総合採用時に幹部候補選抜 JT「キャリア制度」復活のわけ
海外企業のM&A(合併・買収)によって成長してきた日本たばこ産業(JT)。国内事業専門の日本専売公社だったJTはどのようにしてグローバル人材を養成しているのか。M&A担当の新貝康司副社長に聞いた。
――海外企業の相次ぐ買収で、外国籍の社員が急増していますが、どのように人材を育成していますか。
「まず、最初に私の前提として、育成というのはできないと思っているんですが、場を提供することはできると思っています。あとはそれをモノにするかは本人次第。それにつきると思っています。JTは米欧のたばこ会社を買収して、海外たばこ事業を拡大してきました。ですから海外たばこ事業を統括するスイス・ジュネーブのJTインターナショナル(JTI)も、もともと米RJRナビスコの海外事業拠点であり、日本企業ではありません。日本のような新卒一括採用ではなく、必要なときに必要な人財(注:JTでは「人材」を「人財」と呼ぶ)、能力の高い経験者を採用してきました」
JT副社長 新貝康司氏
「2006年に私がジェネーブのJTIに赴任して、これは違うのではないかと考えました。有能な経験者であっても、JTの価値観と違う方向性で仕事をしたら、会社はダメになってしまう。そこで共通の価値観を持ち、仕事もできる人財を養成していこうと考えました。例えば、下位職の人でも、潜在能力があれば、上司から推薦してもらう。JTには欧州やアジアなど6つの地域がありますが、2年間、8カ月ずつ3地域で仕事をしてもらい、成果を上げれば登用するというやり方です。育成の場を提供するわけです。多様性の中で仕事をし、スキルを身につけてもらいます」
――JTからも海外に派遣し、グローバル人材に養成しているのですか。
「JTからは総勢200人弱が海外に行っています。ジュネーブのみならず、海外の生産・販売拠点にも赴任していますが、5分の2は即戦力として仕事に従事しています。しかし、この即戦力の人間はJT本社からの押し付けではなく、ちゃんとJTIの入社試験を受けて、向こうのお眼鏡にかなった人が行きます。JT出身の日本人だからといって特別扱いはしません。残りの5分の3は研修生などトレーニーです。ですから2年分の人件費や滞在費はJT側が持ち、試練の場を与えて鍛え上げます。トレーニーが120人だとすると、10年やると、600人になるわけです」
――幹部候補生のグローバル人材教育もやっているのですか。
「JTとJTIから30歳前後の幹部候補生を選抜して集合研修もやっています。JTから10人、JTIから15人。JTIの人財は国際色豊かで多様ですから、日本人には非常にいい経験になります。スイスのビジネススクール『IMD(経営開発国際研究所)』などの協力も得てプログラムを作成し、効果的な研修をやったりもします。ミドルマネジメントクラスの幹部人財のグローバル研修も強化しています。仕事はできるけど、国内でしか経験のないミドルマネジメントには、1年間仕事しなくて英語漬けになって様々な体験をしてこい、というようなこともやりました」
――経営幹部層の育成はどうしていますか。
「JTでは社長と副社長の2人が中心になって経営人財成長支援会議というのを定期的に開いています。各役員には誰を後継者にしたいか推薦してもらい、さらにその次の後継者も推してもらいます。また、あなたの後継者ではないが、会社にとって役員になったらいいんじゃないかという人の名前も挙げてもらいます。そうすると結構みんなの意見は合うんですよ、同じ人に白羽の矢がたったりしますね」
――JTは2013年、採用時から幹部への昇進が約束される国家公務員の「キャリア制度」のような人事採用システムを復活させました。この狙いは何ですか。
「私も当時の専売公社に上級職として採用されました。キャリア制度には良い面と悪い面があると思います。入社して4年で90人の部下を持つ製造現場に配属になりましたが、色々課題のある職場で正直大変な苦労をしました。つらい日々でしたが、20歳代から常に意思決定し、リーダーシップを発揮するため決断力が養われる。この経験が今に生きています」
「一方でキャリア制度の悪いところはエスカレーター式だということ。役所でもそうですが、なぜあの人が課長になるのかなんていわれる。とんでもない人が偉くなったらみんなのモチベーションが下がります。ですからJTでは常にキャリア採用者を評価し、2回の入れ替え戦をやります。そもそも新卒のキャリアも慎重に選びます。ペーパー試験と面接をやりますが、社外の第3者の評価も受け、選抜しています」
「若手幹部の登用を重視しています。2年前には、39歳という史上最年少役員が誕生しました。彼は37歳で経営企画部長になり、私とは2003年から一緒に仕事をし、今はビジネスディベロップメント担当役員をやっています。M&A担当の仕事を20年余りやってきましたが、やっと後継者が見つかったと思っています」

