「面接は言葉のキャッチボール」の定説を疑え

新卒「面接は言葉のキャッチボール」の定説を疑え

■短期決戦で「素人面接官」が急増

学生から、こんな相談がありました。

「面接官からの質問に対しシンプルに返答するように、というアドバイスをもらっていました。そこで、『学生時代にやってきたことを教えてください』という質問に、『大学の野球部に入っていました。3年間、主にピッチャーとして活動しました』と返しました。もっと、質問がくると思っていたんです。ところが、それ以上つっこんだ話を聞かれることもなく、結局面接は5分で終わってしまいました。何が悪かったのでしょうか」

就活のノウハウ本などにはよく、「面接は言葉のキャッチボールで」という定番のアドバイスがあります。相手からの質問に対し、あらかじめ用意してきたような自己アピールを一方的にするのではなく、簡潔な答えでやりとりを繰り返し、会話を深めていくというぐらいの意味でしょう。ただし、これは、相手が熟練の面接官だったときに初めて成立します。

私は仕事柄、企業から依頼されて面接官のトレーニングをします。圧倒的に多いのが、普段は採用や、学生と接触する機会のない不慣れな「素人面接官」です。特に、今年は就活のスケジュールが変更になり、昨年より2カ月早い6月には内定を出す企業が続出します。短期決戦の就活で、優秀な人材を確保しようと、企業は大量のリクルーターを投入しています。選考過程でも、1次面接など初期選考では素人面接官を動員してくる比率が高まるでしょう。何千人という学生が面接を受ける大企業では、その傾向はさらに高まります。当然、会話のキャッチボールにも慣れていません。

冒頭の相談者の場合も、学生がシンプルに回答しすぎたため、面接官は話の接ぎ穂を失ってしまい、次の質問につながらずに終わってしまったケースでしょう。不慣れなので、その学生の本質がよくわからなくても、追加質問をすることなく、下手をすると自分の経験談だけをまくし立てて終わってしまうようなケースもあるのです。

会話のキャッチボールをしようとしても、問いと答えがちぐはぐでかみ合わなかったり、面接官の質問が「とんちんかんだな」と感じたりしたら、自分の情報を存分に伝えられる「プレゼンテーション型」に切り替えましょう。多少、長くなっても相手がこちらを判断するのに十分な情報を伝え、材料を提供します。この場合の注意点は、「情報をたくさん伝えなければ」と焦って早口にならないよう、ゆっくり話すことです。

素人面接官にはもう一つの特徴があります。相手の学生がどんな人間か、その人物像を知ろうとするときに、「事実」ではなく、「思い」や「思考」を尋ねてくることです。「あなたの強みや弱みを教えてください」、「あなたはどんな性格ですか」といった抽象的な質問がこれに当たります。事実ではなく、なんとでも言える主観的な思いを聞いても、学生の本質を知ることはできません。面接官の頭の中で、学生の人物像ができあがっていないにもかかわらず、相手のいう人物像をうのみにしてしまうことになります。そうすると、結局「明るくて元気な人がよい」というような、印象だけの判断になってしまうのです。

もし、学生の強みや弱みを聞きたいのであれば、「あなたは今まで何をしてきたんですか」「なるほど、その時具体的にどんなトラブルがあったんですか」など、次々に具体的なことに落とし込み、面接官本人が分析すればいいのです。

プロの面接官の仕事とは、学生からいくつかの具体的な事実を聞き、そこから「彼は3年も引っ越しのアルバイトをしていたのか。なるほど、ストレス耐性があるんだな」などと、解釈するのです。解釈そのものを学生に預けてしまっては、面接する意味がありません。

 

■自己認知力を試しにくる

もっとも、プロの面接官でも、主観的で抽象的な質問をするときがあります。それは、先ほど言ったような具体的な質問で学生の性質や耐性を予測したあとに、「それでは学生は自分をどう認知しているか」のギャップを知るためです。具体的な質問でストレス耐性が弱かったにもかかわらず、「私の強みは打たれ強いところです」などと答えれば、この学生は自己認知力が低いのだなと判断できるでしょう。

自己認知力が高いか低いか、というのはとても重要な要素です。チームプレーが苦手なのに野球が好きだったり、足が遅いくせに1番バッターを望むような人は、和を乱してしまいます。自分の欠点を認識することができなければ、成長することはできません。日本の新卒採用は、ポテンシャル採用ですから、最初から有能な人材を求めているわけではないのです。要は、どれだけ成長ののりしろがあるか、です。成長力がないということは大きなネガティブポイントですから、面接官はここを厳しく見極めます。

ですから、自分の人物像を尋ねる質問をされたら、なるべく自分の長所を「盛る」のではなく、謙虚に答えるほうがいいのです。欠点があったとしても、それを自覚しているという事が大事なのです。今後、改善していく成長余力がある、と面接官は感じるからです。

どこの会社でも、選考の終盤になってくると手だれの面接官が出てくる可能性が高まります。「この面接官は質問力ありそうだな」とか、「この人、話を聞いてくれそうだな」と感じたら、相手の質問に身を預けることが一番です。相手にとっても聞きたいことを聞けるし、学生にとっても「どこまで話せばいいんだろう」と不安に思うことがありません。

「会話のキャッチボール」が成立すれば、理想的です。しかし、聞きたいことがわからない、何を聞いたら学生の本質を引き出せるかわからない面接官もいます。面接官だからといってインタビューにたけているわけではありません。初期面接では、「面接官がプロ」だと思い込まず、自分の情報を確実に提供できるように準備しておきましょう。