中途社員全員が人事部になったら採用コストが25%下がった話
今回は人事部長の柴田がカヤックの採用における現状について寄稿します。
面白法人カヤックは、2014年7月7日から全社員を人事部に所属させました。この結果、社員紹介による面接数が2倍に増え、中途採用社員の採用コストが25%削減されています。
ざっくり説明すると、「この3カ月でカヤック社員のfacebook上の知り合いからの応募、もしくは知り合いの知り合いからの応募が増え、採用コストが下がった」ということです。ソーシャルメディアを使ったカヤックの採用活動について「社員のコンテンツ化」という視点から書いてみます。
「ぜんいん人事部化計画」で、全社員が人事部兼任になった
「ぜんいん人事部化計画」とは、カヤックで今年の7月から始まった制度です。全社員が人事部兼任となり、採用のための人員計画が全社員でシェアされるようになりました。また、全社員が「ファストパス(書類選考免除券)」を持ち、一部の社員はいきなり最終面接に招待することができる「ラストパス」を持っています。


この人事異動は、Yahoo!トピックスにも掲載され、予想以上に話題になりました。(ねとらぼさんの記事がきっかけでした。)ちなみにこの企画は人事部案ではなく、「カヤックの採用を強化する方法」を社内合宿で話し合った結果、社員が出したアイデアです。
「会社のコンテンツ化」と「社員のコンテンツ化」
代表の柳澤は「面白法人は会社運営そのものがコンテンツなんだ」と言います。「会社運営がコンテンツ」というのは、あまり一般的なフレーズではありません。私はこの柳澤のセリフを以下のように解釈しています。
一般的に、評価制度などの会社の制度は、社外の第三者にとって面白いものではない。しかし面白法人では、「サイコロを振って給料を決めてしまう」など、会社を運営するための制度そのものが、第三者から面白がってもらえるようになっている。ここが他社と違う特徴である。
同じように「社員のコンテンツ化」という言葉も社内にあります。
一般的には、ある会社で働く社員の情報は、第三者にとって面白いものではない。が、それを面白がってもらえるようにする、という意味になります。代表的な例は、カヤックのコーポレートサイトに全社員が掲載されていることです。(もちろん、掲載拒否することもできます)
いままでは「会社のコンテンツ化」を方針として、「面白い採用手法」で戦ってきた
カヤックの人事部には「採用キャンペーン」という概念があります。就活ではなく卒業制作に集中してきた学生を卒制だけで選考する「卒制採用」、facebookのアカウントさえあれば3秒で書類選考エントリーが終わる「ワンクリック採用」、鹿児島から札幌までオリジナルの「説明会バス」で全国巡業した「旅する会社説明会」。
会社運営の手段である「採用手法」を面白くして、ソーシャルメディア上で話題にする。そうすることで求職者のカヤックへの認知が高まり、採用成功につながる。会社の採用活動を面白くするという「会社のコンテンツ化」を前提とした考え方で、カヤックの人事部はこの方針をとってきました。
採用キャンペーンを駆使することで、人材紹介会社や求人媒体からの採用人数は全体の4割以下となり、6割以上の人材を自前で採用し続けてきました。中途採用コストも同業他社と比べるとかなり低いです。
しかし、問題もありました。採用キャンペーンには、再現性がないのです。採用キャンペーンがネットで話題になるかどうかは、毎回わかりません。話題になっても、ひとりも採用できないケースもあります。(採用できなかった例:正月に寿司をおごる「寿司面接」、他薦で変人だけを面接する「変人採用」)
もしかしたら他社の採用は、カヤックよりも「面白くない」かもしれません。しかし再現性があります。どの手法を使えば、何人採用できるという「予想」ができる。カヤックの企業規模が大きくなるにつれて、「今年は採用できたけど、来年はどうなるかわかりませーん。でも何か面白いこと考えて頑張りまーす」という採用活動は許されなくなってきました。
いや、ここは正確に書いた方がいいですね。「再現性のなさ」について役員から注意されたりしたことは一度もなく、「毎年面白ことやってくれ」としか指示はありません。私が個人的に「毎年ゼロから採用手法を考えるって、おかしいだろ!もうちょっとこう、安定的に採用できる方法はないのか?」と考えただけです。
面白くない採用活動がカヤックで許されるわけがないことはわかっていたので、「面白い」かつ「再現性のある」採用手法を探すことが、次の課題となっていました。
「1社だけの合同説明会」に「面白くて再現性のある採用」のヒントがあった
今年の1月に開催した新卒採用企画「1社だけの合同説明会」。
企業合同説明会の形式をとり、広い会場に20個のブースを用意。各ブースにはカヤック社員を配置しています。円周率のギネス記録保持者だった社員がいる「ギネス記録ブース」、アイデアの出し方を話す「アイデアブース」、その場で内定を出す「最終面接ブース」、カヤック退職者が登場する「退職者ブース」など。
