中途外国人労働者、活用どこまで 景気回復で人手不足
深刻な人手不足対策の切り札として、外国人労働者の受け入れを拡大してはどうか。政府内でこんな議論がじわりと浮上してきた。景気回復に伴う労働需給の逼迫が、外国人受け入れを絞ってきた国の政策の土台を揺るがす構図だ。人口減少という重たい構造問題もからむだけに、議論は複雑な展開をたどりそうだ。
「この間も受注を断ってきたばかり」。2月上旬、東京都杉並区の左官工事業者の幹部はこうぼやいた。「リフォームや耐震工事が急増しているのに人が足りない」
政府統計によると、建設関連の現場では求職者1人を数社が奪い合う状況。女性や高齢者の活用に限界がある職場で、人手確保が成長のボトルネックになりつつある。全国各地の人手不足の悲鳴に応える形で、政府が議論を始めたのが、発展途上国の外国人を最長3年間受け入れる「技能実習制度」の拡充だ。
「制度の充実に向けた検討を進める」。2月13日の衆院予算委員会。技能実習制度について安倍晋三首相はこう表明した。6月にまとめる新たな成長戦略の柱の一つにも据える方針という。
建設業は、現在認められている技能実習制度の対象職種の一つで、年約5000人を受け入れている。今回の拡大論議では建設業での受け入れ人数を増やすことが課題になるが、対象職種を広げようとする動きもある。産業競争力会議は、慢性的な人手不足に悩む介護業の追加を提案。政府内では、運輸業を対象に加える案も浮上する。
タクシーやバス、トラックの運転手は高齢化が急速に進んでおり、現在は55歳以上が全体の6割を占める。定年を65歳とすると、この10年で「大量退職」が発生する。外国人の活用で穴埋めし、公共交通や物流に支障が出るリスクを減らす考えだ。
ただ、技能実習制度の見直しは一筋縄ではいかない。日本の外国人受け入れは、高い専門性や技能を重視してきた。単純労働者の入国は基本的に認めておらず、「技能実習制度は日本で働きながら学んだ技能を母国で生かしてもらう制度」(樋口美雄慶大教授)。途上国の支援が本来の趣旨だ。
「即戦力として欲しい」。政府首脳は1月、技能実習制度拡大についてこんな本音を漏らしたが、治安悪化や賃金低下を警戒する法務省や厚生労働省は慎重姿勢を変えていない。厚労省幹部は「タクシーやトラックの運転は日本で学ぶべきものなのか」と指摘する。
少子高齢化に伴う人手不足を懸念する声はかねて根強かったが、デフレ不況が問題を覆い隠してきた面がある。建前と本音の乖離(かいり)が目立つ分、外国人受け入れを巡る政府の判断も曲折がありそうだ。