示す。ともに奇策と言うよりも「王道」に近い。しかも経済界との調整が一筋縄にはいかない政策だ。

ジョカツ部の1人は「わかったのは奇策が必要なのではなく、経済界などとの調整から逃げずに王道の政策を進めることだ」と語る。だが厚労省内のベテラン官僚の間では、労使の反発を呼ぶような過度な規制導入や抜本的なルール改正には慎重な意見が強い。

■狙うは奇策か王道か

ジョカツ部は今月下旬、塩崎厚労相に仕事と育児などの両立を目指す部下を支援する「イクボス宣言」をしてもらうことを予定している。同省幹部らの参加も呼びかけ、「土日・定時以降に仕事を依頼しない」など6項目を宣言してもらう。しがらみの少ない「奇策」だが、あくまでも上司の自主的な行動に頼っている。功を奏すかは未知数だ。

経済界などとの調整から逃げずに王道の政策を推すか、調整が必要ない奇策を立てるか。厚労省幹部が「労使の難しい調整を回避しながら、内閣官房を納得させる対策を考える」というミッションを丸投げしたというのが真実だとすれば…。ジョカツ部の苦悩は簡単に晴れそうにない。