にわかに脚光を浴びる高卒採用という選択肢 大卒の採用は厳しくなるばかり

新卒にわかに脚光を浴びる高卒採用という選択肢 大卒の採用は厳しくなるばかり

人手不足がいよいよ深刻化しています。新規採用するため募集をかけたが、いい人が応募してこない。あるいは人材紹介会社に頼んだけれど、期待したような成果が得られなかった……という話を、経営者や人事部から頻繁に聞く時期が長く続いています。なかでも、大学生の新卒採用では、企業は大苦戦を強いられています。打つ手はないのか、いったいどうしたらいいのでしょうか。

短期決戦が影響を及ぼしている?

大卒の採用難については、昨年の前提条件の変更も少なからず影響を及ぼしているようです。経団連の会員企業を中心に大企業は2017年卒の大学生採用は選考開始時期が8月から6月へ変更。選考プロセスは短期決戦になりました。

そもそも企業の求人数がさらに増加する中、学生の数は変わらない状況ですから、大抵の企業で充足率は減少することになります。

マイナビの調査によると、昨年の採用活動は「前年より厳しかった」の41.9%と「前年並みに厳しかった」の47.0%を合わせた、「厳しかった」という声が88.9%とかなり多い結果となりました。

厳しかった理由については、「母集団の確保」「セミナー動員」「辞退の増加」などに加えて「採用活動スケジュール変更への対応」となっています。

大学生の新卒採用で企業が充足するなんて無理。そんな時代が当分は続きそうです。ではどうしたらいいか。みなさんと考えてみたいと思います。

こうした大卒の人手不足は、中小企業ではますます厳しさを増す一方です。取材した従業員500人以下のある中小企業では、採用が目標に達成したと回答してくれた会社は皆無でした。

たとえば、北関東に本社を置く半導体関連の製造業。この会社では、会社説明会を行っても学生がほとんど集まりません。当然ながら、その後の選考につながる候補者を確保できなかったので、採用を中止したとのこと。

別の中小企業では、何とか内定を出した数名の大学生が、その後に大企業から内定を受けて全員が「辞退します」ということになり、準備していた内定式の会場を泣く泣くキャンセルした……という厳しい現実に直面したそうです。それくらい大学生の新卒採用に苦戦している中小企業が増えているのです。

ならば、どうしたらいいのか? 来年度以降、説明会を早く行い、母集団と呼ばれる候補者をなるべく多く確保しようと考える企業が増えると言われています。そして、さらなる短期決戦で早めに内定を出して、入社につなげたいという構想のようです。

中小企業の経営者や人事部に取材しても、インターンシップや大学のキャリアセンターとの関係強化など、採用活動の早期化を加速する施策をいくつかあげてくれました。

ただ、こうした施策で中小企業は大学生の採用を実現できるのか? 仮に早めに内定者を確保できたとしても、採用活動が中小企業よりも遅い大企業に根こそぎ「後出しじゃんけん」で負けて、同じような悲しい結末になってしまうだけに思えます。

中途より新卒採用が重視されてきたが…

日本の多くの会社では中途採用より新卒採用を重視する傾向があります。中途採用が即戦力として、これまでの仕事ぶり=経験や能力で選考するのとは異なり、新卒は適性・素養=ポテンシャルを見極める採用です。働き手の職業観をイチから育てることができるので、定着率が高くなる、企業理念を浸透させやすい、人件費も比較的安いなどが重視される理由と言われます。

こうした企業のスタンスは新卒主義などと言われて、日本の採用市場で長く重視されてきました。大学生の新卒採用で企業は成功体験を積んできたという実感もあるのでしょう。筆者も日本の大企業が「現在までの成功」に至る重要な要因の1つに、大学生の新卒採用(しかも一括)があると思います。そうしているうちに、採用支援にかかわる企業が、中小企業にも大学生の新卒採用を勧めるようになりました。古くはリクルート社、現在ではさまざまな採用関連企業が、

「優秀な人材を確保したいのであれば大学生を採用するべきです」

と企業に提案。現在は大企業だけの手法ではなくなりました。ただ、本当に足りなくて採用できません。コストばかりかかるので、採用すること自体を諦めそうになる中小企業が増えています。

こうした中で、「大学生」以外の新卒を求め、高校生の採用への注目度があがってきています。

これは近年あまりなかった動きです。かつて大学生の求人倍率が高いときも、高校生の求人倍率は高くならない、そんな時代もありました。

2000年代前半、バブル崩壊から企業が立ち直りをみせて、大学生の採用においては求人倍率が徐々に回復。リーマンショック前には学生の売り手市場にまでなっていました。ところが、その時期に高校生の求人倍率は0.5倍前後と、求人が足りないため就職難が続いていたのです。こうした背景から高卒で就職せず、大学に進学する高校生が増えて、少子化にもかかわらず大学生が増加する現象へとつながっていったのでしょう。

高校生の採用は増加傾向

一方、直近でも約18万5000人の高校生が就職活動をしています。そうした高校生を積極的に採用しようとする求人が、最近、急激に増えてきているのです。

厚生労働省の発表によると今年2017年3月に卒業する高校生の求人は、全国平均で前年同期比0.21ポイント上昇の1.75倍となり、1994年卒以来23年ぶりの高水準と言われています。求人を業種別にみると建設業や製造業、卸売・小売業などが大幅に増加しています。

こうした状況と平行して、実際に「絶対に大卒とこだわるのではなく、高卒を4年間かけて育てるという手もあるのでは」との意見をよく耳にするようになりました。

働くということに基本的には年齢は関係ありません。大卒者には大学受験を通過しただけの忍耐力や集中力などはあるかもしれませんが、かといって、大学に入って仕事の実務を学ぶことはさほどありません。大学生も高校生も、基本的には実際に正社員として就労した経験がないとなると、仕事の実務的には差はなく、やる気次第、ということも多いと思います。高校生を積極的に採用する企業の人事部からは、4年かけて人材育成する覚悟さえあれば、社会に出て必死に働くという姿勢が大学生よりも強い人も多いという声も聞きました。

ちなみに筆者が勤務していたリクルート社では、入社当時は積極的に高卒採用をしていました。ということは大卒で入社したタイミングに、社会人経験4年目の同世代がいたのです。この同世代は大卒の新入社員を大きく刺激していました。4年間も経験を積んでいるので、当然といえば当然です。

もちろん、時代背景が違います。大卒採用が多くなった今の時代、高校生を採用しよう……となると、それはそれで、大卒とは違う採用プロセスを取ることになり、手間がかかります。たとえば、ハローワークなどでは、活動開始日が厳格に定まっています。あるいは求人活動を行うときには、各労働局等が実施する学卒求人説明への参加が求められます。しかし、手間を惜しんで高校生採用の可能性を見送るべきか。一度企業は検討してみるタイミングではないでしょうか。