10人採用するなら1000人に声をかけよ  1000→85→13→10の法則

総合10人採用するなら1000人に声をかけよ  1000→85→13→10の法則

「なぜ、ビズリーチには人が集まるのか?」──。2009年4月にサービスを立ち上げてから5年を迎えた株式会社ビズリーチ代表の南壮一郎は、たくさんの人たちからこのような質問を受けてきた。仲間と2人で始めた会社は、2014年4月現在、従業員数約270人に成長した。

ただし、最初から人が集まってきたわけではない。多くの成功者から採用の仕方を教わり、それを自社流にアレンジすることでうまく回り始めたのだ。じっと待つだけの「草食系」では優秀な人はやって来ない。「肉食採用術」のすべてを公開する。あなたの会社も採用強者を目指していただきたい。

肉食採用の教え:優秀な人材との出会いに、一発的中はありえない。

人材採用も数字で管理

今、あなたは営業に携わっているとします。売り上げ目標を達成するために毎月10件の成約を取らないといけません。この目標を達成するには何をするべきでしょうか?

いちばん確実な方法は、必要なプロセスを分解し、それぞれのプロセスに対して具体的な数値目標を置く、すなわちKPI管理をすることです。KPIとはKey Performance Indicatorの略で、目標の達成度合いを測る重要な定量的指標を指します。

営業の場合、一般的には、全体の案件数、顧客の訪問回数、成約率、受注単価、解約件数などが重要な指標となります。これを日次や週次、月次ごとに計測し、プロセスの進捗を管理します。

この管理手法は、個人だけでなくチームにも応用することができます。誰がいつ、どこまでやるべきか? その達成度合いはどのくらいか?

すべてを可視化することで、時には仲間に手を貸したり、チームで新規開拓に当たったりなどの対策を講じることができるのです。

営業だけではありません。生産やマーケティング、商品開発や品質管理といった仕事であっても、ゴールを達成するためにプロセスを分解して、それぞれの指標を管理することが重要であり、このKPI管理の考え方は有効に働きます。

このごく当たり前の考え方は、人材採用でも活用できます。自社に興味を持ってもらうために、どんな方法で何人にアプローチできたのか? その結果、自社の採用面接に何人が受けにきたのか? そのうち何人が入社意欲を持ってくれたのか? こうした数値管理を行って初めて、確実な採用へと結び付けることができるのです。

一見、運命的な「ご縁」や「出会い」も、天から降ってくるものではありません。きちんと数値目標を追いかけて、できることをやりきってこそのご縁であり、出会いなのです。

1000→85→13→10の法則

毎月10人の中途採用者を仲間に迎える。これがビズリーチのこの1年間の目標です。

10人採用するには、13人に内定を出す必要があります。13人に内定を出すためには、85人を面接しなければならない。85人に面接をセッティングするためには、毎月、1000人に声をかけなければならない。これが、現在のビズリーチにおける人材採用のKPIです。

この数字は、数年前はもっと厳しいものでした。13人に内定を出すためには、少なくとも200人と面接をしなければならなかったからです。創業時と比較すると、会社が少しずつ大きくなっていき、知名度も少しずつですが上がっていくにつれて、採用の「成約率」はどんどんよくなっていきました。

こうした考え方は、営業であれば当たり前です。10件の契約のためには13件の口頭内諾、85件の商談、1000件の見込み顧客を探すテレアポや飛び込みをこなさなければならない。営業なら、見込み顧客を見つけるために、こうした数を追う行動を地道に続けることがごく普通です。

それなのに、なぜか採用になったとたん、数字は「ご縁」や「出会い」という、柔らかい言葉に包みこまれ、主体的に目標を達成する意識が薄くなる傾向にあります。「ご縁」や「出会い」は、待っていてもやってきません。採用に強い企業ほど、この1000人への声がけに力を注いでいます。

ウチのエンジニアもナンパされた!

そんな「肉食」なガツガツした採用をしているのは、知名度のないベンチャーだけだと思われるでしょうか?

