アルバイト・パート正社員になりたくない、労働市場のニーズの変化 衣料大手のストライプ、全員正規採用を廃止に
カジュアル衣料品店「アースミュージック&エコロジー」を運営するストライプ・インターナショナル(旧クロスカンパニー)は創業以来約20年続いた「全員正社員採用」を中止し、パート・アルバイトの採用を始めた。地域や職種を限定せずに働いてもらう代わりに安定した会社人生を保証する「日本型正規雇用」を求めない学生が増え、拡大路線を続けるハードルになっていたためだ。地域限定正社員の採用など労働契約の更なる多様化にも取り組んでいる。
「誰もが安定した終身雇用を望んでいる。そんな価値観が幻想だとようやく分かった」。ストライプ・インターナショナルの神田充教CHO(最高人事責任者)はこう語る。昨年度、創業から約20年間続いた「全員正社員採用」をやめた。
最初に異変を感じ取ったのは、新サービスの研究のため若者とのミーティングをライフワークにしていた石川康晴社長だった。「正社員は責任が重すぎる」「インターネットに情報が溢れすぎていて、どこが本当に良い会社なのか判断がつかない。お試し採用の期間がある会社を受けたい」。就職を控えた学生からこんな声を聞くようになった。
気付けばはっきりと数字にも表れるようになっていた。年間約100店の出店という拡大路線を採るストライプにとって、人員確保は至上命題。しかし、年700~800人の新規採用枠を設けても8~9割しか人手が集まらない。「優秀な人が集まらないというような贅沢な悩みではない。単純に人が来なくなった。」。神田CHOは振り返る。
店舗は慢性的に人手不足になり、必要人員の8割で切り盛りせざるを得なくなった。売上高も利益も順調に伸びたが、現場の不満は限界に達していた。2014年末に実施した社員満足度調査で人手不足を訴える声が最多数に上ったことが最後の決め手となり、ストライプは学生や主婦らのアルバイト・パートの採用を始めた。
社内からは「全員正社員という理念に共感したから入社したのに」と悔やむ声も多かった。正社員に比べパート・アルバイトは接客スキルが劣り、生産性も低い傾向にあることも気になった。

しかし1年後に店舗の人員充足率が100%に回復、正社員の離職率は半減した。優秀な学生バイトを正社員として新卒採用するという循環も生まれた。現在、労働力の28%をパート・アルバイトが占める。「正社員の生産性が上がったので、パート・アルバイトが増えても店員1人当たりの生産性は制度変更前と変わらなかった。店舗拡大を続ける足場が固まった」。神田CHOは手応えを感じている。
地域限定正社員も開始
ストライプの労働契約を巡る見直しは今年度に入っても続いている。夏には転勤のない地域限定社員の採用を開始。地元で働きたいという若者のニーズが高まっているためだという。地域限定社員から正社員への切り替えも可能だが、地域限定のままでも全国10ブロックを統括するブロックマネージャーまでキャリアアップすることもできる。総合職の課長クラスにあたる役職だ。
一方、2011年に開始した短時間正社員制度は新規採用を取りやめた。現在、勤務が1日4~6時間の時短社員は全体の15%に達している。「店舗を通常どおり回すために許容できるのは25%まで」(神田CHO)といい、既存の正社員が今後時短に移行する際に備え、残り10%の枠を確保しておく狙いだ。新規の時短採用の希望者には、一端パート社員として勤務してもらい、子育てが一段落するなどフルタイム勤務ができる状況になったら正社員に登用する。
総合職以外の社員のスキルアップも今後の課題になる。地域限定社員や短時間正社員が増えれば、接客スキルが落ちる可能性がある。働き方の選択肢が増えても業績向上につながらなければ、改革は成功とはいえない。
作業スピード25%向上目指す
そのため、スキルチェックと売上達成率で評価する評価手法を全社員で統一。各店舗では納品チェックなど接客以外の各作業をストップウォッチで計測し、作業時間を毎年4分の1短縮することを目指す「クォーターカットプロジェクト」を続けている。
日経ビジネス10月17日号の特集記事では、日本型の正規雇用の限界が来ていることを働き手不足や長時間労働に関するデータで示した。労働力が絶対的に必要な接客業で、しかも拡大路線をひた走るストライプにはその弊害が如実に出たと言える。しかし、この変革の波は今後広がっていくことは間違いない。
各企業と政府の労働改革は、正社員の枠組みを見直して労働市場を流動化する方向に進んでいる。改革が進めば、会社は「社員を選ぶ存在」から「社員に選ばれる存在」となる。働き手のニーズに柔軟に変化する姿勢が企業の生き残りの最低条件になっていく。