インターン「参加が鉄則」の落とし穴

新卒インターン「参加が鉄則」の落とし穴

リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第24回は「インターン『参加が鉄則』の落とし穴」です。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

■本番のチャンス失うリスク

学生の夏休みは夏季のインターンシップの期間でもあります。志望している企業・業界のもの、そうでないものも含めて、参加している3年生も少なくないでしょう。ここで、「志望企業のインターンシップには参加しておいたほうが有利」という話をよく耳にします。「参加するのが鉄則」というアドバイスを先輩から受けた学生もいるはずです。実は、そんな考え方で安易に参加すると、痛い目に遭うかもしれません。新卒採用選考の段階でマイナスに働きかねない、いわば「もろ刃の剣」の可能性があるからです。

「インターンシップは採用活動に直結しない」というのが経団連の建前です。この建前、どこまで個別企業の本音と重なっていると思いますか。採用選考に優秀な学生を集める上でのプラス効果を、企業側が意図しないわけはありません。インターンシップを主催しているのが人事部であることからも明らかでしょう。これと見込んだ学生に、「選考も受けてね」と耳打ちするぐらいは珍しくないはずです。ルールはルールなので、選考段階であからさまに優遇することはないかもしれません。それでも、選考で同じ担当者が出てくるなら、その人の記憶は消せないのです。

就活に積極的に取り組んでいる学生を中心に、「参加が鉄則」という話が広がるのも、「採用につながっている」と見ているからでしょう。ところがそれを裏返してみるとどうか。インターンシップは、数日間かけて人事の担当者に実力を見定められる機会であるともいえます。ここでバツをつけられ、本番の採用選考でのチャンスも失う可能性すらあるのです。

■「ワンデー」でも人材見極め

最近は、長期の日程ではなく、1日のみの「ワンデーインターンシップ」も増えています。ほとんど会社説明会と変わらない、そんなインターンシップも、企業から見れば人材の見極めの場になります。学生を1カ所に集めて、リクルーターとの個別面談をまとめて実施しているようなものといえるかもしれません。学生側は各社の仕事の内容をよく知り、志望する企業や業界を絞り込む上で生かせる。一方では企業側も優秀な学生をピックアップできる。インターンシップを通じた「予備選考」は、採用のミスマッチの抑制につながるという意味で、私はよいことだと思います。ただ、学生にとっては、適当な気持ちで参加すると、本番の採用選考への道が閉ざされるリスクもあるわけです。志望する企業が固まっているなら、インターンシップも本番と同様との意識で、準備をして臨むべきでしょう。

3年生といえば、まだ学生生活を2年と数カ月しか過ごしていないわけです。片や本番までにはあと1年近くもあるので、その間にかなり実力を磨くこともできるはずです。今の自分をもって勝負するのか、成長して勝負をかけるのかは、冷静に考えてみるべきポイントだといえます。就職を志望する企業のインターンシップにはあえて申し込まず、自分の能力開発を目指して、別の企業・業界のものに参加するという選択肢もあるでしょう。その場合は当然、ワンデーなどではなく、しっかり就業体験を積ませてもらえるプログラムを選んだほうがよいですね。

■採用につながらず開催縮小も

このインターンシップを巡る状況が、じわりと変化してきていることにも触れておこうと思います。実は、決して少なくない企業が、夏季のインターンシップに幻滅し、開催を縮小したりやめたりし始めています。学生を育てるためにそれなりの手間をかけて開催しても、採用につながらないからです。

「せっかくウチのインターンシップを受けてもらったのに、それを箔付けに使って、他の外資系企業やメガベンチャーにさっさと就職を決めてしまう」。こんな嘆きが採用担当者から聞こえてきます。「川に稚魚を放流しても戻ってきてくれない」ような実態に、この2年ほどでかなりの数の企業が気付いてしまったのですね。

もっとも、すべての企業がインターンシップの縮小に動いているわけではありません。エンジニアを欲しいネットベンチャーなどでは、アルバイトの感覚で学生を長期間受け入れ、採用につなげるのは半ば常識です。就活サイトへの登録すらせず、ツイッターでの告知をみてインターンシップに応募し、そのまま就職したなんて学生の話も聞いたことがあります。「稚魚がちゃんと川に戻ってくる」ような、外資も含めた超人気企業も開催を続けています。それらの企業と、あきらめかけている企業に二極化しているというのが正確かもしれません。

ワンデー開催の増加も含め、全体としてみれば、本来の意味での「就業体験」の場は減る傾向です。選考の場としての比重が増しているともいえます。学生の皆さんはそうした実情をよく踏まえて、インターンシップへの参加を吟味してほしいと思います。