リクナビを笑う者は、就活に泣く

新卒リクナビを笑う者は、就活に泣く

3月1日に開催されたリクナビ主催の合同企業説明会。対象はUターン学生と理系学生。リクナビでは全学生を対象にした大規模な合同企業説明会だけでなく、ターゲットを絞った合同企業説明会も開催している。学生は効率的に企業を選ぶことができる。(東京ビッグサイト、撮影:今井康一)

知らない企業を紹介してくれるのは就職サイト

3月1日に新卒向け就職サイトが本格オープンした。多くの学生が登録する一方で、就職サイトに対して「エントリーをあおる」「ミスマッチを助長する」などの批判が多い。しかし、就職サイトは就活生にとって役に立たないものなのか。就職できない学生がいるのは就職サイトのせいなのか。

「エントリーをあおる」と批判する人たちは、「簡単にエントリーできるので、情報過多で学生が混乱する」と言う。しかし、情報が少ないよりは多い方がいい。学生は知名度の高い一部の企業しか知らない。こうした学生は就職サイトを使うことでいろいろな企業を知ることができる。

情報を整理できないのは就職サイトの責任ではなく、学生の責任ではないのか。そもそも多少はあおられないと企業研究を始めない学生が多い。就職サイトから勧められた企業にプレエントリーすることで、就活がスムーズに進むというケースは多い。

それではリクルートキャリアが運営する「リクナビ2016」を見てみよう。業種やエリアなどを選択するとそれに合った企業がアップされる。たとえば、自動車業界を選択すると、主要自動車メーカーはもちろん、自動車部品会社なども出てくる。自動車業界を志望する学生ならば、主要メーカーを知っているのは当然だが、部品メーカーについては詳しくない。リクナビが知らない部品メーカーを紹介してくれるので、効率的に企業を探すことができる。

また、業種ではなく、特定のテーマを基に企業を探すことも可能だ。たとえば、リクナビ特集の中の「世界を舞台に活躍できる」をクリックすると海外展開に熱心な企業の一覧を見ることができる。

国際的なビジネスというと総合商社や外資系企業しか思い浮かばない学生が多いが、この一覧には海外展開に熱心なメーカーやアパレル、リース会社などがアップされている。学生視点では気づかない企業に出合えるわけだ。気づかない企業に出合えるというのはリクナビの大きなメリットと言える。

これらの企業1社ごとにエントリーすることも可能だが、まとめてワンクリックでエントリーすることもできる。非常に効率的なのだが、この一括エントリーシステムについては批判が多い。エントリーが簡単すぎるので、エントリー数が多くなりすぎてしまうというのだ。

リクナビに批判的な人たちは、エントリー数が多いと困る点として、以下の3つを挙げる。(1)企業数が多いと情報管理ができない。(2)企業数が多いとじっくりと企業研究ができない。企業理解が不十分なまま選考に臨むので落ちてしまう。(3)選考に受かったとしても、企業理解が不十分なまま入社するので早期に退職してしまう。

エントリー数が少ないと、後で行き詰まることも

それでは、(1)~(3)について検証する。まず、エントリー企業数が多いと情報管理ができないというが、リクナビにはマイページ機能がある。ここで活動履歴や予定を管理することができる。

また、スマホ用にリクナビアプリも用意されている。リクナビアプリは、アラートで説明会などのスケジュールや、企業からのメッセージの有無を教えてくれる。うっかりして説明会に行きそびれたり、メッセージを読み忘れたりすることを防いでくれる。

(2)(3)の批判は問題外だ。就活生が企業研究するのは当たり前のこと。多すぎて研究しきれないならば、何かしらの基準で企業数を自分で絞ればいい。

そもそも、多くの企業にエントリーしておかなければ、選考に落ちたときに次に受ける会社がなくなってしまう。選考のヤマを超えた時に内定もない、持ち駒(エントリー企業)もないでは、そこで就活が行き詰まってしまう。ある程度多くの会社にエントリーしておくのは重要なことだ。

リクナビの長所はリコメンド機能が充実していることだ。エントリーをしていくと、学生個人ごとに傾向が表れる。特定の業界に絞っている、業界よりも企業規模を重視している、勤務地にこだわる、など傾向はさまざまだ。

リクナビではこうした傾向を基に、日替わりで学生ごとに興味を持ちそうな企業をピックアップして送っている。こうした企業の中には、学生自身が気づかなかった企業が多数入っている。

リクナビが数多くの企業の中から、各学生の情報を基にビッグデータで解析して選んだ企業だ。この中から企業選びをすれば効率がいい。そして、企業にエントリーを続けると、エントリー企業を基にさらに新しい企業を紹介してくれる。

また、エントリーの傾向と大学・学部を掛け合わせた企業の一覧も提示している。学生が志望する企業群の中で、内定を取りやすい企業ということだ。建前では選考と学歴は関係ないことになっているが、実際は関係があるのは周知の事実。学歴という要素も加味したお勧め企業の一覧はとても役立つ。

今年の就活は時間がない

リクルートキャリアの岡崎仁美・就職みらい研究所所長は「今年の就活は圧縮スケジュールになっている。昨年ならば12月~3月までに行っていたことを3月~4月に行い、4月~5月に行っていたことを5月に行う感じだ」と言う。就活のペースが早く、スケジュールが詰まっているのだ。

以前ならば、業界・企業研究で試行錯誤している時間があったが、今年は時間の余裕がない。リクナビのリコメンド機能は学生にとって極めて便利な機能だ。

リクナビは学生のためではなく、自社の収益のためにエントリーをあおっている、との批判がある。民間企業であるリクルートが収益を追求するのは当たり前のこと。学生にとっては、掲載されている情報が役立てばいいのであって、リクルートの利益は関係ないことだ。

学生の中には、リクナビのビジネスモデルを考えたこともない人が少なくないので、ここで説明しておく。

リクナビは新卒採用企業から掲載料金を受け取って収益を上げている。報道機関の記者など第三者が記事を書いているのではない。厳密に言えば、リクナビの記事は採用広告記事だ。企業にとってネガティブな情報はほとんどなく、企業がPRしたい情報が大きく掲載されている。広告記事なのだから当たり前の話だ。

しかし、虚偽の情報が掲載されているわけではない。今どき、故意に虚偽情報を掲載すれば大問題となり、採用などできなくなってしまう。リクナビは掲載情報の内容については目を光らせている。うそはないが、企業のいい面が強調された情報が掲載されていると割り切って利用すればいいだけのことだ。

リクナビ情報を基礎に企業研究を深めよう

リクナビの記事はわかりやすくまとまっているので、まずここを見ると、企業の概略を理解することができる。それから、その他の資料を読み込んだり、OB・OG訪問をしたりすれば企業研究が深まる。企業のネガティブな面は自分で調べればいい。

リクルートキャリア執行役員の中道康彰・新卒事業本部長は2014年11月に東洋経済のインタビューに対して「リクナビはあくまでもサービス。使いこなしようで変わる。私が言うのはおかしいかもしれないが、リクナビには使われないでほしい」と述べている。

このコメントがリクナビの実体をよく表しているのではないか。リクナビに全面依存するから問題が生じる。就活の主体はあくまでも学生自身だ。リクナビは就活ツールの1つだと割り切って使えば、これほど便利で役に立つものはない。