新卒「秋採用はリベンジのチャンス」は本当?
リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第26回は「秋採用はリベンジのチャンスか」です。
曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
■春は内定者の人物像が偏る
6月に解禁となった採用選考をすでに済ませた企業でも、この夏や秋に改めて選考を実施することがあります。いわゆる「春採用」に対する「秋採用」ですね。「春に受けてダメだったけど、もう一度トライしてみよう」というふうに、秋採用を2度目のチャンスと捉える学生もいると聞きます。挑戦心は買いますが、単に「もう一回」というだけでは、せっかくの努力も無駄に終わるかもしれません。春と秋では求める人材のタイプがまったく違うケースが少なくないからです。
今年は大手の選考解禁が6月で、去年は8月でしたから、「春採用」というと違和感がありますが、かつて4月に選考を始めるのが一般的だったころの名残ですので、ここでも春、秋と呼ぶことにします。その春と秋の採用はどう違うのか。春は「50名」「100名」と採用サイトに明示していた企業が、秋には「若干名」などと載せているケースをよく見ますが、単に間口の広さが違うだけではありません。
どの企業でも、春採用の目的は「人数」が第一です。年度の採用計画を満たせなければ困りますから、ともかく内定者を集めることを優先します。限られた期間に選考するとなると、何本もの物差しをさまざまな角度から学生に当てて人物像を測る余裕はなく、どうしても似たようなタイプの人材を採用しがちです。特に採用活動が短期化した今年は、その傾向が顕著だったと思います。
■秋の「若干名」でバランスを調整
一方で、人材の多様性を重視するダイバーシティーの考え方もあり、社内では多彩な人材が求められるようになっています。春のワンパターン採用による人材ポートフォリオの偏りを、少しでも是正するためにどうするか。そこで春には採れなかったタイプの学生を「若干名」集めて、人材のバランスを調整するのが秋採用というわけです。
多くの企業が秋に欲しがる典型的なタイプは、春採用に間に合わなかった留学組や、司法試験の不合格組です。「夏までは体育会のシーズンなので、そっちに全力投球していました」なんて学生も含まれるかもしれません。いずれにしても、「新卒での就職をめざし、まずは春採用に向けて就活」という一般的な学生生活を、どこかで踏み外している。つまりは付和雷同しない、とんがった異質の人材です。「異質とはまさに自分のこと」という学生が応募すれば、案外すんなり合格したりしますよ。
もっとも、「春は文系に偏ったから理系を何人か採ろう」「男女比がアンバランスだから男子を少し足そう」なんてケースもあるので、異質でなければダメとも言い切れません。春の失敗から学び、今度はきちっと修正できる、というような学生なら、リベンジを試みる価値もあるでしょう。ただし、企業の視線が基本的に「異質人材」に向いていることは、覚えておいてほしいですね。
■就活の枠組み自体にも変化
ところで、そんな「春に大半、秋に追加で」という採用のスケジュールや、それに的を絞った就活の進め方が、これまで大半の学生にとっての当たり前でした。実はその就活の枠組み自体、徐々に崩れてきています。今後の就活生にとっては見過ごせない変化でしょう。
まず、このスケジュールの前後の境界線が、はっきりしなくなってきていることがあります。今年の就活戦線ではリクルーターの活用が急増し、6月の解禁より前から実質的に選考を進めて、内定まで出してしまうようなケースも相次ぎました。一方で、短期決戦で優秀な学生を奪い合った結果、辞退者が続出して、採用計画を満たせていない大手企業もあるはずです。そんな企業が採用活動を続ける動きも、たぶん年末ごろまではみられるのではないかと思います。
加えて、「春―秋」の一括採用システムから外れたところで、新たな採用手法が広がってきてもいます。「リファラル採用」と人事の世界で呼びますが、社員などの人づてで会った学生を採用する「紹介型」の手法が一つあります。採用の7~8割はこの手法だという米国ほどではありませんが、日本でも浸透し始めている。リクルーターの活用もこの一種と呼べるかもしれません。
また、学生がサイトに登録した自己PRを企業側が読んで、これはと思う相手にアプローチする「スカウト型」の手法も定着しつつありますよね。「どうせ自分は一流大学ではないから、自己PRを載せてもお呼びはかからないだろう」と思いますか? いえいえ、一流大学の学生にまとめて声を掛けたいなら、既存の就活サイトで事足りるのです。企業側は違う手法で、いわば「意外な原石」に出会いたいわけなので、登録してみる価値もあるのではないでしょうか。
今年の就活戦線を振り返ると、選考開始までの面談で「6月1日に来てくれれば内定を出します」などと明言し、フライング採用を隠さない企業が増えた印象があります。去年はまだ、選考開始までは内定をほのめかすぐらいにとどめていたのに、です。一方、就活生に接して感じたことですが、「3月広報解禁、6月選考開始」のルールを素朴に信じて就活に取り組んだ学生がずいぶん多かったようです。企業側が堂々と破っているルールは、すでに形骸化しているといってよいでしょう。学生もルールにとらわれず、幅広い視野で就活に臨んでほしいと考えています。
今年の就活スケジュールに合わせて2月から続けてきた「シューカツ都市伝説を斬る!」の連載は、次回で衣替えします。学生にも若手社会人にも数多く接してきた曽和さんから、来春の「会社デビュー」を控えた学生向けに、社会人として踏まえておいたほうがよい勘所をアドバイスしてもらいます。引き続きよろしくお願いします。

