新入社員へのアンケートで浮き彫りになったこと 「ギャップ」を放置すると、社員はすぐに辞めてしまう

新卒新入社員へのアンケートで浮き彫りになったこと 「ギャップ」を放置すると、社員はすぐに辞めてしまう

現在まで内定者25名、内定辞退ゼロ

数カ月前、ある地銀の頭取がわが社を訪れました。なごやかに雑談をしていたところ、話題がふと新卒採用のことに及びました。私はなにげなくいいました。「現時点で25名に内定を出しましたが、いまのところ内定辞退はゼロです」「去年は20名の新卒社員を採用しましたが、今日まで退職した人は一人もいません」。頭取は驚いた顔で私を見ました。そして「そんな会社なんてあり得ない」と。

頭取いわく、どれほどの知名度があり、またどれほどの厚遇を用意している会社であっても内定辞退は必ずある。そして現在、当行では2名の内定辞退が出ており、入社一年で辞める人が出てくるのも普通にあることだ、と。

かねてより、わが社の内定者の辞退数が減っていること・新卒社員の定着率が高くなっていることは実感としてはありましたが、頭取からそう指摘されて、改めてわが社は特別な事例ということがわかりました。

なぜわが社は、内定辞退が少ないのか。あるいは新卒定着率がいいのか。理由は単純で、定期的に内定者に、または新卒社員にアンケートやヒアリングを実施し、彼らがなにを感じなにを考えているのか、どういうことを求めているのかを詳細に把握して、常に(そして細かく)組織や方針を改善しているからです。どの会社も「内定辞退を少なくしよう」「新卒社員の定着率を高めよう」とは考えています。考えているのにそれが実現できないのは、「当事者」(すなわち、内定者・新卒社員)からヒアリングしないからです。

普通の管理職は、こうすれば新卒社員は居心地がいいんじゃないか、モチベーションが維持できるのではないかと、「頭で」考え、手を打つ。しかし、あなたと当の新卒社員とではもう世代が3つ4つ違うでしょう。ということは仕事に対する価値観、人生観も大きく違っているのです。当然、あなたが善かれと思ってする施策が受け入れられないなんてことは普通にあります。であれば「当事者」である本人たちに直接訊くのが一番いい。なまじ優秀な管理職は、すなわちあなたのような管理職は、こういうことが意外にできません。あなたは是非とも気をつけてください。

アンケートを通じて新卒社員が感じているギャップを探る

直接本人たちに訊く、ということについて話を続けると、株式会社武蔵野では新卒社員を迎えてから2~3カ月後にアンケートを実施します。いま彼らはなにを考え、どんな気持ちで働いているのかを把握して、組織の改善に活かします。内定者が入社前に思い描いていた「理想」と、入社して実際に働いてみた「現実」との間には、必ずギャップがある。このギャップを放置していると、それは早期退職の大きな原因になるからです。

設問は全部で15。回答は無記名ですから、新卒社員も比較的安心して本音が書けます。アンケートは、わが社が新卒採用を始めたのとほぼ期を同じくして取っていますから、ほぼ四半世紀になんなんとします。これだけ長く同じアンケートを取り続けていると、新卒社員の傾向の変遷が見えてきます。

こういう質問があります。「いまの仕事のまま3年間異動がないとしたらどうするか」。社員は、本心では「つまらない仕事だな」「この管理職とは気があわないな」と思っていても、そこそこ真面目に仕事はする。それは「3年もすれば自分は異動になっているだろう」という希望を持っているからです。

では、もしその希望がなくなったらどうするか。辞めるのか、続けるのか。ここに、新卒社員が自社をどう受け止めているかが如実に現れます。仕事は退屈でも、あるいは管理職とはそりが合わなくても、なにかそれを上回る魅力が組織にあれば彼らは「続ける」でしょうし、そうでなければ「辞める」でしょう。経営者としての理想をいえば、もちろん「続ける」と回答してほしいところ。ですが現実はそんなに甘くはなく、従来は「辞める」が「続ける」を上回っていました。

残業をなくす取り組みを続けていたことが奏功した

ところが2年前から傾向が変わりました。「辞める」と「続ける」とがほぼ拮抗するようになったのです。これは新卒社員の満足度が向上している証拠です。

どうしてそうなったんだろう、と考えたらひとつ思い当たりました。わが社は2年前から残業をなくす取り組みを続けており、現在では一番多い社員でも月に40時間未満までに改善されている。これが厚遇よりも余暇や私生活の充実を望む昨今の新卒社員にうまくマッチしたのです(アンケートでは退社時間についても質問していますが、実に75パーセントが「(帰宅時間は)早い」「普通」と回答しています)。

「(仕事を)続ける」と回答した人には、その理由についても自由回答式で質問しています。すると「お客様と接することが楽しい」「ルート営業が楽しい」と、「楽しい」というキーワードが頻出するようになっている。これはここ2年ではっきりと出てきた特徴で、過去には一度もありませんでした。

以上からなにがいえるのでしょうか。

こういうことだと思います。従来、経営者なり管理職なりは、社員に対してはやりがいと、本人の資質・能力にふさわしい待遇を用意しておけば問題はなかった。ところが今は、社員の私生活にあっては余暇を満喫させ、仕事にあっては楽しさを感じさせるよう対策しなくてはいけない。そうでないと彼らはギャップを感じて辞めてしまう、と。これはわが社に限らず、どの会社でも同じように心しておかねばならぬことでしょう。

新卒社員が辞めるのは管理職の大恥

どの会社だって、あらたに獲得した新卒はなるべく失いたくないと思っています。だから、しかるべく対策も取ります。にもかかわらず辞められてしまうのは、(繰り返しになりますが)頭の中だけで施策を考えているからです。だから現実の新卒社員とのギャップが拡がってしまう。

経営環境が分秒の単位で変わり続けているように、就活生や若い社員たちの意識や価値観も急激な勢いで変わり続けています。この変化をキャッチアップしていくうえで大切なのは「当事者」である彼らに直接ヒアリングをし、そしてそこから得られた成果を組織に落とし込んでいくことです。あえて刺激的なことを書きますが、新卒社員に辞められてしまうことは管理職にとっては大恥です。それはあなたが、あなたの率いる組織を魅力的なものにできていない証拠です。

最後に、宣伝めいてしまいますが、新卒採用に関するビジネス書籍をこのほど上梓することになりました。題して『新卒採用力が会社の未来を決める!』。マネジメント社より、来月6日発売予定です。ぜひご一読を賜れば幸いです。