「ヒト」に投資を!従業員のモチベーションを高める人事システム

総合「ヒト」に投資を!従業員のモチベーションを高める人事システム

世界ではHR Techが熱い。アメリカでHR Tech EXPOに参加、帰国したばかりのリンクアンドモチベーションの麻野耕司氏が、アメリカの現状と日本のHR Techをリードする同社の試みについて寄稿した。


企業が生き残っていくには、3つの市場で選ばれなければならない。商品市場で事業活動を通じて顧客から、資本市場で財務活動を通じて株主や投資家、金融機関から、そして労働市場で組織活動を通じて従業員や応募者から選ばれる必要がある。これが、「モノ」「カネ」「ヒト」の経営の三要素だ。

産業構造の変化によって、いまこの3つの市場とそれを巡る動きにパワーシフトが起こっている。第三次産業の比率が高まり、ハードの時代からソフトの時代への転換が進んでいるためだ。

ハードの時代、商品をつくるためには設備とそのための資金が必要だった。つまり商品市場における事業活動と資本市場における財務活動が重要だった。しかし、ソフトの時代に商品を生み出し、消費者に届けるために必要なのは人材である。成功するためには、労働市場における組織活動こそが大切な時代になった。「モノ」「カネ」中心から、より「ヒト」が重要な時代への転換だ。

ITシステムについても、これまで日本企業が重視してきたのは商品市場で顧客から選ばれるためのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムや、それら業務を支えるERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)システムだった。しかし、これからの時代に必要なのは労働市場で従業員や応募者から選ばれるためのERM(Employee RelationshipManagement:従業員関係管理)システム。企業はシステム投資の対象をダイナミックに変えていく必要がある。

アメリカでは、こうした市場のパワーシフトへの対応はもっと進んでいる。HR Techサービスの提供、導入ともに日本よりも数歩先をいっている印象だ。

アメリカのHR Tech市場の第一人者でバーシン・バイ・デロイトの社長、ジョシュ・バーシンは、HR Techは6つの領域で導入が進んできたと言う。給与、採用、教育、評価・配置、コミュニケーション、そしてエンゲージメントだ。

特にエンゲージメントは、いまアメリカで最も注目を集めている領域だ。企業と従業員の相互理解・相思相愛の度合いを深め、会社への愛着や仕事への情熱を高めようという考え方で、従来の従業員満足度との比較でも、より業績に直結している。調査でも、エンゲージメントスコアの上昇は退職率の低下、生産性や顧客満足度の向上、利益率の改善に大きなインパクトがあるという結果が出ている。

リンクアンドモチベーションでは、エンゲージメントではなくモチベーションという言葉を使って、いち早く企業と従業員の関係性、ERMに着目し、さまざまなコンサルティングを提供してきた。特に、今回新たにリリースした組織改善サービス「モチベーションクラウド」は、日本初の全く新しいERMシステムである。組織開発、モチベーション向上の領域でブレイクスルーになるはずだ。

組織開発の「PDSサイクル」をまわす

多くの企業で組織開発やエンゲージメント、モチベーション向上がうまくいかないのは、「ものさし(数値目標)」がないために、Plan(目標設定)→Do(進捗管理)→See(現状把握)というPDSサイクルが回っていないせいだ。事業活動にはP/L(損益計算書)や各種KPI(重要業績指標)といった「ものさし」があるが、組織活動に「ものさし」はなかった。感覚的、定性的に活動が進められ、失敗に終わることが多いのだ。

そこでモチベーションクラウドでは、組織活動にモチベーションインデックス(MI)という「ものさし」を持ち込んだ。

そして、それらの「ものさし」をもとにSee(現状把握)→Plan(目標設定)→Do(進捗管理)の順に組織改善を進めていく。

Seeは従業員を対象にした調査。132問の設問に20分程度で回答してもらう。結果を項目別、部署別、階層別などさまざまな切り口で分析すると、企業内のERM、モチベーション、コミュニケーション、マネジメントの状況が明らかになる。クラウド上にはリンクアンドモチベーションが過去に蓄積した2,350社50万人分のデータがあり、同業種や同規模の他企業との相対比較もできる。

Planでは、Seeで明らかになった状況をもとに、MIの目標数値と、それらを達成するためのアクションプランを定める。目標数値やアクションプランは企業全体のものだけでなく、部門、部署ごとに設定することでより効果が高まる。アクションプランは192個用意されており、組織改善についてノウハウを持たない現場のマネジャーでも対応できる。

Doでは、Planで設定したアクションプランの進捗管理を行う。現場のマネジャーは月次もしくは隔週で進捗状況をクラウド上で報告。その際、期限を知らせるアラート機能や経営陣、人事がコメントできるフィードバック機能が、確実なアクション実行を後押しする。

なお、過去のデータを調べると、PDSサイクルは、サイクルが1周するのに要する時間が短くなるほどMIが高くなる傾向にあった。そのため、モチベーションクラウドでは現在、ほとんどの企業が1年ではなく、1カ月から半年でPDSサイクルを回している。

いまアメリカのHR Tech界では、HR Techの活用主体が、従来の人事担当者から現場の従業員に移りつつある。モチベーションクラウドも、経営陣や人事担当者だけでなく、現場の従業員にも活用しやすいシステムとして開発している。

また、現在はPlanの段階でコンサルタントのサポートによって数値目標やアクションプランの設定が行われているが、将来的には人工知能(AI)を活用することで、より精度の高いプランニングが可能になりそうだ。人間のプロジェクトマネジャーの記憶力には限界があるが、AIを導入すれば、モチベーションクラウドに蓄積されたMIやアクションプランのデータ2,350社分(1社に20部門あるとすると47,000部門、53万人分)をいつでも活用できるようになる。

コンサルタント会社タワーズワトソンの2014年調査によれば、日本のエンゲージメント指数は先進国の中でも最低水準だ。企業に対して高いエンゲージメントを持っていると答えた従業員の割合は、世界平均では40%、アメリカは39%。日本は21%だった。モチベーションクラウドは、「ヒトが資源」であるはずのこの国の、そんな閉塞感を打破する可能性を持ったHR Techプロダクトなのだ。