中途転職より有望?「顧問」という新しいキャリア 転職の年齢制限に引っかかる人への処方箋
転職市場では35歳限界説というものがあります。男性・女性問わず転職に成功している人の大半が35歳以下という実態からきているのでしょう。
確かに2010年くらいまで、転職成功者で35歳以上は10%程度。中心となる転職成功者は20代後半~30歳以下でした。ゆえに転職するなら適齢期のうちにするべき……と言われてきたのです。
転職者の平均年齢は31歳に上昇
ただ、状況は徐々に変わってきたようです。転職者の平均年齢が5年間で約2.5歳上がり31歳にまで上昇。経験豊富な即戦力として重宝されるようになってきたようです(転職サイトDODA調べ)。
これまで30代の採用を阻んでいた「能力以上の高い給料」という問題も、年功序列型給与体系の崩壊によって解消されつつあることが後押ししているようです。
さらに、能力主義の広がりによって「年下の上司」が受け入れられつつあることも影響しています。20代の若手管理職が活躍している職場で30代の専門性の高い人材を採用。年上の部下として配属する会社が当たり前のように増えました。もはや、35歳転職限界説は過去のものにも思えます。
では、40歳でも50歳でも転職は可能な時代になったかといえば、そうでもありません。
リクルートホールディングスが発行している25歳以上の男性ビジネスマン向けのフリーマガジン『R25』の調査で、「年齢不問で募集したにもかかわらず、年齢による足切りをしたケースがあるか?」を人事担当者に匿名で調査したところ「ある」と答えたのはなんと3分の2にあたる66人。
その際に「足切りライン」とした年齢を尋ねると、「40歳」がもっとも多く、次いで「35歳」、「50歳」という順。「足切り年齢」の平均は43.4歳とのこと。足切りはしないにせよ、年齢の高さがネックになると考える人事担当者は少なくありません。やはり40歳を超えると転職が難しくなるのは間違いないようです。
それでも、40代以降に職場を変えて仕事をしたい人はたくさんいます。日経HRの調査によると、40代以降に転職を希望する人は、その理由の上位に「現在の職場に対する閉塞感」を挙げています。給与も大事だが、環境を変えて周囲の役に立ちたいと考えて転職を決意するとのことです。ただ、普通に転職活動をすれば「足切り」にあう可能性が大。どうしたらいいのでしょうか?
注目が高まる働き方は?
これまでの経験で活かして、かつ、会社に足切りされないワークスタイルとして注目度が高まっているのが「顧問」として働くこと。取材した大手商社をリタイヤしたDさん(55歳)はIT系ベンチャー企業を中心に顧問契約をしている会社が5社。
「各社で名刺を作ってくれるので名刺入れがパンパンになって大変です」
これまでなら1社の名刺だけだったのに、複数の名刺を持つのが本音ではうれしいようです。大変と言いながら、5枚の名刺を得意げに見せてくれました。
顧問先への訪問は週1回程度。各社からの顧問料で前職時代の給与の3分の2程度を確保。すでに子どもは大学を卒業。退職金もあるので、生活するには十分すぎる金額とのことです。
さらに1週間の勤務時間は前職の半分以下。Dさんの前職での最終経歴は子会社の役員でした。いつも会議でスケジュールを埋められていたことがストレスだったので爽快感が半端ないとのこと。では、顧問として期待される役割はというと、前職時代に培った人脈を活かしての紹介活動だそうです。
「大手企業の部長クラス、役員クラスに対して、会いたくても会えないと諦めていたベンチャー企業としてはありがたい存在です」
と語ってくれたのは顧問先のひとつのS社長(28歳)。学生時代に会社を立ち上げて年商20億円まで成長させましたが、取引先の大半はベンチャー企業。大企業の決済者へのルートなどがないうえに、
《大企業独特の決済ルールや、仕事をするためのビジネス的なマナーなどを教えてもらえる》
ことが大きな価値になっているとのこと。たとえば、大企業は取引が始まるまで社内の関係部署と関係を構築する必要があります。そのためにあいさつに伺い、信頼を得るために何回も会社紹介をしたり取引業者としての登録手続きをするなど、面倒なプロセスがあります。思わず「面倒くさいからやめようか」と叫びそうな若い社長に、
「初めは手間がかかるけど、取引が始まれば長く、大きな仕事になる可能性があるから我慢してがんばりなさい」
と親身な指導ができる存在は、ベンチャー企業の社内にはまずいません。ちなみにS社長の会社には紹介活動を依頼している顧問が、5名は常時存在しています。
顧問の人材紹介会社も多く登場
こうした人材の紹介に関して、最近はリクルートやインテリジェンスのような人材紹介系の大手企業だけでなく、サーキュレーション社といった独立系の会社も数多く登場。サーキュレーション社では3000人以上の顧問候補が登録されて100社以上の会社と顧問として契約がされているとのこと。顧問紹介が増えて、ビジネスとしても成長が著しいようです。
ちなみに、S社ではDさんの人脈を活かして新たな取引を大企業と開始することができましたが、顧問としての契約はどうなっているのでしょうか?
平均すると契約期間は1社あたり半年から1年、顧問料は月額固定で月に10~20万。短くも思えますが、終了するのはお互いの満足度が低かったせいとは限らないようです。会社が顧問に求めることがスポット的な場合があるからです。
たとえば特定の会社に対する取引の新規開拓のために数カ月の顧問契約をお願いしたい……という要望。まさにプロジェクト的な業務に対する顧問の活用です。いずれにしても、昔からある大企業の顧問とは仕事の仕方がかなり違うようです。
歴史の長い大企業の「顧問」は、会社のご意見版的な存在として長く関わることが大半。さらに言えば、社内で社長とか会長として君臨した人が、後継者に対するお目付け役のような形で関わったりします。
ところが、この記事で取り上げている顧問は、長く勤めた会社での人脈を別の会社の成長につなげることが期待される存在(先ほど書いたように、人生の先輩としてアドバイザーになることはあります)。
ゆえに、たとえば50代前半など、比較的若くして顧問になったほうが、顧問先にとっても、自分にとっても成果が出やすいでしょう。
冒頭に登場したDさんのような働き方が増えると、顧問として働くために人脈作りを意識する人が増えるかもしれません。こうした動きは、ミドルからシニア層に差しかかかる方々にとっても注目してほしいものです。転職ではなく顧問を目指す……そんな次のキャリアがあってもいいのはないでしょうか。