新卒新入社員に優しい「ホワイト企業」トップ500 16年最新版!「新卒3年定着率」を徹底解明
新卒者が3年後にどれだけ在籍しているかを見る「新卒3年後定着率」。一般的に定着率の高さはよい職場の印(しるし)とされ、この数字が高い会社を「ホワイト企業」と呼ぶこともある。
前年比143社増の965社を集計
東洋経済CSR調査では、毎年、学歴にかかわらずすべての新入社員が3年後に何人在籍しているかを聞いている(一部前年度になっている場合あり)。近年、就活生を中心に世間の関心が高まり本調査での開示社数も年々増加を続けている。『CSR企業総覧』2016年版(東洋経済新報社)では、男女それぞれの2012年4月入社者数、3年後の2015年4月時点の在籍者数を965社掲載。昨年の822社から一挙に143社増となった。
このデータを使い新卒3年後定着率の高い会社を「新入社員に優しいホワイト企業」として個別企業ランキングと業種別集計を作成。今回は開示企業の増加にあわせてこれまでの上位300社から500社まで拡大して発表する(2015年版は「新入社員に優しい『ホワイト企業』トップ300)。
まず、965社の中から3人以上入社した会社を対象に、定着率のランキングをご紹介する。トップは3年間誰も辞めていない定着率100%が120社。2012年4月の入社者が多い順に表示した。

定着率100%で入社者がもっとも多かったのはブラザー工業の64人。男性48人、女性16人が2012年4月に入社し、3年後の2015年4月に全員在籍している。
『CSR企業総覧』2013年版掲載の2012年4月入社者の状況によると学歴別の内訳は国内の大卒55人(うち男性43人、女性12人)、海外の大卒9人、短・専門卒8人、高卒・他1人。大学以外も含めた全新入社員で100%を達成している。
社内ランクに基づき資格取得時に最大5万円の奨励金支給や若手従業員をトレーニーとして海外グループ会社に派遣。他に大学院などへの通学を目的とした最大4年間の留学休職制度、技術者向けキャリア研修、eラーニングや通信教育といった自己啓発制度などで社員の能力開発を推進する。また年2回実施の社内公募制度や特許報奨制度も導入し、やる気のある社員を応援している。
働きやすさを整える制度も充実
働きやすさの面でも10:30~15:00がコアタイムのフレックスタイム制度や半日単位の有給休暇制度、2014年11月よりトライアルで実施中の在宅勤務制度、最長で通算3年可能な介護休暇といった多くの制度が整備されている。
平均勤続年数も男性14.2年に対して女性13.8年と男女問わず長く働き続けられる職場でもある。働きながら安心して出産を迎えるために、産業医、保健師などと連携した「ブラザー母性健康管理推進プロジェクト」を実施。育休復帰後に子が小学校4年始期までフレックスタイム適用の短時間勤務が可能と子育て支援にも積極的だ。女性管理職登用は後れているが、2020年までに現在の女性管理職比率2.5%を2倍以上にすることを目指し、女性活躍を推進している。

続いて住友金属鉱山の60人(男性49人、女性11人)。非鉄金属と電子材料が2本柱のBtoB企業である同社も充実した制度が整っている。
新入社員3カ年育成計画、若手参事向け選抜研修、参事向け選抜研修といった世代ごとのキャリアアップ支援や資格・技能検定取得奨励制度、国内・海外留学制度、表彰制度などの各種制度で従業員の能力アップを後押しする。
家庭と仕事の両立を支援する制度を整備
特筆すべきは業務外の自己啓発等の能力開発、長期間の医療行為の受診、家庭と仕事の両立支援等を目的とした「ポジティブオフ制度」だ。こうした比較的使用目的が自由な長期休暇制度は一般に「サバティカル」と呼ばれ、同社では3カ月以上2年以内の自発的な休職ができる。
有給休暇取得率も3年平均で79.3%と先日の有給休暇取得率ランキングでは全体の57位と上位に位置する。子育て向けでは小学校3年生まで最大4時間勤務時間を短縮できるなどの支援制度も多い。育児休業復職率は3年連続100%と家庭と子育てを両立しやすい環境を整えている。
3番目に人数の多い国際石油開発帝石は53人(男性43人、女性10人)。2012年4月入社者の学歴別内訳は大卒43人(うち男性33人、女性10人)、短・専門卒3人、高卒・他7人。高卒等も含めて100%となっている。
原油・ガス開発生産で国内最大手の同社はグローバルでビジネスを展開。平均年収は939万円で大卒30歳平均賃金は38万円(本社勤務、扶養家族1人)と高待遇だ。海外留学制度や各種資格・技能検定への補助、石油・天然ガス開発業界に関するeラーニング受講など学習に関する制度も充実。グローバルスタッフとエリアスタッフ(勤務地限定)を相互に転換する「職群転換制度」といったライフスタイルにあわせた働き方の変更も認めている。
子育て支援では、小学校4年までの子どもがいる社員への短時間勤務制度、保育所・託児所・ベビーシッター補助制度などがある。
以上の3社はいずれも従業員の能力アップや積極的な休暇取得、子育てのサポート制度などが充実している。またこうした制度がきちんと運用されていることで若手にとっても魅力ある職場となっている可能性が高い。
100%では他に、三陽商会53人(男性16人、女性37人)、石原産業37人(男性29人、女性8人)、日新電機37人(男性33人、女性4人)、伊藤ハム36人(男性29人、女性7人)、日本航空(男性27人、女性9人)などの人数が多かった。
続いて100%未満も見ていこう。

