新卒社員1600人が「まず会う」 リクナビの新卒採用 リクルートキャリア人事部・新卒採用グループの菱川貴仁マネジャー
1962年、限定的だった企業の採用情報を一般に公開する「企業への招待」を創刊し、新卒者と企業をつなぐ新たなビジネスを生んだリクルート。その創業以来のビジネスを今も担うのが、就活ナビサイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)だ。採用市場を知り尽くすリクルートキャリアは、どのようなやり方で学生と接触し、採用しているのか。人事部・新卒採用グループの菱川貴仁マネジャーに聞いた。

リクルートキャリア人事部・新卒採用グループの菱川貴仁マネジャー
■エントリーシートはない
――採用のスケジュールを教えてください。
「3月1日から学生と社員が少人数のグループに分かれて話す場として、会社説明会『ROOTS(ルーツ)』を始めています。エントリーは5月12日に締め切ります。適正・能力検査の『SPI』を通過した人に、6月1日以降の面接にきてもらいます」
――エントリーシートはどんな内容ですか。
「最初の段階では、エントリーシートの提出はありません。面接が進んだら、複数の企業の応募に使えるリクナビのサービス『オープンES』を出してもらうタイミングがあります。分社前のリクルートの頃もエントリーシートはありませんでした。学生はリクナビに基本的なプロフィルを記入して応募する。その後、こちらから電話をかけてまず会う、という流れでした。今も基本はそうです」
「原理原則として『まず会いたい』のです。合否の判断はエントリーシートではできない、会ってみないと分からない、というのが本音です。膨大なエントリーシートを書くのは負担に感じる学生もいるのでは」
■学生に「とにかく会う」
「当社はとにかく面接が多いです。入社2年目以上の社員は基本的に全員、採用活動に関わってもらいます。1600人以上の社員が、面接や『ルーツ』に出ています」
――「ルーツ」について教えてください。
「社員と学生が会う場は、『ルーツ』とOB・OG訪問のみです。大学主催の企業説明会には出ていません。説明会といっても、会社側が自社の宣伝をする場ではなく、社員と学生がフラットな関係で話す場を用意するのが大切だと思っています」
「『ルーツ』は2015年に始めました。学生2、3人に社員が1人ついて、過去のどん底体験や大切にしてきた価値観、将来なりたい姿について2時間かけて話します。業務の内容は話しません。社員と学生あわせて200人ほどの、このイベントを5月のエントリー締め切り直前まで計30回ほどやります」
リクルートキャリアの本社が入るビル。新卒採用のシーズンには社員が「総出」で学生と接触する(東京・千代田)――リクルートキャリアは、採用で使われる適性検査「SPI」を設計した会社でもあります。選考過程でどう使っていますか。
「リクルートキャリアとして求める仕事、業務を遂行する上での必要な能力があるかどうか、一定の水準で見ています。ただ、SPIは選抜の手段というよりも面接官の補足ツールです。たとえば、『この学生は内気だな』と分かったら、回答しやすいように質問してみよう、というように使えます。当社では、むしろ配属を決めるときに利用します。上司との相性なども分かりますから」
■知りたいのは「何を大事にしてきたか」
――6月からの面接のやり方を教えてください。
「時間は大体1時間、回数は人によって違います。効率は悪いですが、短い時間では分からないこともあります。合否に迷ったら、もう一度会ってみる、というのが原則です」
「1次面接は社員1人に対して学生が1~3人、2次面接以降は1対1です。私たち採用担当は、5月に入ると全国の社員に面接のトレーニングをしてもらうため、全国を回ります。2、3時間の研修で『こういう学生がいたら、あなたはどんな質問をしますか、どう合否をつけますか、またそれはなぜですか』ということをひたすら繰り返します」
「面接官が持つ学生の情報は、名前と面接を待つ間に書いてもらう『モチベーショングラフ』の2つです。『モチベーショングラフ』は、これまでの人生の浮き沈みをグラフ化してもらい、よかったとき、つらかったときの理由や出来事を書いてもらうものです。合否の判断には使わず、質問のきっかけにしています」
――面接では、どんな質問をするのですか。
「決まった質問はまったくないので、人によって違います。ただ、基本的には、その人がどんなふうに生きてきたか、何を大事にしてきたのかを問います。何をやってきたか、も聞きますが、裏側にある『なぜ』を深掘りします。実績の大小ではありません。主将だからすごいのではなく、なぜそこまで頑張ったのか、どんな葛藤があったのか、『その人らしさ』につながるものを知りたいのです。面接の最後には、合格か不合格かを問わず、その場で感じた学生の持ち味を必ずフィードバックします」
「志望動機のような質問は、基本的にはしません。あまり重要ではないですね」
――採用する人の基準は。
「昔からリクルートは、自分の意思で自ら動く人たちを採用していて、それは今も変わりません。会社からこういわれたから動く、というよりは、自分から旗を立てて動く人のほうが親和度は高いと思います」
■面接は「リクルートスーツ」でなくても
「『自分は内気だ』と思っている学生でも、深掘りすると、とても自発的な人だったということはよくあります。だからこそ、面接に時間をかけている。分からないと思ったらもう一度面接する。それほど、人を見るのは難しいと思います」
「本来、自分の持ち味を自覚して生きていれば、人間はパワフルな生き物です。就職活動は合否があるので、どうしても自分を偽ってしまうときがある。しかし、学生には『自分らしくていいのだ』ということを、採用活動のなかで伝えたい。面接では服装も自由です。もしサンダルで来たら理由を尋ねるかもしれませんが(笑)、それも人となりを知りたいからなんです。面接を、自分らしさを知るきっかけにしてもらえればいいなと、いつも思っています」
■内外でインターンシップ、採用とは無関係
――インターンシップは実施していますか。
「実施していますが、採用とは完全に切り離し、学年も専攻も不問にしています。大きく分けて、9月に実施する海外インターン『GLIP(グリップ)』と、12月と2月に行う国内インターン『SPIRIT(スピリット)』の2つです。グリップは12年から始め、去年と今年はミャンマーに行きました。スピリットは15年から始め、2月は宮城県女川町に行っています。どちらも1週間ほどの間に現地で地域や企業が抱える課題を考えるのですが、その過程で学生自身にも自分の大切にする価値観やキャリアについて考えてもらいます」
――採用に関係ないのなら、目的は何ですか。
「最大の目標は、社会の環境が大きく変わる今、次世代のリーダーとして必要な自分の思いをみつけてもらうことです。外的スキル、いわゆるロジカルシンキングのような能力を育てたいわけではないんです。国内、海外とも30人ほどの参加者が6人くらいの班になり、メンターの社員と振り返りをする時間を多く取って、自分と向き合ってもらいます」
「インターンを通じて、学生にリクルートキャリアを知ってもらい、ブランド認知度が上がるのも、もちろんメリットです。結果的にインターンを経て入社した学生もいますが、選考は一からです」