アルバイト・パート「従業員の時給1250円」コストコ賃金は世界標準
勤め人として自分の給料が他人と比べて高いか低いか、気にならない人はいないでしょう。上場企業の年収ランキングなどのニュースをよく目にしますが、日本全体の賃金相場は実際どれほどなのでしょうか。賃金コンサルタントの神田靖美さんが、賃金・給料に関する話題を取り上げながら、給料の実態を解説していきます。
全国一律の時給を導入したコストコ
勤め人にとって給料といえば、「月給」と考える人が多いでしょう。しかし、その考え方を覆す企業の取り組みもあります。
会員制大型量販店のコストコは世間相場よりも高い時給を従業員に全国一律で導入して話題になっています。ホームページを見ると、パートタイムの項目に「アシスタント」という呼称で時給1250円で募集されています。「1000時間ごとに64〜82円の幅で昇給し最高1800円まで昇給」するとの注記もあります。
一般的に、パートの時給は法定最低賃金とほぼ同額からスタートするケースが多いでしょう。最低賃金は、現在714円(宮崎、沖縄県)〜932円(東京都)です。コストコの賃金はパートとしては破格といえます。労働経済学の世界では、「賃金はその人が転職した場合に得られる額よりも高く払うのが効率的(払った以上の成果が返ってくる)」という“効率性賃金”の考え方が基本です。コストコはまさにこれを実践しています。
同社は、正社員でも管理職以外は「時給制」で、アシスタントという呼称と時給、さらには福利厚生制度までパートタイムと同じです。日本でも議論が起こり始めている「同一労働同一賃金」に取り組んでいるのです。「正社員が時給」では、体裁が悪いと感じる人もいるでしょう。コストコは米国に本社を置く会社です。残業手当を支給される立場の社員が時給制であるのは、欧米では常識なのです。

日本企業の正社員も本質は「時給制」
米国企業には、社員に世間相場の賃金を払うことが公正であるという考え方があります。同社があえて正社員を時給としている理由は、社外から見ても賃金をガラス張りにして、社員に世間相場並みを払っていることを表明する狙いがあるはずです。
同社の時給1250円で日本企業の平均的な所定労働時間である1カ月164時間働くと、月給は20万5000円。大卒初任給の全国平均とほぼ同額です。同社の正社員応募資格は高卒以上なので、高校新卒者でも大卒初任給並みの月給を得られるのです。
日本でも一般社員は、本質的には「時給制」です。残業や欠勤時間があると月給を月平均所定労働時間で割り、1時間単位で賃金を加減算するからです。ただ、これでは単純な時給制に比べて事務作業が煩雑です。企業側では、「残業手当は基本給に含む」「残業手当は賞与で払う」といった考えにつながりやすくなります。

日本企業の労働条件は実に不透明です。求人には「土日祝日休み、勤務時間○時〜△時、残業手当あり、年次有給休暇あり」などと書かれていますが、実際のところは入社してみるまでわからないケースも多々あります。世間からは企業内の労働条件の実態が見えにくいのです。
労働条件をガラス張りにして、求職者が応募するかしないか迷う手間を省いて人材獲得を有利に進めるのがコストコの戦略なのでしょう。同社のホームページには「有給休暇100%消化を奨励」「残業代は必ずきちんとお支払い」と明記されています。これはある種の「踏み絵」で、ライバル企業には憂鬱なことかもしれません。
日本で重視されるのは年齢と役職
日本では、会社ごとの労働条件を比べにくく、賃金の相場意識が希薄です。希望年収を落とせば、どこかの会社に所属できる利点もありますが、「気づいたら相場よりも低い賃金で働いていた」ということになりかねません。
世界のほとんどの国では、職種ごとに賃金相場が形成され、企業はそれを重視して社員の賃金を決めます。日本でも厚生労働省「賃金構造基本統計調査」が職種別の賃金を集計しています。ただ、同調査を参考に賃金を決める会社はほとんどありません。
賃金を決める際、日本では、最も重視されるのは「年齢」と「役職」です。次回は、年齢と役職で賃金がどのように決められていくのかを探ります。