中国電力やニッパツなどもほぼ100%の高水準
121位の中国電力(99.6%)は男性187人が全員在籍だが、37人の女性のうち1人だけ退職して惜しくも100%にならなかった。122位にはいずれも男性1人が退職したニッパツ、NECネッツエスアイの2社が99.0%の同率で並んだ。

トヨタやJR東日本など大量採用でも高水準
採用人数が1000人を超える大企業は5社。152位トヨタ自動車は入社1409人中1372人が在籍。男性1159人中1137人、女性250人中235人が残っている。同じく152位のJR東日本(97.4%)は入社1189人(男性978人、女性211人)のうち1158人(男性955 人、女性203人)在籍。224位の三菱電機は95.7%で1363人から1305人になった。


NTTは昨年に続き最多人数
最多人数は昨年に続き267位日本電信電話(NTT)の94.6%。入社2791人(男性2030人、女性761人)中2640人(男性1945人、女性695人)が在籍。男性も最多だった。


3メガバンクの定着率は拮抗
376位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(91.9%)は入社1327人のうち1219人が在籍。そのうち女性は896人から811人となっている。この女性人数は日本電信電話を上回り最多だ。ただ、メガバンク内の定着率では354位三井住友フィナンシャルグループが92.5%で三菱UFJを上回った。ちなみに398位みずほフィナンシャルグループは91.6%と3社はほぼ均衡している。


対象社数が10社以上の業種で平均定着率がもっとも高かったのは電気・ガス業の97.0%(10社)。個別企業では121位中国電力99.6%、126位四国電力98.5 %、128位中部電力98.4%、136位九州電力98.0%が高かった。
他にガラス・土石製品94.6%(12社)、ゴム製品92.2%(11社)、その他金融業91.1%(10社)、輸送用機器91.0%(50社)も高い。一方、低い業種は、サービス業67.4%(57社)、小売業72.0%(64社)、卸売業80.3%(91社)、不動産業82.0%(17社)、建設業82.3%(52社)となった。
業種の中でも大きな差がある

ただ、こうした低い業種でも100%の会社はある。サービス業では、オリエンタルランド(34人入社、以下同)、オオバ(10人)、東京都競馬(4人)、キタック(3人)の4社。小売業ではヤマナカ(3人)。不動産業では野村不動産ホールディングス(25人)、イオンモール(20人)、東京建物(10人)、NTT都市開発(9人)、ヒューリック(6人)の5社。業種の中でも大きな差があるのが現状だ。
しかし、例年どおり上位は製造業が多いのも事実。このランキングは高専卒、専門卒、高卒といった大卒者以外の新卒者も含む。製造業中心の上位企業は学歴や担当している仕事に関わらずどの社員にも働きやすい職場である可能性が高そうだ。
新卒3年後定着率は新卒だけでなく全社の働きやすさを見る指標の一つとしても使われる。もちろん、これだけで絶対とは言えないが、膨大な会社の中から候補を絞らなければならない就職活動では効果的なデータとなるだろう。
今回のランキングでは500位のLIXILグループでも定着率88.4%と、一般的に目安とされる定着率70%を大きく上回る。この500社の中から自分にあった会社を探していけば、企業研究の手間はぐっと減るはずだ。
3月1日から「青少年雇用促進法」に基づき就職活動中の学生へ会社からの定着率等の職場に関する情報の部分的開示が義務づけられた。まだ完全開示にはほど遠いが、普通の会社であれば「定着率などの開示は当たり前」という時代は目前となりつつある。これまで新卒の3年後定着率(離職率)は東洋経済新報社などの媒体で限られた会社しか見ることができなかったが、今後はより多くの情報が公開されるようになるだろう。
さて、一般に「ホワイト企業」はこの新卒3年後定着率、有給休暇取得率、残業時間、福利厚生制度など自分がゆったり働けるかどうかが基準になることが多い。
ゆとりある働き方ができる職場はおおむね「よい会社」であることは多いが、一部にはコンプライアンスや環境、サプライチェーンでの人権問題などCSR面での対応が弱いケースもある。こうした点から思わぬところでつまずく会社も出てくる。「本当のホワイト企業」は従業員、取引先、地域、環境、顧客などの幅広い面を普段から配慮している会社ということは知っておいた方がよいだろう。
そうした情報もあわせてご覧になりたい場合は日本最大のCSR情報を掲載する『CSR企業総覧』とその評価データである「CSR企業ランキング」の使い方を解説した『指標とランキングでわかる!本当のホワイト企業の見つけ方』をご活用いただきたい。