転職がうまくいかない背景にある「業界事情」 「ハイタッチ」なサービスはどこへ行った?

中途転職がうまくいかない背景にある「業界事情」 「ハイタッチ」なサービスはどこへ行った?

提供したサービスに対する顧客の満足度を測るのは簡単ではありません。ただ、広く認知され、大きな影響力をもつ指標はいくつかあります。

たとえば、飲食店を利用者が勝手評価する「食べログ」。当方も仕事で予約する飲食店選びで、食べログの点数を参考にすることがあります。5点満点で3.5点以上の店を探したり、あるいはグルメな取引先なので4.0点以上に限ってみたり。得点を高めに設定すると、予約に苦労してしまうことが多いのですが。

こうした、満足度の指標化を日本で幅広く行っている会社がオリコンです。「オリコン日本顧客満足度ランキング」として、ウォーターサーバーや子ども英会話、メンズエステと、ここ以外では評価がされていないと思われる分野の満足度調査を、多数、行っています。その調査結果はOricon CS Reportとして、

・ユーザー(消費者)の選択機会
・会社の商品開発やサービス機会

で役立つことを目指しているとのこと。その一環としてAwardを創設して、各テーマの総合1位に選出されたサービス(商品)を表彰。社会における顧客満足度の認知拡大と価値向上も図っています。

実は、なんと「人材紹介」も評価対象に入っています。過去4年以内に転職・人材紹介会社に登録をし、紹介された企業から内定をもらったことがある人に調査を行い、1位に選ばれたのが株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメント社です。同社は「紹介情報の量」「決定スピード」「会社の信頼性」など全項目で1位を獲得。2位はパソナキャリア(PASONA CAREER)、3位はインテリジェンス(DODA)と続いています。

こうした満足度ランキングのテーマにも取り上げられるくらい、多く人にとって気になるサービスになりつつある人材紹介ですが、満足の反対である不満について「求職者」「求人会社」の双方から耳にすることも増えています。典型的な不満は

・求職者の不満⇒希望していない職種や会社を勧められた
・求人会社の不満⇒的外れな人材を紹介してくる

と双方とも「マッチング」に関するものです。では、どうしてマッチングに関する不満が増えているのでしょうか。

そもそも、人材紹介とは、厚生労働大臣の許可を受けて職業を紹介する、民間の職業紹介業のことを指します。企業から「求人」の依頼を受ける一方、転職を希望する人材から「登録」を受けて、それらをマッチングする仕組み。仲介の価値を手数料として収益を稼ぐビジネスモデルです。

ちなみに人材紹介市場は、2010年度以降、継続的に成長しています。その理由は企業の業績回復による求人ニーズの上昇に加えて、採用環境の変化にあると言われています。

2000年代初頭までの人材採用は、求人会社がメディアに掲載して応募を「待つ」のが基本でした。公募型と呼ばれ、リクルートを頂点にしたプレーヤー(事業会社)が大きくビジネスを拡大してきました。公募型のメディアの代表が書店の店頭に並んだ求人情報誌。その代表が『DODA(学生援護会)』『B-ing(リクルート)』でした。30代後半以降であれば、その名前に記憶があるのではないでしょうか。

そんな公募型のメディアから、人材紹介の活用へと採用戦略の切り替えが進んだのが2000年代初頭。求人広告をメディアに出稿しても

・応募数は多いが、採用に至らない(採用選考のノウハウが不十分)
・募集としても応募がほとんどない(会社の知名度が低い)

と成果が出ないケースが増加。その典型がエンジニアの採用でした。取材したシステム開発会社は(2000年代初頭に)エンジニア採用で求人情報誌に莫大な予算を出費。1人あたりの採用にかかる「採用単価」が400万円以上にまで上昇したといいます。

ここまで高騰すると、手数料を払っても採用を人材紹介にすべて切り替えたほうが「割安」と感じられるように。以後、公募型のメディアでエンジニア採用をすることはなくなったそうです。

また、面接をドタキャンする応募者も急増。具体的には、不動産業界の営業職採用などで「冷やかし的な応募」が増えていました。そうした応募に苦慮する事態になったのは、ネット型メディアが中心になり、応募者が手軽に転職先にエントリーできる時代になったからでもあります。

そんな不満を解消する手段として、人材紹介を活用する会社が増加しました。当方がリクルート社で人材紹介事業にかかわっていた2004年ごろは、情報誌に対する不満から人材紹介での採用にスイッチするパターンとして

・製薬業界のMR職

・第二新卒全般

・若手営業職

などが急増。事業部の売り上げが倍増したことを覚えています。こうしたトレンドは、現在も続いており、人材紹介市場は、前年度比111.5%の1450億円と成長を続けています(2014年度、矢野経済調べ)。

さて、その成長する人材紹介市場で、「求職者」と「求人企業」がマッチングに関する不満を口にするようになったのはなぜか。それは、人材紹介ビジネスの拡大に伴い、サービスを提供する会社の規模が急拡大し、その結果としてきめ細かいマッチング、すなわち

ハイタッチなサービス

ができなくなってきたからではないでしょうか。ここでいうハイタッチとは、取引先に喜んでもらえる献身的な姿勢のことです。たとえば、人材紹介であれば

・顧客側の「漠然とした」求人ニーズを理解することができる(それだけ会社の課題を十分に知っている)
⇒「うちの会社に合う人」という要望に応えて人材を探せる
・その会社が好む面接作法の指導ができる(それだけ会社の風土を十分に知っている)
⇒面接の場面でよく聞かれる質問と模範解答の指導ができる

こうした姿勢が人材紹介のマッチングを向上させるのは明らかです。ところが、規模が拡大した人材紹介会社はそうしたサービスを排除しています。求人ニーズは社内の検索システム任せ。

転職相談を受けるキャリアアドバイザー(CA)と会社の求人を預かるリクルーティングアドバイザー(RA)は分業化。CAは会社に訪問することはないので、システム上にアップした求人票以上の情報を持たないようになりました。

当然ながらRAが転職希望者と会うこともないので、

「その会社さんにはお勧めの人物だと説明していますが、直接本人と会ったことはないので、本当にそうかは言い切れません」

というのが実態になっています。

業界大手だからといって、きめ細かいサービスができているかというと、そうでもないのです。

ただ、規模が大きくなれば仕組み化を進め、サービスが画一化、標準化するのは常です。別の業界であれば《こだわりの店主がいる1店舗の居酒屋》が多店舗化すると《どの店でも同じ味が楽しめるチェーン居酒屋》に変わるようなことと同じです。

もしかしたら、かゆいところに手が届くハイタッチなサービスを求めるなら、大手よりも小規模なブティック型の人材紹介会社を選ぶべきなのかもしれません。ただ、大手も本音ではどう思っているのか。ハイタッチなサービスを永続的にあきらめて、不満の声に対処するつもりはないのか? 今後の取り組みに注目していきたいものです。