体育会の学生は本当に「就職に有利」なのか

新卒体育会の学生は本当に「就職に有利」なのか

「就職に有利」というイメージが根強い体育会学生。だが、練習や試合、合宿と忙しい日々を送る中での就職活動は、他の学生よりもスケジュール面での制約など難しい部分も多い。そういった状況を反映して、体育会学生の就職活動を専門にサポートする就活サイトや支援サービスが活発化している。

体育会学生の就活は時間がない

就職活動を行う際、体育会の学生とその他の学生で大きく異なる部分は何だろうか。体育会学生対象の就職サイト・支援サービス各社の担当者が指摘するのは「活動時期が限られること」だ。

2016年卒の学生にとっては選考開始が2015年8月となり、体育会の学生にとっては秋の大会などを控えた合宿や遠征の時期に重なった。各社の担当者は「例年より受けた企業数が減っている」「今年は本当に苦労が多かったようだ」と口を揃える。

2017年卒の場合は選考開始が2016年6月となるため、時期的な制約は2015年より多少緩和されるとみられる。だが、就職活動の情報解禁は2016年3月のまま時期が変わらないため「厳しさは結局同じだ」とみる関係者が多い。

実質的に、体育会の学生が自由に動きやすい時期は、ウィンタースポーツなどを除けば毎年12~2月ごろに限られる。春になれば部の活動が本格化し、就職活動での動きが制限されるケースが多いためだ。他の学生と比べて活動に制約を受けやすい状況は変わらない。

そういった状況で、体育会学生のスケジュールや活動、企業側の情報の双方を把握している就職サイトや就職支援サービスは、就職活動の大きな助けになるだろう。体育会学生限定の情報が得られたり、試合と面接などが重なってしまった場合にスケジュールの交渉をしてくれたりする例もある。

一般的に、就職活動に関しては、掲載された情報から自分で企業を探して応募するタイプの就職サイトと、担当者との面談などを通じて適した求人を紹介するエージェントのタイプがある。

体育会学生向けの場合は「エージェント」と銘打っていない場合でも、スタッフによる支援や相談など、個別サポートを前面に打ち出したサービスが目立つのが特徴といえる。いくつかのサービスを例に見てみよう。

登録者は1万5000~2万人

体育会学生の就職支援では十数年の実績を持つアスリートプランニング(東京)が運営するのが、体育会学生向けの就職サイト「アスリート就職ナビ」だ。同社によると体育会の学生は大学生全体の8%で、新卒採用の対象者数としては毎年4万人程度となるが、「そのうちの1万5000~2万人に登録いただいている」(同社HR事業本部の日名子裕子さん)という。

紹介している企業は年間で600社ほど。体育会学生を求める企業の情報をweb上で提供しているのはもちろんだが、そのほかに「アスリート就職セミナー」という体育会限定の合同企業説明会や、同社スタッフを講師として自己分析や自己PRについて指導する講座なども無料で開催している。

最近は体育会学生を一定数採用したいという企業も多く、限定の特別枠を持っていることがある。登録学生は特別枠用の説明会の情報なども得ることができる。

「直接対面して学生との信頼関係を築く」ことを重視しているのが、スポーツフィールド(東京)が運営する「スポナビ」だ。学生が登録すると、同社の担当者が大学の部室や寮、あるいはグランドなどに出向き、直接会って面談する。

その後も日常的に電話やメール、LINEなどで連絡を取り合いながら、学生に合った企業の紹介などを行う。地方在住の学生に対しても、年に数回は担当者が全国各地を回って対面するという。

対応するスタッフは全員体育会出身者で、学生からの相談を受けるほか、試合などと面接の日程が重なった場合、企業側にスケジュールの変更を依頼するなどの調整も行う。スタッフが試合の応援に行ったり、就職活動が終わった後もスタッフと学生の交流が続いたりすることも多いといい、密接な交流が特徴だ。

