就活生が遭遇したヘンな面接

新卒就活生が遭遇したヘンな面接

採用面接がピークを迎え、1日で複数企業の面接を掛け持ちして走り回っている就活生も少なくないだろう。人事は就活生の適性を見極めようと面接にいろいろと工夫を加えるが、やりすぎてしまって盛り上がらず就活生が戸惑うだけ、ということもあるらしい。現役就活生や先輩が実際に体験したヘンな面接、嫌な面接官をケーススタディーする。

■「オラオラ系」面接官の登場

 

日大出身の坂井恵さん(仮名)は、不動産会社のグループ面接の強烈な記憶がいまだ生々しい。

海外にも拠点を持ち、創業から40年以上の歴史ある会社だが、学生8人相手の面接に登場した1人の面接官は白い開襟シャツにオールバックという「完全なオラオラ系ファッションでした」。案の定、椅子にふんぞり返って両股を目いっぱい広げて座り、斜に構えてエントリーシート(ES)に目を通し始めた。そして、オラオラ面接官が8人に課題を与えた。

「え~、あなたたち8人は~無人島にいます。自分がそこでえ、どう生き残れるか~話し合ってください。あ、あとそのうち2人は死にますから」

全員で生き残る方法ならまだしも、2人が死ぬ前提で考える生き残り策とは一体……。8人の就活生は訳がわからず、戸惑いの表情を浮かべ顔を見合わせるばかりだったという。面接官は助け舟を出すわけでもなく、「あと10分でぇ~す」と吐き出すような声でカウントダウンするだけ。発言らしい発言もなく、面接は終わった。「結果的に落ちましたが、あっそうという感じでした」。

坂井さんはさらに、高品質なサービスが人気の居酒屋チェーンの面接でも変わったグループ面接を体験した。選考の名称が「バトルロワイヤル」。自分の長所をアピールし、他の就活生を蹴落として自分だけが生き残りを目指すという、なんとも物騒なイメージの面接。ここでもまた、テーマが生き残り。偶然なのか……。

「なぜか生き残ってしまった」と苦笑する坂井さん。次の段階は1対1の面接。高校の部活を話題にやり取りしていると面接官がいきなり「あなたは長女ですか?」。「はい、そうです」と困惑しながら答えると面接官はうれしそうに「やっぱり」。さらにこう続いた。「あなたはそうやって周りの意見を聞いてまとめることをアピールしますが、本当は上に立ってズバッと物事を決めたい人でしょ」

「オマエは占師か!」と心の中で突っ込みつつも相手の勢いに押されて「そうかもしれません」。すると面接官は自分の推測が当たったのがよほどうれしかったのか、「やっぱりね」と喜色満面になったという。

■社是をひたすら朗読させる面接

都内有名私大就活生は中古車販売会社のグループ面接を「頭の中が真っ白になる変な面接でした」と振り返る。

学生5人に面接官2人。面接室に入ると面接官が紙のフリップを持っていた。第一声が「ウチの社是を知っていますか」。5人とも全く知らない。そうすると社是が書かれたフリップを見せられ、「1人ずつ大声で読み上げてください」。声が小さいと「もっと大きな声がでるでしょ!」とやり直しを命じられた。まるでスパルタ企業の研修のようだ。

社是の朗読が終わるとようやく自己PRをするよう促され、普通の面接らしくなった。一通り終えてほっと安心したときだった。「全員立って、今度は何も見ないで社是を暗唱してください」。この回の就活生はほとんど暗唱できずに落とされてしまった。「最後まで何を狙いにした面接なのかわかりませんでした」

就活生たちの体験談を総合すると、どうやら複数の就活生をまとめて面接するグループ面接やグループディスカッション(GD)で「不思議なテーマ」が与えられることが増えているようだ。

グループ面接を重視するようになった企業に背景を聞いてみる。

「3年前からGDを導入しました。ESで人数を絞るのをやめて、GDを通じてできるだけ多くの学生を見るようにしている」(広告)

「とにかく多くの学生に会うためにGDを取り入れた。自分の意見を言える学生もいれば言えない学生もいる。言える学生だけを優遇するつもりはない」(印刷大手)

