総合資生堂の働き方改革と、テレワークをサポートする 自動メークシミュレーション技術(前編)
長年女性の活躍する会社として知られている資生堂。多くの企業が女性の働きやすさを目指した改革を行う中、資生堂は「女性も働きやすい」会社から一歩進んだ、「男女ともに子育て・介護などと仕事を両立しながらしっかりキャリアアップできる」会社づくりに着手しています。
そんな資生堂が日本マイクロソフト社の協力のもと開発した、テレワークをサポートする新たな技術をご存じでしょうか。その名もズバリ「TeleBeauty(テレビューティー)」。オンライン会議などの際、自動的にメークや肌色補正をしてくれる技術です。
「せっかく在宅勤務で仕事ができても、オンライン会議のためだけにメークをするのは負担」。テレワークで多くの女性が感じる悩みに、TeleBeautyは資生堂ならではの解決策を示しています。
前編では、このテレワークにも後押しされる資生堂の働き方改革への取り組みを、同社人事部の木村さんにお話しいただきます。
資生堂ジャパン株式会社 人事部 人事企画室長
木村 剛志さん(キムラ ツヨシ)
1988年、株式会社資生堂に入社。トイレタリー製品を扱う営業第一線に配属。1993年に本社へ異動しトイレタリー事業の営業企画を担当。その後、2006年に経営企画部(現・経営戦略部)、そして2008年に現在の人事部へ異動。人事部ではスタッフィング、評価、昇格、そして採用、研修などを担当した後、2016年より女性活躍推進や働き方改革の窓口を担当。
株式会社資生堂 宣伝・デザイン部 クリエーティブ企画室長
片岡 まりさん(カタオカ マリ)
慶應義塾大学文学部哲学科美学・美術史専攻卒業後、資生堂国際部入社。商品開発、マーケティング部門、結婚・出産後にお客さまセンター、経営企画部を経験後、販売会社企画統括部長、CSR部次長を経て現職。日本ヒーブ協議会第21期会長。夫と夫の両親、21歳の長女(ニューヨーク在住)の5人家族。趣味はゴルフ、読書、着物。
2016年は、資生堂にとっても女性活躍を考える年

資生堂は、長年女性活躍の先進企業として知られています。これまでの取り組みを教えてください。
木村さん:2016年は女性活躍推進法の施行に伴い、多くの企業で女性活躍に向けた取り組みが行われたことと思います。資生堂にとっても、今年は改めて女性活躍を考える年となりました。
資生堂ではかねてより、さまざまな改革を行ってきましたが、これまでの段階をみると3つのステージに分けられると考えます。第1ステージは「子供ができたら多くの女性が退職してしまう(両立困難)」状態。第2ステージは、「女性は育児をしながら仕事を継続している(両立可能)」状態。そして今まさに目指している第3ステージは、「男女ともに子育て・介護などと仕事を両立しながらしっかりキャリアアップできる」状態です。
女性社員が多く在籍する資生堂では、1986年の男女雇用機会均等法の施行にともない、「女性の働きやすい環境づくり」にいち早く取り組み始めました。育児休業制度や、幼い子供がいる社員の勤務短縮を認める育児時間制度の導入などがその例です。
それでもやはり、結婚や出産を機に退職してしまう社員は少なからずいました。そこで第2ステージの、女性が育児と仕事を両立できる状態を目指し、2000年代には更なる施策が導入されました。事業所内保育所「カンガルーム汐留」の開設や、男性社員の育児休業取得促進のための2週間以内の育児休業有給化などがこれにあたります。
こういった取り組みを通じ、資生堂は女性に優しい、女性が働きやすい会社として認められるようになりました。現在、私たちはここからさらに、第3のステ―ジを目指しています。