同社では「スポナビ」とともに「スポナビエージェント」というエージェントサービスも行っているが「学生に対して提供しているサービスの内容はほぼ同じ」(同社の加地正専務取締役)といい、サイト上だけで完結せず、対面でのやりとりに重きを置いている。

就職サイト大手の「リクナビ」運営などで知られるリクルートキャリア(東京)も「体育会学生のためのリクナビ就職エージェント」を運営している。

その名の通りいわゆる就職エージェントのサービスで、2013年に開始。新卒向け就職エージェントサービスとしては日本最大の企業・学生利用数という「リクナビ就職エージェント」ならではの「選択肢の多さや、豊富なノウハウが特徴」(同社キャリアアドバイザーの眞山祐衣さん)だ。

登録した学生とはまず面談を行い、その後は電話や対面で相談を受け付けるほか、定期的にアドバイザーから学生に連絡し、活動の状況を確認する。

学生からの相談内容は「履歴書の添削・面接の対策をしてほしい」といったものから、「これまでの体育会での活動をどのように就職活動で生かせばいいか悩んでいる」といったものまでさまざま。体育会学生の活動で課題となるスケジュールについては、学生の活動日程にあった企業を紹介するだけでなく、企業側にも日程調整の交渉などを行う。

マンツーマンで学生を指導

「体育会専門マンツーマン就活コーチ」と銘打っているのは、バザール(横浜)が運営する「アスリートキャリアカレッジ」だ。同社アスリート事業責任者の元野勝広さんは、アメフトで高校・大学日本一、日本代表を経験し、日本人初の室内アメフトプロ選手として活躍した経歴を持つ。

元野さんは、各大学の体育会本部が開く「リーダーズキャンプ」に講師として招かれることが多く、チーム運営やリーダーシップなどに関するコーチングを行っている。その際に参加した学生などの口コミで会員数が増えることが多いという。

これらのアスリート向けコーチングを通じた就職活動の支援が同サービスの特徴で、就活に向けては志望する企業についてどのように研究し、志望動機を固めるかの指導などをマンツーマンで行う。相談は「LINE」など通じて頻繁に受けているほか、面接での企業側からの評価を学生に解説し、次の面接に向けた対策なども行う。

また、ラクロス・野球・サッカー・アメフト・ラグビーについては、競技別の就活セミナーも行っている。同社は他の人材紹介企業とも提携し、各社が紹介する中からも体育会学生向けの求人を紹介している。

ここに挙げた各社のサービスは、学生の利用はいずれも無料。体育会学生限定の求人の紹介や、就活相談を受け付けている点はほぼ共通しているが、それぞれに強みや特徴がある。これらのほかにも、体育会学生向けの就職サイトやサービスは各種存在する。

体育会学生は採用担当者が推薦しやすい

「体育会学生は就職に強い」というイメージは根強いが、では実際に企業から見た体育会学生の「強み」は何だろうか。一般的なイメージでは、学生時代から先輩やOBとの関係を通じて多様な人との関わりや、「負ける」経験による挫折からの回復の早さ、粘り強さなどが挙げられる。

実際にこれらの点は「違う価値観の人とどう付き合うかなど、学生時代から社会の疑似体験をしている」(アスリートプランニングの日名子さん)などとして評価されているという。また、企業の採用担当者の視点では「スポーツに関する自己PRは内容がわかりやすく、採用担当者が上司に推薦しやすい面もある」(同)という。

大学時代は野球部に所属していたというスポーツフィールドの岡村芳明課長は「スポーツは必ず勝てるとは限らないが、勝つ確率を上げるために日々練習するのが当たり前。ビジネスの世界も答えはなく、日々試行錯誤の連続。部活で当然のようにやっていることが、社会に出てからの力になる」と、自らの体験をもとに語る。

2017年卒は選考開始時期が再び変更されて6月となるため、これまでに就職活動をした先輩の体験談などが必ずしも当てはまらない。活動時間の限られる中、各種サービスは体育会学生にとってますます重要なものになるだろう。