総合人材集まり心和む入居者 保育所併設の高齢者施設 増加
人材不足が続く介護現場で働きやすい環境を整備しようと、保育所併設の高齢者施設が増えている。仕事と子育ての両立や、交流を通じてお年寄りの心のケアにもつながるなどメリットは大きいが、運営費負担や感染症対策などの課題もある。 (山本真嗣)
|
保育所に預けられた従業員の子どもたちとふれあう高齢者ら=千葉県白井市で |
![]() |
「いないない、ばあ」。赤ちゃんの笑顔にお年寄りらの頬が緩む。千葉県白井市のサービス付き高齢者向け住宅などの複合施設「リハモードヴィラ白井」。併設保育所の子どもたちが遊びにくると、あっという間にお年寄りの輪ができた。
長男(3つ)と七カ月の次男を預ける看護師の井出弥生さん(35)も、わが子を見つけてにっこり。「近くにいるので安心」と午後六時近くまで働く。四年前、妊娠と引っ越しを機に別の施設を退職。出産後の職場探しでは保育所併設が決め手となった。急な発熱や授乳が必要な場合は連絡が入り、すぐに様子を見に行ける。
保育所はほぼ年中無休で、午前八時半から午後六時まで開所。定員十七人のうち十二人が職員の子どもだ。施設を運営する「酒井医療」(東京)の松本明彦・在宅事業部長は「良い人材に働き続けてもらうには、保育所は必需」と話す。
名古屋市東区の有料老人ホーム「あんしんせいかつ葵」も、一階に保育所を開設。長男(1つ)を預ける介護士の榎本恵理香さん(29)は「お年寄りが孫のようにかわいがってくれる。いろいろな人と接し、社会性や人を思いやる心も身に付けてくれれば」と話す。
厚生労働省によると、二〇一二年度の介護職の離職率は、全職種平均(14・8%)を上回る17%。社会福祉振興・試験センター(東京)の調査では、介護福祉士の離職理由は「結婚、出産・育児」が31・7%で最も高い。
国は団塊の世代が全て七十五歳以上になる二五年には、最大二百四十九万人の介護職員が必要と試算。現状は百五十三万人で、同省は「景気回復により、産業間で人材の奪い合いになっている。介護職は女性が多く、保育環境を整えるのは有効」と話す。
ただし、課題もある。あんしんせいかつ葵を運営する「安心生活」の飛田(ひだ)拓哉社長(37)によると、保育所には保育士四人を配置しており、運営費は年間一千万円。国の助成を受けるが、保育所の運営は赤字だ。助成は五年で打ち切られることもあり、国が一一年度までに助成した事業所内保育施設七百二十件のうち、八十一件が財務状況などを理由に廃止・休止となった。来年度から期限のない新しい助成制度もできるが、施設の一部を地域に開放するなどの条件が付く。
加えて「抵抗力の弱い高齢者や幼児は感染症の管理が重要」と飛田さん。交流時は施設の床やドアノブの消毒、手洗いを欠かさない。
子どもが成長し、大規模な認可保育所を希望したとき、事業所内保育所があるのを理由に、入所の優先順位を下げる自治体もある。全国で保育所の運営委託を受ける「グローバルブリッジ」(東京)の貞松成(さだまつじょう)社長(32)は「保育所は従業員の福利厚生だけでなく、世代間交流もできる。自治体も含め、支援の充実が必要」と話す。
