「良い学生が来ない」と悩む経営者は何を採用基準にすべきか

新卒「良い学生が来ない」と悩む経営者は何を採用基準にすべきか

思考力を鍛えてきた人材か?

前回は「中堅中小企業が大企業との競争に勝つためには、まず従業員の基礎力を高めるところから始めなければならない」という話をしました。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

大企業が有利な点は、会社のネームバリューが高く資金力が豊富(=待遇が良い)なため、採用の段階で基礎力の高い人材を採りやすいところにあります。一般的には一流大学の成績上位の学生や有名大学の体育会系の学生ほど大企業を指向するため、中堅中小企業での基礎力の高い学生の採用が難しくなります。今のように学生側の売り手市場ではなおさらです。

そうなれば、大企業と中堅中小企業との差は開く一方です。中堅中小企業では、採用した人材の基礎力を高める訓練をすることがどうしても必要になるというわけです。

ここでいう基礎力とは「思考力」と「行動力」の2つを指します。学歴だけで人の能力を正確に測ることはできませんが、学歴は学生時代から頭を使っていた人(=思考力を鍛えていた人)とそうでない人を見分ける有力な手がかりになることは間違いありません。

もちろん、一流大学を出た人の中でも思考力が低い人も少なくなく、そうでない大学の人でも思考力が高い人がいるのは事実ですが、確率的には大学のレベルが高いほど思考力は相対的に高いと言えます。

若いころの思考力の訓練の有無は、採用後に歴然とした差となって現れます。やはり一流大学の成績上位の学生は思考力が鍛えられているし、逆に学ぶことに積極的で無かった学生は、論理的に考える訓練ができていない可能性が高いといえるでしょう。

ただし中には一流の学歴を持つのに大企業が敬遠した学生もいます。その原因がひねくれていて素直な見方ができない、あるいは、入学試験の時が思考力のピークで、あまり大したことはないという人ももちろんいます。素直さはとても重要な採用のポイントです。

また、学歴は高くとも、性格的な問題があるのなら採用しないほうが無難です。

基礎力の高い社員は何が違うのか

「行動力」とは考えたことや決められたことを実行に移す力のことです。企業が体育会系の学生を欲しがる理由は、行動力が鍛えられているからです。

富士山に登る時、思考力も行動力も無い社員は登山道が荒れていれば登頂をあきらめるでしょう。行動力だけがある社員は荒れた登山道を突き進んで事故に遭うかもしれません。

しかし思考力と行動力を兼ね備えた社員であれば、登頂をあきらめず、別の登山道を探す努力をするはずです。

高度に複雑化したビジネスの世界で成功するためには、高い論理的思考力を持って、複雑な現象を複雑なまま取り入れ、複雑なまま理解する能力が求められます。

基礎力の高い社員は、商品企画・商品開発、あるいは、営業、経営の現場で、複雑系の本質を論理的に理解する能力を発揮し、顧客が求める商品やサービスに落とし込む困難な作業を遂行して完成にこぎつけるはずです。

基礎力が低い人は自分が分かる範囲で適当に割り切ってしまったり、勝手な判断で行動するため、顧客が求める商品やサービス水準に達しなかったり、行動力不足で完成を放棄するかもしれません。

そこで基礎力高い人材の採用が望ましいのですが、それが難しい場合は、時間はかかるものの基礎力を高める訓練を行うことが必要になるのです。

訓練と言っても入り口は難しくありません。具体的にはお客さま志向の「小さな行動」を徹底して実践するだけです。

基礎力はこうして高められる

実例を紹介しましょう。

私が関わったある会社では「電話は2コール以内に取る」「より分かりやすい請求書を作成する」というようなお客さまに喜んでいただける小さな行動の目標を毎月決めて実践しています。「行動」であることが重要です。

「電話は2コール以内に取る」ことなんて簡単そうです。目標を決めたその日だけなら、余裕で取れるでしょう。でもひと月という長い期間で見ると、仕事が忙しかったり、別件に関わっていたりして、すぐに電話を取れない状況もあるはずです。

それでも2コール以内に取ることを徹底していれば、そこに工夫が生まれます。そして1ヵ月後に自身と上司の評価を受けて、次の月の新しい目標を定める。それを繰り返していれば自然に社員の基礎力が高まります。

もう一つ基礎力を高める具体的な方法は環境整備の徹底です。具体的には掃除を行うことですが、落ちているゴミを拾うというレベルではなく、短い時間内で担当範囲を決めて、隅々までぴかぴかにするのです。

毎日繰り返し掃除をしているうちに、気づく力が上がり、どんな工夫をすれば短時間で効率よくぴかぴかにできるのか、という思考力と行動力が鍛えられます。当社でも毎朝15分間、必ず環境整備をしています。

このように社員の基礎力を高める仕組みを作る一方で、経営者は景気の良いときに企業に体力を付けて不況に備えることも大切です。景気が悪くなり、求人が減れば、基礎力の高い人材を中堅中小企業は採用しやすくなります。その時が採用のチャンスです。