ヤフー「新卒一括採用廃止」、どう思いますか 肝はポテンシャル重視、入社後に育て上げる

新卒ヤフー「新卒一括採用廃止」、どう思いますか 肝はポテンシャル重視、入社後に育て上げる

2016年10月3日。ヤフーは「新卒一括採用を廃止し、新卒や既卒、第二新卒など経歴に関わらず30歳以下の方を対象とした『ポテンシャル採用』を開始する」と発表した。「新卒一括採用廃止」という言葉からは、即戦力採用だけになるのでは、との誤解が生まれやすいが、実際は逆だ。その狙いは、新卒者を含めた”ポテンシャル重視”の採用をもっと強化しよう、というものである。

即戦力のみ、というわけではない

ヤフーではこれまで、大学などの新卒者を対象とする「新卒採用」と、特定の職種について他社での就業経験を持つ人を対象とする「中途採用」を行っていた。ただし、これだと募集職種の就業経験のない人は、専門分野の知識・スキルが求められる「中途採用」の枠組みからはずれてしまい、採用選考の機会はないことになる。

たとえば、金融機関で働いている人がインターネットに関心を持ったとしても、ITやWEBの専門知識が求められるとなると、応募のハードルは高くなる。一方、フィンテック(金融+技術)への関心が高まっているIT業界としては、金融の知識を持った人も必要となってきている。それらの人にも応募の機会、採用選考の機会を提供しようとするのが、今回の”ポテンシャル採用”の狙いだ。

応募条件は入社時に18歳以上、または応募時に30歳以下であれば、新卒・既卒を問わず応募できる。職種はエンジニアやデザイナー、営業職など全職種を対象としており、通年で応募が可能となっている。既卒の場合には入社時期は通年で選択可能、新卒の場合には卒業時期に合わせて4月もしくは10月入社としている。他社で就業経験のある既卒者であっても、新卒者と同じ基礎的な教育研修から受けられるのが特徴だ。

ヤフーのポテンシャル採用は、従来の「既卒者も応募可能な新卒求人」とは、考え方が根本から異なる。既卒者も応募可能な新卒求人では、あくまでも募集のメイン対象は新卒者であり、既卒者も入社時期は4月(または10月)とされる。これに対してヤフーのポテンシャル採用は、募集の対象は新卒者を含む、18歳~30歳の人すべてである。

つまりメイン対象が新卒者とされているわけではない。それどころか新卒者は募集対象の一部でしかないといった方がいいだろう。したがって、入社時期は4月に限定されることなく、通年である。新卒者の場合には卒業時期を考慮して、4月もしくは10月入社となるだけである。

即戦力というより、入社後に育成する

既卒者も応募可能な新卒求人では、本来は新卒者を対象とした採用枠を既卒者にも開放しているわけで、既卒者から内定者が出れば、その分だけ新卒者の採用枠が減ってしまうことを意味している。つまり、既卒者にとっては応募企業の選択肢が広がりメリットのある制度ではあるが、新卒者からすれば自分たちの採用枠が狭くなる可能性を持った”歓迎されざる制度”といってもよかった。一方、今回のヤフーのポテンシャル採用は、新卒枠を既卒者にも解放したという考え方ではない。新卒者、既卒者の区別のない、若年層の採用枠という考え方に立っている。

新卒採用を語るとき、日本の新卒一括採用が学生の就活をダメにしている、ミスマッチによって3年で3割の早期離職者を生んでいる、もっと欧米の就職システムを見習うべきだ、といった意見が出てくる。

新卒一括採用廃止と聞くと、日本型の採用システムから欧米型の採用システムへと近づいたように感じられるが、今回のヤフーの考え方は、実は全く逆である。欧米型の採用システムへ近づくどころか、従来の新卒一括採用よりもさらに日本型の採用システムを強化した、といった方がよいだろう。

ポテンシャル(潜在能力)採用とは、日本の新卒採用における概念であり、入社後に自社で育てることを前提にしている。一方、欧米型の採用は、日本での既卒者採用に多いように、特定の職種やポジションを前提にして、就業経験やスキルを重視した即戦力採用である。ところが、今回ヤフーは、既卒者採用においても入社後の育成を伴う、日本独自の「ポテンシャル採用の概念を持ち込んだのだ。

さらには対象年齢においても、青少年雇用機会確保指針で第二新卒として定義された「卒業後3年以内」とされていた枠を、「30歳以下」にまで広げている。また入社時点で「18歳以上」としており、大学卒業を前提にしているわけでもない。短大・専門学校卒はもちろんのこと、大学中退や高卒者までもが対象に含まれる。学歴にとらわれない、ポテンシャル重視の姿勢が貫かれているといえる。

