実は「安定、勝ち組」だった派遣社員という働き方

派遣実は「安定、勝ち組」だった派遣社員という働き方

「派遣社員」として働くということに、どのようなイメージをお持ちだろうか?

「正社員にならないと人生終わり」「派遣の立場は弱くてかわいそう」などのネガティブなイメージがあるなら、ぜひ本書でその誤解を解いていただきたい。

本書『やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい!』(大崎玄長著)は、派遣会社を経営している著者が、働きかたに悩んでいる人に向けて「派遣社員」として働くことを通して悩みを解決する突破口を伝えている。なぜ今派遣を選ぶのか、なぜ派遣だと働くことに関する悩みが解決されるのか、派遣のメリットとは何なのか、これから派遣で働くことの可能性を理解することができる。正社員と変わらない社会保険や福利厚生が受けられる、日本の企業全体の80%以上が派遣会社を活用している、など派遣で働く実情を知らない人には新鮮な内容である。加えて、派遣のしくみ、キャリアアップのコツなど派遣で働くことを検討する時に役立つ情報が豊富に紹介されている。

派遣社員は決して不安定な働きかたではない。これからは派遣社員で働くことが、ワークライフバランスを保てたり、理想とする仕事に出合えたり、未経験でも希望する業界に挑戦できるチャンスにつながる。「派遣」や「非正規」という言葉の先入観にとらわれずに、自分の都合や希望に合わせて働くことができる新しい働きかたを、今一度正しく見つめなおしてはいかがだろうか。 (山下 あすみ)

著者情報

大崎 玄長(おおさき もとなが)
株式会社エヌエフエー代表取締役。1973年大阪府生まれ。中央大学卒業後、大手経営コンサルティング会社勤務、独立コンサルタントを経て、2006年東京都大田区にて地域密着型派遣会社 株式会社エヌエフエーを設立。設立以来、400社を超える取引企業と累計1万人を超える応募者や派遣社員のサポートに従事する中、派遣の魅力と無限の可能性に気づき、派遣社員こそ安定した働きかたでこれからの勝ち組であることを確信する。近年は「失業ゼロ社会の実現」を目指して「地元のお仕事紹介サイト『ハロ!わくおさん』を運営しつつ、「雇用不安なき成長社会の実現」を目指した新しい働きかたの仕組み「日本版PEO(Professional Employer Organization習熟人材雇用組織)」の確立に努めている。

評点(5点満点)

本書の要点

・派遣で働くメリットのひとつは、仕事内容を自分で決めることができることである。複数の業界で働き自分の仕事上の適性を確認することや、自分の働きたい業界での足がかりを作ることができる。
・2015年には新しい労働者派遣法も施行され、いまでは一部を除いたほとんどの職種で派遣社員として安定して働くことが可能になっている。
・これからは自分のライフステージに合わせて、働きかたを選ぶ時代である。生活手段としての仕事以外に、何か集中してやりたいことがある人にとっては、派遣社員として働く選択肢がある。

要約本文

【必読ポイント!】
■夢をかなえられる「派遣」という働きかた
◇仕事内容を自分で決められる

派遣で働くことのメリットはいくつかあるが、一番のメリットは会社本位ではなく、仕事本位で働けるという点ではないだろうか。正社員や契約社員で会社に雇用されると、自分がしたい仕事があっても、その希望が通るとは限らない。会社の業務の中で自分の希望しない業務に従事する可能性がある。

派遣ならさまざまな仕事の中から「自分はこんな仕事がしたい」という選択ができる。派遣会社に登録に行った場合、どんな仕事を、どのような条件でしたいのかという希望を出し、派遣会社とこれからのキャリアプランを含めた相談をしながら仕事を選べる点が派遣で働く大きなメリットである。

多くの人が、世間体がいい会社に就職するということを重視して、「自分が取り組みたい仕事を選ぶ」ことを疎かにしている。その結果、短期間で就職した会社をやめる人もいる。また、入社する時点で自分がどんな仕事をしたいのか、どんな仕事に向いているのかわからない人もたくさんいる。

派遣の場合、まず自分で仕事を選んでその仕事についてみて、合わないと思えばそこから、いつでも軌道修正ができる。さまざまな仕事を紹介してもらえ、自分の知らなかった仕事に出合えることもある。また、複数の会社を経験したからこそ、自分にはどんな環境でどんな仕事が向いているのかを見極めることもでき、いわゆる天職に出合える可能性も増える。