都内中堅大のキャリアセンター担当者も「企業が多くの学生を見ようとしてグループ面接は増えている。これはいい傾向」と歓迎する。「ただ……」と担当者は続ける。「時々、首をかしげたくなるような内容のグループ面接の話を聞きます。先日も『6人が部屋に招き入れられ、制限時間だけ決まっていてテーマや指示はなにもなし』という面接があったと聞きました」

■求む!「人の話を聞かない就活生」

採用活動の代行会社にグループ面接の舞台裏を聞いた。

「最近、顧客企業にGD導入を勧めています。実際に就活生が話しているのを見ないとわからないことが多いし、多くの就活生を一度にチェックできるGDは効率もいい。規模は5~6人が適正ですかね。8人以上になると話が分散しやすく、1人当たりの発言回数も減ってしまって一人ひとりが把握しにくくなるので」

最近はグループディスカッションを導入する企業が増えているという(合同企業説明会で面接を受ける大学生、東京都江東区)

最近はグループディスカッションを導入する企業が増えているという(合同企業説明会で面接を受ける大学生、東京都江東区)

GDで就活生を見るべきポイントとしては「積極性」「人の話を聞く能力」「論理的思考力」「時間管理」など。ただ、企業によって重視するポイントは異なるという。

「先日、ある企業のGDを代行しました。採用担当の注文は『新規事業を担う人材がほしいので、人の話を聞かない人を選んでほしい』。なので、GDでも他の就活生に嫌われても同調せず、『それは違う』と強く自己主張する人材だけを面接で合格にしました」

組織で仕事をする企業は、普通はコミュニケーション力や協調性のある人材を求めるものだ。ところが、この企業のように異質の人材を見つけようと思ったら、普通とは違う面接、判断基準で適性をあぶりだそうとする。そういう観点から見ると、冒頭で紹介したヘンなグループ面接も何か意図があるのかもしれない。

■面接官に逆質問で仕返し

もっともどう好意的に見ても、そんな意図が感じられない面接も少なくない。

中堅菓子会社の面接を受けた女性就活生の話だ。学生4人、面接官4人。司会役の面接官はやたら早口で学生をせかすし、1人は何もしゃべらない不機嫌な女性面接官。

「雰囲気の悪さのせいか、1人の学生が緊張してあまりうまくしゃべれなくなると、次の質問からその学生を飛ばしてしまったのです。あれれ、と思ったのですが、その次の質問もその学生には振らない。飛ばされた学生もショックを受けていた様子でしたし、私もすごく嫌な感じがして、こんな会社は行くべきではないと思いました」

圧迫面接以前の問題で、これはかなりひどいケースだ。国立大大学院の就活生は、あるベンチャー企業の面接で幻滅したという。

初めから上から目線の面接官が「キミのやりたいこと、ビジョンて何?」。自分の考えを話すと「そんなことできんの?」と露骨にバカにしたような答え。この就活生は面接の最後によくある「逆質問」の機会を使って逆襲を試みる。面接官に対し「あなたのビジョンは何ですか?」と質問してみたのだ。

すると戸惑った様子で「今模索している」「目の前の仕事を頑張るだけ」などと答えるのがやっと。ビジョンの欠片も出てこなかった。

「自分で語るべきビジョンも持たないのに、学生の語ったビジョンを端からバカにするなんて……」

■就活生が前向きになれる面接官

残念ながら、企業には就活生を失望させるような社員や面接官は少なからずいる。一方で、真摯に就活生と向き合う面接官だっている。

現在就活中の法政大生、山本雄一くん(仮名)はある損保の面接でこんなことがあった。

2次面接終了後に面接官から「ちょっと君にフィードバックしたいことがある」と呼び止められた。「君にはちょっと気になる口癖があるけど、わかるかな。会話の中で『やっぱり』『なんか』という言葉がすごく多い。減らせばもっと良くなるよ」

「正直、ヤバイと思いました。ダメな部分の指摘=落とされるってことだと思ったので。ところがその面接は通過して最終面接まで進むことができました。ちゃんと見てくれたのかな。ここに内定をもらえるかどうかはわかりませんが、他の企業の面接でもこの指摘を生かそうと思います」

山本くんは以前よりも前向きな気持ちで就活に臨めるようになったという。面接官の一言が就活生には大きな励みになることがある。