くらし☆解説 「人手不足 身の回りへの影響は?」

総合くらし☆解説 「人手不足 身の回りへの影響は?」

きょうのテーマはこちら。「人手不足 身の回りへの影響は?」。今井解説委員です。

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Q)確かに、人手不足という声をよく聞きますが、かなり深刻なのですか?

A)そうなのです。町を歩くと、あちらこちらの店に、「スタッフ募集」とか「アルバイト緊急募集」といった張り紙があるのを目にします。
これまでも、格安航空会社のパイロットとか、介護といった、専門性の高い、あるいは賃金が相対的に低い仕事で、人手不足が叫ばれていましたが、このところ、それが、幅広い分野に広がっているのです。影響もでてきています。

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▼ 例えば、大手の外食チェーンの中には、アルバイトが集まらず、店を休業したり、閉鎖に追い込まれたりするところもでてきています。

Q)話題になりましたね。

A)ほかでも、
▼ 例えば、建設の現場。被災地以外の地域でも、人手が集まらず、マンションの建設が遅れる。保育園が予定通り完成できないという事態も起こっています。

Q)マンションや保育園に入ろうと思っていた人は、困りますね・・・。

A)また、
▼ トラックの運転手が足りなくて、配送が間に合わない。
▼ ものづくりの現場でも、人が足りなくて注文の増加においつかない。
こうした声が、あちらこちらから上がっています。

Q)どのくらい人が足りないのですか?

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A)こちらは、4月の有効求人倍率。これは、仕事を探す人一人に対して、何人分仕事=求人があるかを示す数字ですが、4月は、1.08倍でした。

Q)仕事を探している人全員が、仕事につけたとして、企業からみると、まだ人が足りないという状態ですね。

A)そうです。特に、外食などの接客・給仕は、2.54倍。建設は、2.6倍。トラックやバスなどの運転の仕事は、1.78倍。と、深刻な人手不足の状態です。

Q)ついこの前まで、仕事がない、就職氷河期とか、言われてきましたよね。

A)今でも、仕事によっては、例えば、
▼ 人気の高い一般事務は、0.23倍=つまり、4人の希望者に対して、仕事が一人分しかない状態です。誰もが希望する仕事につけるわけではない。ミスマッチの状態は、続いています。
とはいっても、全体で、1.08倍というのは、2006年7月以来の高い数字。およそ8年ぶりの深刻な人手不足の状況です。

Q)なぜ、急に人手不足になったのですか?

A)このところの人手不足の背景を見てみると、まず、
▼ 景気の回復で、消費が増えて、多くの企業が採用を増やしている。人を集めるために、給料を上げる企業もでてきている。
▼ そういう中で、特に、これまで、低い賃金で、厳しい長時間の労働を強いられてきた人たちが、もう耐えられないと。次々、辞めて、より待遇のよい仕事に移ってしまう。新たに人を募集しても、集まらない。そういう動きが相次いでいるのが、最近の大きな特徴です。

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Q)給料は上がっているのですか?それは、ありがたいことですよね。

A)そうなのです。人手不足は、働く側にとって、悪いことばかりでもありません。

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▼ 正社員については、今年の春闘で、中堅・中小の企業でも、賃金を上げる動きが目立ちました。これも、若手を中心に人材をつなぎとめようという狙いもありました。
正社員以外でも、
▼ パート・アルバイト、そして、派遣の、募集の時の時給は、前の年の同じ月と比べて、上がる傾向が続いています。
▼ また、人手不足が目立つ外食や流通業界では、非正規の社員を、希望に応じて、正社員や、働く場所や時間を限定する「限定正社員」に登用する動きも目立っています。こうした正社員になることで、給料が上がったり、ボーナスが出たり、福利厚生が充実したりするケースも多いのです。

Q)企業の負担は増えますよね。

A)確かに、企業にとっては、人件費のコストは増えます。でも今、人手不足で倒産したり、業績が悪化したりする企業もでてきています。そうならないよう、各社、人を引きとめるのに躍起になっている状況です。

Q)人手不足で待遇がよくなっていると言っても、一時的なものではないのですか?

A)景気に多少左右される面はあると思います。ただ、この人手不足。長い目で見ると、一時的なものではなさそうなのです。
というのも、こちらをご覧ください。年齢層ごとの、人口の推移です。

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このように、主な働き手となる、15歳から64歳の人口。去年、32年ぶりに8000万人を割りました。つまり、団塊世代が65歳に達して、次々と退職しているのです。働き盛りの人口は、今後、さらに減る見通しです。こうしたことから、そう簡単には人手不足は解消されない。むしろ、これから、本格的な人手不足時代に入っていくという見方もでています。
そして、私は、この人手不足が、私たちの働き方を変える、大きな転換点になる可能性があるとみています。

Q)どういうことですか?

A)ここ10数年。デフレが続いてきた間。世の中では、少しでも人を安く雇って、長時間働かせる。そして、少しでも安いモノやサービスを提供する。そのようなビジネスモデルがもてはやされてきました。
安い賃金がいやだ、きつい仕事がいやだというのなら、どうぞ、やめてください。代わりの人はいくらでもいますから、と。企業の側の方が強い立場で、酷使されてきた人も多くいました。
その究極が、いわゆる、ブラック企業と呼ばれるような、企業だったわけです。

ですが、人手不足になってくると、そのように、人を使い捨てにするような企業には、人は集まりません。もっと待遇のよい仕事を見つけて移ってしまいますし、新たに雇うこともできない。経営がなりたたなくなります。そのような意味で、働く側の立場が強くなりつつあると言っていいと思います。

Q)企業は、賃金を上げればいいのですか?

A)賃金を上げることもひとつです。が、それだけでなく、「働きやすさ」「働きがい」というのも、人を集める際の、大事なポイントです。例えば、
▼ 短時間の勤務とか、自分の住んでいる地域で働ける正社員の制度を充実させることで、今、働きたくても、フルタイム勤務や転勤は無理・・・ということで働いていない、女性や高齢者が働いてみようか・・ということにつながるかもしれません。
▼ また、これまで即戦力ばかり募集していたのを、これからは、経験がなくて、すぐには戦力にはならないという人にも、採用の枠を広げる。そして、長い目で見て、社内の教育や研修で育てていく。そうすると、これまで非正規の仕事を転々として、よい仕事に就けなかった人も、貴重な戦力につながる可能性がでてきます。

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Q)技術が身に着くのなら、やりがいにつながりますね。

A)今、人手不足を解消するために、ロボットやITを利用するとか、外国人の働き手を増やしたらいい、という意見もありますが、そう簡単ではありません。その前に、まず、これまで、人を「コスト」として、使い捨てにしてきた経営をやめて、限られた人を「貴重な人材」として、育てて大事にしていく。そういう経営に転換することが、今、企業に一番求められていることではないでしょうか。それができない企業は、生き残ることができない。そういう新たな時代に入ってきているように思います。