◇「働きかた」を自分で決められる

派遣の仕事は、多くは2ヵ月あるいは3ヵ月単位の契約になる。契約期間を終了しても、派遣先企業と派遣社員の双方の合意があれば契約を更新して仕事を続けていける。こうした派遣のスタイルを活用して独自のライフスタイルを築いていくことが可能となる。海外で数ヵ月間生活したい人、勉強に専念したい人、叶えたい夢がある人など、生活手段としての仕事以外に、何か集中してやりたいことがある人にとっては、自分のやりたいことを中心にスケジュールを立てることができるので、好都合な働き方といえる。

一方、日本の会社はこれまで終身雇用、年功序列をもとにしていたため、ライフステージに応じて、仕事をペースダウンすることや、ブランクを作ることは、会社からの評価を下げる原因になっていた。最近はワークライフバランスを重視する風潮があるものの、まだ完全に定着していない。会社の仕組みを根底から作り変えるのは難しく、介護や育児のサポート制度ができても、十分に機能していない状況もある。派遣はこうしたライフイベントにも対応した、柔軟な働きかたができ、例え短時間しか働けなくても、キャリアを継続することができる。

◇未経験でも「自分が働きたい業界」で働く

自分が希望する業界で働きたいと考えたとき、たいてい壁になるのは「未経験である」ということだ。中途採用において、経験やスキルを持たず未経験で入社するのは難しい。しかし、派遣の仕事ならアシスタント業務であれば未経験OKの仕事もあり、未経験でも自分の勤めたい業界で働ける。一度その業界で実務につけば、それは立派な経験となり、将来その業界のプロフェッショナルを目指しキャリアを積んでいくための足がかりになる。

ある調査では、日本企業全体の80%以上が派遣社員を活用したことがあると言われている。あなたの働きたい業界の仕事の有無は派遣会社に直接確認するのが手早く、さまざまな業界の情報をもつ派遣会社との相談は、今後のキャリアプランを立てるのにも役立つだろう。

■実は「安定、勝ち組」の派遣社員
◇あまり知られていない派遣労働のしくみ

派遣の仕事は「労働者派遣法」によって保護されている。派遣の仕事に関わるのは、働く人である「派遣社員」と、その人を派遣する「派遣会社」、そしてその人が実際に仕事をする「派遣先企業」の三者だ。正社員や契約社員は勤務先企業と直接雇用契約を結ぶが、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、働く先は派遣先企業となる。業務の指揮・命令などは派遣先企業から直接派遣社員に下されるが、給与の支払い、福利厚生や教育研修制度の適用などは派遣会社から受けることになる。

法律で定められている派遣の契約期間は1ヵ月~3年で、3年以内であれば派遣社員と派遣先企業双方の合意の上、契約を更新できる。3年を超えても双方が働き続けることを希望した場合、3年経った時点で派遣社員本人と派遣先企業が直接雇用契約を結び正社員や契約社員になるか、あるいは派遣会社の正社員や無期雇用社員になれば、同じ職場・職種で働き続けることもできる。

◇安定的になった派遣の仕事

2015年に新しい派遣法が施行され、派遣社員はより安定的に仕事ができるようになった。

1つ目のポイントは、今までは派遣でできる仕事に制限があったが、現在はほとんどの仕事をできるようになったことだ。それゆえ、どんな人も天職に出合うチャンスがある。港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院における医療関連業務や、弁護士、司法書士等のいわゆる「士」業務は現在も禁じられているが、これらの仕事を除けば派遣社員も、正社員や契約社員も、仕事内容に目立った違いがなくなってきている。職場によってはマネジメントを任されたり責任の重い仕事についたり、派遣社員だからといって仕事のチャンスが狭められているわけでは決してない。

2つ目は、派遣社員が同じ職場に1年以上派遣される見込みがある場合などに、派遣会社に対して派遣先への直接雇用の依頼や新たな就業機会など、「雇用安定措置」と呼ばれる派遣社員の雇用を継続させるための措置を講じるよう求めていることだ。

3つ目は、派遣社員のキャリアアップを図るため、教育訓練やキャリア・コンサルティングを派遣会社に義務付けたことだ。

◇派遣社員も正社員と同じように扱われる

法律で定められ正社員に適用されることは、派遣社員にも同じように適用される。社会保険もしっかり適用され、労災保険についても派遣会社は保険料の全額を負担することが定められている。健康保険と厚生年金については概ね2ヵ月以上の雇用期間など制限があるものの、ある程度まとまった期間継続して仕事をすれば派遣社員にも社会保険のすべてが適用される。