3分の2の企業は新卒一括採用を継続​​

新たな動きが出ている一方で、大多数の企業で新卒採用の考え方は変わらない。HR総研では、企業の採用担当者を対象に、新卒一括採用を継続するのか、それとも廃止する方向で考えているのか、今後の採用方式の方針を聞いている。結果を見ると、3分の2以上の企業が「新卒一括採用を継続する予定」と回答し、「通年採用をすでに導入済み、または導入する予定」(9%)と「通年採用の導入を検討する」(16%)と併せても25%にとどまる。

通年採用は、採用担当や企業側の負担が大きく、どの企業にもできるものではない。対応できる企業は、ある程度の規模や採用部門のマンパワーのある企業に限られてくる。ヤフーの新卒一括採用廃止の報道を受けて、他社の採用担当者はどんな感想を持ったのだろうか。寄せられた採用担当者のコメントを見てみよう。

・新卒・既卒の分類を止めて採用することだろうと理解した。飛び級で若者を採用(内定?)することもあれば、競合他社からのヘッドハンティングもあるということで、外資の競合企業の採用状況を考慮すれば当たり前の選択だと思う(従業員規模301~1000名、サービス)。
・本来はそうあるべきだが、全体としての大きな流れになるには時間がかかると思う。比較的、特徴のある人材を採用するにはよい手段、と考える(従業員規模1001名以上、サービス)。
より本来の意味のインターンが、採用の正規ルートになる。早期から学生へのキャリア教育および、企業認知度向上をする必要がある(1001名以上、メーカー)。
・一括採用廃止となると、採用担当としてはスケジュールが読めなくて辛いところもあるので、広報解禁は一律にして、選考開始は各社各々スタートがよいと思う(1001名以上、情報・通信)。
・少子化対策などから画一的な新卒採用活動はどんどん変わっていくと考えている。(1001名以上、商社・流通)。
・新興企業、IT企業、ベンチャー企業の動きは、特別な動きとして見られている。歴史ある重厚長大の業界から声が出だしたら、社会全体が変化していくものだと思う(301~1000名、サービス)。
・人材もジャストインタイムの時代だ。必要なときに必要だけ採用する。年次スケジュールでいつも市場が動いているわけではない。ある意味で合理的だ(301~1000名、メーカー)。

・各々の会社の人事戦略や求める人材像によって、新卒一括採用が有効な企業もあれば、意味をなさない企業もあるため、一概にはいえない。もっとも、採用戦略といえるものをこれまであまり描く必要がなかった企業からすれば、改めてその意義を問うきっかけとなると考える(1001名以上、メーカー)。
・経験者(即戦力)の採用を強化していくイメージを持った。学校を卒業してすぐに採用をするのではなく、自身のキャリア目標を持った経験者を採用していく方が、ミスマッチが少ないのかもしれない(300名以下、サービス)。
・グローバル社会の中で社会全体がその流れになっていくのが当然だと感じる。よい人材を確保するために時期的制限を設けるのは不利となる(300名以下、メーカー)。
・このような企業が出てきてよいと思うし、企業側にとっても学生側にとっても、もっと自由度がある形態が望ましいと思う(300名以下、メーカー)。
・就職活動の多様化だけでなく、新卒以外にも平等に採用の機会を提供して優秀な人材を採用する、よい方法だと思う(300名以下、情報・通信)。
・自社にあった採用活動を実施すべきで、ヤフーにとっての採用のあり方を考えた結果だろう。参考にはなるが、それほど騒ぐ必要はない、と考えている(1001名以上、メーカー)。
新卒一括採用はデメリットもあるとは思うが、現状ではメリットの方が大きいと考えている。このまましばらく続いていくのではないか(1001名以上、情報・通信)
・新卒採用専任の担当者が数多くいる大企業なら可能だが、中小企業には一括採用でないとマンパワー的に厳しい(301~1000名、メーカー)。
・理想は通年採用であるが、採用にかかる人員・労力は大きくなると思われる。また、新卒一括採用は若年者の雇用を上げることに貢献していると思うので、なくなると就職できない学生が増える可能性があると思う(1001名以上、メーカー)。
・その企業に合う採用方法を導入すればよい。学生は通年だとどうやって進めていいか困るのではないか?(301~1000名、メーカー)。
・大手企業、ベンチャー企業など、マスコミに取り上げられやすい一部の企業の話であって、弊社のような普通の中堅企業では対応することのできない手法に思う(301~1000名、メーカー)。

ヤフーの成否を各社は注視している

結局、通年採用は理想形ではあるが、予算やマンパワーを考えると、とても導入はできないと足踏みをする企業がまだまだ大半のようだ。

ただし、今回のヤフーの試みが、著しく目覚ましい採用成果を挙げることができたとなったら、追随する企業はもっと出てくることであろう。もしかしたら、IT系に限らず、腰が重いとされる重厚長大企業や、お堅い金融系企業にも広がるかもしれない。就活生もヤフー型の「新卒一括採用廃止」に注目しておいた方がいい。