IT各社、「起業家」学生を奪い合い 企画ごと取り込み

新卒IT各社、「起業家」学生を奪い合い 企画ごと取り込み

「起業」の経験をもつ学生の争奪戦が熱を帯びている。16日には学生と企業をつなぐイベントが都内で開かれ、ヤフーやディー・エヌ・エー(DeNA)などIT(情報技術)系7社が参加した。一括・大量という従来の採用手法では難しい「とがった」人材を確保するだけでなく、有望事業の取り込み策と位置づける。学生側も起業を「就活術」ととらえている側面があるようだ。

「第1回選択希望人材!」。16日、品川プリンスホテル(東京・港)で開かれた「ITドラフト会議」はプロ野球さながらだった。企業の人事担当者が、自社の「指名」を公表していく。他社と重複した場合はその場でくじ引きだ。

指名された学生には採用面接の優先権やインターンシップへの参加権、起業を支援してもらえる権利などが与えられる。参加企業、コロプラから1位指名を受けたのは京都大学大学院の学生で、写真を送るだけで予定を登録できるカレンダーアプリの制作者だった。

スクウェア・エニックスの木通浩之コーポレート・エグゼクティブは「『ゲームを仕事に』と考えていない人を探したい」と参加目的を語る。同社の新卒採用にはゲーム好きが集まるが、「これからゲームの形は変わる。過去のイメージにとらわれない人材も必要」(木通氏)と考える。

採用活動開始を来年3月としている経団連も学生の企業研究は認めており、イベントもあくまでその範囲内との位置づけだ。ただ、経団連に加盟していない参加企業も多く採用を強く意識した声も聞かれた。「欲しい人材はたいてい重なる。外資系にはもう内定を出しているところもあり、ルールなんて言っていられない」(参加企業)という。

アイデアや企画の斬新さが勝負のIT業界。売り上げを確保する前の段階を含めて、起業家学生への企業の関心は高い。レシピ検索サイトのクックパッドは4月、お出かけ情報サイト「ホリデー」を運営していた学生のチーム4人全員を採用。4人は同社が新設した「ホリデー事業室」でクックパッド社員として事業を続けている。

クックパッドの石渡進介最高執行責任者(COO)は「彼らの存在が周りに刺激を与えている」と語る。有望な新規事業を素早く取り込めるうえ、社内活性化も狙う。起業家側も、資金調達や経営の手間などにわずらわされずに事業に打ち込める。リーダーの友巻憲史郎氏は「サービス開発に力を注げる環境はありがたい」と語る。サイバーエージェントも起業家学生を積極的に採用している。今月には入社5年目となる元起業家学生が取締役になった。

起業がアピール材料になるにつれ、就活の必須ツールと考える学生も増加。ウィルフ(東京・世田谷)は起業家学生を企業に仲介するサービスを計画している。「起業した学生の6割ほどは最終的に就職をしたがる」(黒石健太郎社長)ためだ。ある大学生は「大手商社から内定を得るために起業経験が有利」と語る。

早稲田大学ではビジネスコンテストに参加する学生が増加する一方、インキュベーションオフィスに事務所を構え、事業化まで達する学生は決して多くない。就職を目的とした経験作りの起業が増えるにつれて、企業の見極め術が試されることになる。