総合賃上げ中小にも拡大 14年度47%で実施、人手不足に懸念も
働く人の7割を雇っている中小企業で賃上げの動きが広がってきた。全国8200社の賃上げ動向を集計した民間調査で、2014年度に賃金を上げる企業は47.6%となり、07年度以降で最高となった。基本給を上げるベースアップ(ベア)実施企業も3割を超す。ただ、賃上げ理由は「人材確保」が「業績回復」を大幅に上回っており、人手不足が賃上げを促す構図だ。
来年度の賃金動向について帝国データバンクが1月下旬時点で全国2万2834社を対象に調査。1万700社から回答があった。うち中小企業は約8200社。
中小企業のうち14年度にベアや一時金の引き上げをする企業の割合は13年度の40.0%と比べて7.6ポイント拡大した。リーマン・ショック前の08年度の46.5%を上回り、集計を始めた07年度の調査以来、最高となった。
東京で酒類の販売を手掛ける鈴木酒販は昨年10月、約10年ぶりにベアを実施した。鈴木利英社長は「単価が高い焼酎や日本酒が売れ始めた。粗利も上がってきている」と語る。千葉の介護用品販売業者「シルバーとっぷ」も、4月から創業以来初めてのベアに踏み切る。基本給を3%引き上げる方針だ。
賃上げの理由として人材の確保や定着を理由に挙げる企業が約6割に上り、業績改善を挙げる企業の5割弱を上回る。特に人手不足が深刻な建設業では「求人しても人が集まらず、業績改善の前に賃金を上げざるを得ない」(岡山の建設会社)との声が多い。他業種でも「零細企業では地域の一般的な企業より賃金を高く設定しないと人が集まらない」(静岡の飲食品卸売会社)など、人手不足は深刻だ。
野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストは「中小企業は慢性的に人手不足だが、景気回復も重なり労働需給はさらに逼迫している」と指摘する。従業員30人未満の企業の新規求人数は、13年に619万人と前年比11%増え、比較が可能な1996年以来で過去最高を更新した。「採用が決まらず、何度も求人を出している例が多いようだ」(厚生労働省)という。
中小企業は数では日本の事業所の99%超を占め、経済の付加価値額の5割を生み出す。大企業で進む賃上げの動きと呼応する形で中小企業や非正規社員の賃金底上げが進めば、デフレ脱却は現実味を帯びる。ただ、人手確保のために業績確保より賃上げを先行させれば、将来の経営を圧迫しかねない。業績の改善、賃上げ、人手確保の循環にねじれが生じないかは中小企業経営の当面のカギになりそうだ。