「女性が働きやすい会社」から「女性も活躍できる会社」を目指す
なぜ、「女性が働きやすい会社」として広く知られる資生堂が、あえて次のステージを目指すことを決めたのでしょうか。
木村さん:「働きやすい、優しい会社」は、必ずしも女性が「活躍できる会社」とは限りません。女性の働きやすさだけを追求することは、ある意味では成長の機会を失わせ、女性社員のキャリアアップを妨げてしまうかもしれない。
資生堂が最終的に目指しているのは、女性社員が家事や育児、介護などと仕事を両立して働いていることではなく、男性も女性も、家事や育児、介護などを分担しながら、同じようにキャリアアップしていけることです。それこそが本当の意味で、女性が活躍できる環境を実現しているといえます。そのため、「女性も働きやすい会社」を超えて、次のステージを目指そうと考えたのです。
まず第一歩として、2014年からBC(ビューティーコンサルタント/美容部員)の働き方改革を行いました。資生堂では、デパートや化粧品専門店などの化粧品売り場で働くBCを約1万人雇用しています。このうち、子育てのために短時間勤務制度を利用し、主に早番のシフトで勤務を行っていた社員に対して、それぞれの可能なかぎり遅番や休日のシフトにも入るように求めたのです。
もちろん、どのくらい早番以外のシフトに入れるのかは、一人ひとりと面談し、それぞれの子育て状況に合わせて決めていきました。これによって、子育て中の社員であっても、できる限り成長の機会を得られる働き方へと移行しようと考えたのです。
働き方改革の一環として、リモートワークに関する取り組みなどがあれば教えてください。
木村さん:もともと資生堂には多くのBCが在籍しています。BCはデパートや化粧品専門店などでの接客販売を主な業務としているので、在宅勤務ができません。そのため、資生堂全体でも在宅勤務の導入は遅れていました。
2016年1月に在宅勤務制度を導入した後も、実際に制度を利用している社員は導入後半年経過時点で80名程度にとどまっていました。というのも、制度の利用には「前日までの事前申請が必須であること」「週2回、月8回までの利用に限ること」「勤務場所を自宅に限ること」など、一部利用しにくいルールがありました。
2016年に女性活躍に改めて取り組むにあたり、効率的で効果的な働き方の重要性を感じていました。そしてそれには、時間や場所にとらわれない一人ひとりにあったワーキングスタイルの導入が必要でした。
そこで、社員の中から希望者を募り、より自由度の高いリモートワーク制度のパイロット運用を行うことにしました。まず10月14日から17日の実施期間で募集を行い、手を挙げた社員は400名にのぼりました。さらに追加で300名の希望者にも、11月に実施してもらいました。
会社全体の母数から見れば、この700名の導入はまだまだ少ないでしょう。しかし、資生堂にとっては大きな一歩となりました。制限をできるだけ無くした形での運用を行ってみることで、見えてきたものが多くありました。
実際にパイロット運用を行ってみて、社員の反応はいかがでしたか。

木村さん:運用後の社員の声は、大きく二つに分けられました。一つ目は、多くの社員からの、極めてポジティブな反応です。例えば「オフィス以外で仕事をする際に、普段よりも集中することができた」というもの。雑音の少ない環境で業務に取り組むことができるので、能率が上がったことが予想されます。
もちろん、導入を行う上での不安の声もあります。主にマネジメントする側から多く寄せられ、「常に顔が見える状態ではなくなってしまうことで、コミュニケーションがとりづらくなるのではないか」といった意見がこれにあたります。
しかしこのようなネガティブな意見に対しても、パイロット運用によってある程度改善策が見えてきたと考えています。例えば、コミュニケーションの課題に関しては、オンライン会議システムの導入などでも一定の効果が見込めるでしょう。
オンライン会議の時間だけでなく、仕事中にずっと回線をつないでおけば、同僚の姿が常に見えるので「リモートワークによって「会社から切り離されてしまうように感じる」といった不安もぬぐえるかもしれません。
資生堂では今回のパイロット運用での声を活かし、オンライン会議システムなども活用して、2017年1月にリモートワークの本格導入を目指しています。もちろん、自由度を高くするということには、その分責任も伴います。それを社員にも理解してもらいながら、よりよいかたちでの運用を進めていければと考えています。
後編では引き続き木村さんと、TeleBeautyの開発に携わった宣伝・デザイン部の片岡さんに、開発の背景や今後の資生堂の働き方改革で目指すことをお話しいただきます。