新卒内定辞退者を出さない、社長の一言
「内定辞退者が出るのは、ある程度織り込み済み」
実際、新卒内定者に関する調査によると、7割の企業で内定辞退者が出ているそうです(※1)。ただ、6月末の有効求人倍率は1.10、新規有効求人倍率は1.67(※2)と、雇用情勢はバブル期並みに改善していますから、今年は予想以上に辞退者が増えるかもしれません。ですから、新卒者を募集する社長さんは、そういう強がりを言います。
しかし、採用には人的にも金銭的にもコストがかかっていますから、内定辞退者に「内定辞退は契約違反だ、違約金を払え」と言いたくなる経営者もいるようです。ですが法律上、内定を辞退されただけでは、違約金や損害賠償は取れません。
会社は、内定者から「内定承諾書」や「誓約書」を出させるのが一般的です。しかし、これには内定者に入社を強制できる法律上の拘束力はありません。また、内定を辞退したからといって辞退者から違約金や損害賠償を取ることも、まずできません。労働基準法にも、「労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償金を予定する契約をしてはならない」と、規定されています(法16条)。
また最近は、就職活動で嫌な目、不愉快な思いをさせられた報復として、web上で自分を落とした企業をあしざまに言う学生が出るといったリスクもありますから、「違約金」云々といった法的に通りにくいことを相手に言うのも避けた方がよいことです。
人材は法律ではつなぎ留められない
内定辞退者を出したくないというのであれば、他社の採用選考が一段落する10月以降に採用活動を始めればいいのです。中小企業が大企業と同じ4月1日から採用活動をすれば、いくら早めに内定を出しても辞退者が出るのは避けられません(なお来年度の採用、平成28年3月卒業予定の新卒者からは、採用活動開始が4年生の8月1日になります ※3)。しかし、企業が正式に内定を出す10月1日以降に採用活動を始めれば、辞退者が出るリスクはかなり低くなるはずです。
ただ、どの企業もそれを知りつつ採用選考の開始時期を横並びにするのは、採用活動を遅らせた場合、優秀な学生、企業が欲しがる人材が残らないと判断しているからでしょう。
他方、最近の学生が共通して持つ感覚は、将来への不安と、それを埋める『将来の保障』です。「自分の雇用を保証できるような強い組織を作ることも、君がこれからしていく仕事の一部だろう」。そう言いたくなりますが、時代の風潮を嘆いても仕方ありません。彼らは将来を保証してくれそうな言葉に弱いのです。
では、どうするか。相手が金の卵であろうと、軽々しく会社の将来や成長性を約束することはできませんが、この会社が「遵法的な会社であり続ける」ということは堂々と宣言していいことです。例えば解雇について、労働契約法16条には「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効」と規定されています。
ですから、「当社は、違法で不合理なリストラや解雇は絶対にしない」と堂々と、そして少しだけ恩着せがましく言えばいいのです。ブラック企業が問題とされる世相にあっては、これすらが凛々しく聞こえるはずです。