この「1社合説」には、いままでの採用キャンペーンと大きく異なる点がありました。それは、開催後すぐに「来年もやろう!」と決定したこと。毎年新しい採用企画を考えていたカヤック人事部ですが、この企画は毎年継続開催しても、求職者の皆さんに面白がってもらえそうだという判断になりました。
「毎年やっても面白がってもらえる」ことが担保されれば、告知方法や最終面接ブースのオペレーションの改善など様々なPDCAを回し、「この1社合説で何人集客すれば、何人採用できる」という予想がだんだんと立てやすくなってきます。これは大きな進歩でした。
この1社合説、何が違うのか、もう少し考えてみます。
まず、社員が100人以上参加している。いままでの採用企画は、人事部が運営していました。今回は企画の特性上、多くの社員に参加してもらう必要があります。そして、普段採用活動に参加しない社員の話は、とても面白かったのです。
来年、社員が入れ替われば、同じスタイルでもまた違った「面白さ」が出てくる。もしくは、1年後には同じ社員でもまた違うネタを話すことができる。これが継続開催の大きな理由です。
もうひとつ違いがあります。「1社合説」をfacebookやtwitterで紹介してくれたカヤック社員の割合が、いままでの採用企画と比較してダントツに多かったのです。これは単に、自分が参加する企画だったからSNSで周囲の人たちに紹介しやすかった、というだけかもしれません。
カヤックでは、強制的に社員に対して「これをツイートしてください!」「facebookでシェアしてください!」というお願いはしません。社員が本当に「これは面白い」と思ったら、シェアしてくれるのです。社員が面白がってくれなければ、ネット上で話題になるわけがない、という考え方です。結果として、「1社合説」は新卒採用企画でありつつも、社員の知り合いである社会人の方も数多く参加してくれました。中途採用企画としても成功したのです。
まとめると、「社員の面白さ」を紹介するような採用手法であれば、社員を変えれば何度も使える。かつ「自分が出演する企画」であれば、社員はSNSでシェアしやすい、ということです。
ただ、年に1回の「1社合説」のみが、「面白くて再現性のある採用企画」になっても問題は解決しません。年間を通して何か他の採用方法を考える必要がありました。
これからは「ひとり説明会」を採用の武器に
そこで考えたのが「ひとり説明会」です。
形式は一般的な会社説明会と同じ。ただし、登壇する社員が1人で、自由に話します。特徴は「1社合説」と同じです。
- 社員の面白さを伝えることが目的。手法としては一般的な説明会と同じ
- 集客はその社員がSNSでつながっている方々を中心とする
の2つ。
- 【第1回】カヤック長谷川哲士のひとり説明会「コピーライターが炎上体験を告白」
- 【第2回】カヤック佐藤ねじのひとり説明会「ブルーパドルの見つけ方とは」
- 【第3回】カヤック退職2日前 衣袋宏輝のひとり説明会
全社員200人が、自分の手がけた仕事の報告会として、年に1回「ひとり説明会」を行う。そして、年始には社員みんなで、お祭りのような形で「1社だけの合同説明会」を開催する。各社員経由で年間1人は採用できるようになっていれば、毎年人数を倍にすることが可能になる。これは、「面白さ」と「再現性」を兼ね備えた手法なのではないか、と個人的には考えています。
すごい社員じゃないと、「ひとり説明会」はできない、は間違っている
この「ひとり説明会」。現状は、SNSの告知がメインですが、毎回40人程度集客ができています。毎回40人も集める必要はなく、もっとニッチなテーマで3人だけで楽しくやる、などのバリエーションもあってもいいのではないかな、と個人的には考えています。
SNSで告知して、「ひとり説明会」を開催したら参加者が3人だった。だから普通の説明会は中止して、登壇者含めて4人で飲みに行って、そこで会社の話をした。これは既に、知り合いと飲みに行っているのか、説明会なのかわかりませんが、「ひとり説明会」のOKラインをここまで広げれば、全社員が実行できるはずです。
「社員の面白さ」にはバリエーションがありますから、40人が聞きたい面白さもあれば、3人だけがすごく喜ぶ面白さもある。共通点は、どちらも「仕事を面白がっている」ことぐらいで、別に人数が多ければ偉いわけでもなく、採用できればどんな形でも構いません。
まとめ:「バズ採用」からの脱皮
まとめです。
現在、社員全員が人事部となり、社員の知り合い経由での採用を強化しています。具体的な手法としては、「社員の面白さを伝える」ことを目的とした「ひとり説明会」「1社合説」、そして「ファストパス(書類選考免除券)を全社員に配布」です。既に社員紹介が増え、採用コストは減っています。
従来のカヤックの採用手法である「採用キャンペーン」は話題性があるものの、安定的に採用することはできません。「ひとり説明会」と「採用キャンペーン」の二つの手法を併用することで、安定的に面白く採用することを目指しています。