6ヵ月以上継続して勤務し、労働日の8割以上出勤していれば休暇も取れるし、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇ももちろん取得でき、最近はワーキングマザーとして仕事に復帰する人が増えている。クレジットカードの申請やローンの組成も正社員と同様に、一定以上の期間仕事をして、一定以上の収入があることが認められれば問題はなく、派遣社員を理由に断られることはない。

◇正社員がいいとは一概には言えない時代

総務省の統計では、非正規雇用者の8割以上が「自分の都合のいい時間に働きたいから」などのポジティブな理由で、自ら望んで非正規雇用という働きかたを選んでいるという。誰もが同じようにフルタイムで週5日働きたいわけでも、会社本位で働きたいわけでもない。どのような働きかたが良いか、決めるのは働く人それぞれである。

派遣社員は、便利で安定した働きかたである。正社員や派遣社員という言葉だけで画一的なイメージを抱き、自分に合わない仕事を無理に続け、ストレスを溜め込む時代はもう終わったのだ。これからは、人生に何を求めるか、その中で仕事はどうあるべきかを考え、働きかたを選ぶ時代である。

■派遣で成功する方法
◇派遣で働くサイクル

派遣社員として一つの仕事が、契約期間満了で終了するまでにはいくつかの段階がある。

まず、派遣会社の募集広告に対し電話かメールで登録予約を行う。その後、派遣会社に行き、面談や所定手続きを経て派遣社員登録が完了する。仕事の案内は登録の際に派遣会社から仕事の案内をされることもあれば、後日電話やメールで案内されることもある。そして、派遣社員と派遣会社の双方の合意を得てから仕事が決定し、仕事開始となる。

就業中は、派遣先企業の指揮・命令を受けて仕事をするが、何か悩みや疑問があるときは派遣会社に相談できる。契約期間満了がきたら、いったん仕事は終了するが、契約を更新し仕事を継続する場合もあるし、この仕事を終了しても派遣会社から次の仕事を案内されることもある。その場合、仕事の案内からまた同じプロセスを繰り返す。正社員として就職が決まったり、独立・起業したり、目標達成のめどがたったときは、契約期間満了のタイミングで派遣社員は卒業となる。

◇派遣会社の選びかた

派遣会社は資本系と独立系に分かれている。

資本系とは大手の銀行、商社、メーカー等の出資により設立された派遣会社のことで、その出資企業やグループ会社で働きたいと思うなら登録してみるといいだろう。

独立系とはさまざまな業界の仕事を扱っている派遣会社である。独立系の大手派遣会社は仕事の数はとても多いが、派遣社員の数も多いため、マッチングやフォローが画一的になりがちである。一方、独立系中小の派遣会社は仕事の数は多くないが、特定の領域の仕事が豊富な場合がある。またマッチングやフォローがきめ細かなので、親身に世話を焼いてもらうのが性に合っている人に適している。

◇高評価、キャリアアップをする方法

「特Aランク」、「Sランク」が派遣社員としては最高ランクの評価である。このランクづけはワードやエクセル、英語の翻訳などのスキルの高さに加え、「職場を明るくできる人」といった人間性なども加味して、総合的に評価される。特別な技能がなくても、「笑顔の対応ができる」や、「電話の対応で相手を安心させる」などの要素を持っていると、派遣先企業の満足度も高い結果となる。

派遣の仕事では、最初は誰でも、頼まれた仕事を機械的にこなすことが中心となる。キャリアアップをしていくためには、「主体的」になり、できることを増やして職域を広げて、メンバーをまとめたり、リードしたりするような役割まで担うことが有効だろう。オンタイムだけでなく、オフタイムも有効活用して、派遣会社の研修等を利用してスキルアップを怠らないようにすることが重要である。キャリアアップを実現し、職場で頼られる存在になると、やりがいの大きい仕事も任せられるようになる。

一読のすすめ

著者は派遣社員を「非正規雇用」という分類に入れるのは間違いだと主張する。自分に適した仕事を見つけ、ワークライフバランスを保ち、自分の都合にあったペースで仕事をできるのは、良いことに違いなく、「非正規雇用」という分類は無用な先入観を生んでいる可能性がある。本書で派遣社員の働きかたについて、理解を深めてほしい。