新卒「納得のうえで中小」広がる 大卒就職率が上昇
大手企業が厳選採用の傾向を強めていることを受け、就職活動の途中で志望先を中堅・中小に変える大学生は多い。こうした中、過酷な労働を強いる「ブラック企業」への不安から慎重な職探しが広がり、民間の調査では8割が「就職先に満足」と回答した。大学の支援や中小企業の情報開示の仕組みも拡充しており、ミスマッチ防止に一役買っている。
■「はじめは警戒」
法政大を今春卒業した宍戸勇太さん(22)は東京都内にある社員約150人の広告代理店に就職した。選考を受けた大手数十社からは内定が得られず、昨年10月に大学が開いた会社説明会で社名を知った。中小企業には労働条件や経営状態に漠然とした不安があり「はじめはブラック企業ではないか、と警戒もしていた」と振り返る。
労働時間や残業代について詳しい説明を聞き、財務面を会社の資料で分析。社長に直接社内を案内してもらったり、会社の忘年会に参加したりして雰囲気を確かめた。「今は経営陣との距離の近さや社員一人ひとりの裁量の大きさなど、中小ならではの魅力を感じている」と話す。
公立大を卒業後、実家のある茨城県の医療法人に就職した本沢あゆみさん(22)も企業のホームページや情報誌で社員の平均年齢や離職率、残業時間などをできる限り調べた。エントリーした約80社のうち内定は2社。「苦労は多かったが、納得できる就職先が見つかった」と笑顔を見せた。
リクルートキャリア(東京・千代田)の調査によると、今春卒業した人のうち就職先に「満足」と答えたのは79.5%となり、比較できる過去3年間で最高。「大手の採用はまだまだ厳しい」(文部科学省)中で、中小企業を選び抜いた就活生の姿が浮かび上がる。
■大学も支援に力
各大学の就職支援部門は中小企業と学生のマッチングに力を入れる。立教大は模擬面接などの選考対策を設ける一方、知名度は低いが優良と判断した企業を積極的に学生に推薦している。大学からの紹介でかばんメーカーに就職した嶋田夏佳さん(22)は「社名も知らなかったが、アパレルや観光が好きな自分にぴったりだった」と話す。
中小企業の情報開示も進み、厚生労働省が労働環境など一定の基準を満たした企業を公表する「若者応援企業宣言事業」には3月末時点で5744社が登録した。東京都が昨年開設した中小企業専用の求人情報紹介サイトには、1社6万円の費用負担がある中、235社が申し込んだ。
雇用情勢に詳しい安藤至大・日本大准教授(労働経済学)は「景気が好転し人材不足となった中小企業が採用情報の開示に積極的になり始めた。情報の信用性をどう確保するかが今後の課題で、就活生の安心感につながる仕組みをつくる必要がある」と指摘している。