実は違います。誰もがその名を知っていて、入社にはとても難しい試験が課せられると評判のグローバル企業も、よい人材のスカウトに必死で、優秀な人材の確保に果敢に挑んでいます。

そのグローバル企業からビズリーチのエース級のエンジニアにも、「一度お会いしませんか?」というナンパ……いや、スカウトのメールが2カ月前に来ました。なんでも、エンジニアたちがソースコードを公開している「Git Hub(ギットハブ)」というサイトで彼の書いたプログラムを見つけ、直接、声をかけてきたのだと言います。

あらゆる手法を駆使して優秀な人材を探し、直接、声をかけていく採用手法(ダイレクト・リクルーティング)は、世界では当たり前なのです。

1000人の母集団を作るコツ

とはいえ、1000人の母集団を毎月、自ら作っていく方法がわからない、という人も多いでしょう。でも、厳しいことを言わせていただくと、そのKPIをクリアする方法を探してトライしていくことこそ、採用担当者の仕事です。やり方は、いくらでもあります。

たとえば僕は、創業初期も今でも、人が集まる場があると聞けば、どんどん顔を出すようにしています。異業種交流会や、仲間の誕生会、同窓会、学生の集まり。本当に、どんなところにも行きます。そして、会った人全員に事業の構想を話し、誰か優秀な人がいないかを尋ねて回ります。

その熱が度を過ぎて、エンジニアの集まりから出入り禁止を申し渡されたエピソードは、第1回にも触れたとおりです。けれど、人材採用は営業と同じであると考えれば、落ち込んでいるヒマはありません。自分の行動を反省し、次に生かすまでです。

現在では「リンクトイン」、それから、自社サービスである「ビズリーチ」など、直接、声がけできるデータベースが充実しています。当社のエンジニアがスカウトされた「Git Hub(ギットハブ)」も、優秀なエンジニアを探すのにうってつけの場だといえるでしょう。そこには在籍する企業名や仕事の履歴などが明らかにされている場合もあり 、当社に興味を持ってくれそうな人を選んでお声かけするのにとても参考になります。

また、ビズリーチでは「社員全員が採用担当」という考えの下、会社の仲間たちがそれぞれ、「この人と一緒に働きたい」という人に積極的に声をかけています。従来どおりの方法である、転職サイトや人材紹介会社の活用ももちろん行っています。1000人の母集団を作るのは、結局、採用担当者の情熱と数字を追いきる力次第です。毎月10人を採用をするには1000人の優秀な人材に声をかけなればならないとわかったら、その数字は、何としてでもクリアするしかないのです。

マッチングの精度を上げる方法

目標採用数をクリアするためには、大きな母集団を作って、とにかく会社のことを伝えていくしかない点は、おわかりいただけたと思います。

しかし、数字を追うあまり、応募者にミスマッチな人が増え、マッチングの精度が下がってしまうのではないかと、疑問を持つ人もいるかもしれません。事実はむしろ逆で、たくさんの人にお会いすればするほど、精度は確実に向上していきました。

たとえばリンクトインやビズリーチなどで、時には十分ではない経歴情報でお声がけしなくてはならない場合。この業界のこの会社とうちの会社の社風は共通するところがあるとか、こんな職務経歴書を書いてくる人はこういう傾向が強いなど、数をこなすうちにわかってくるコツや勘があります。

何百人、何千人と面接をしていると、相手を一目見るだけで「この人はうちの会社に合うか否か」が直感的にわかるようになってきます。こればかりは、他人に説明するのが難しいスキルです。ある程度、数をこなし、時には失敗も重ねないと身に付かないスキルと言えるでしょう。

考えてみれば、ほかの仕事も同じです。おすし屋さんが築地でよい魚を見極められるようになるのも、経験と数が勝負です。お医者さんだって、手術経験が5人の先生よりも、500人の先生のほうがその手術に精通していると判断されるはずです。

このように、ほかの仕事であれば数をこなしてスキルを上げていくのは当然のことなのに、採用活動になったとたんに、「ご縁」「出会い」といった言葉に逃げてしまう人が多いように感じます。

競争力の高いグローバル企業においては、すでに人材獲得競争が熱を帯びています。優秀な人材の採用を止めてしまったら、これ以上の成長はかなわない。そのぐらいの気持ちで採用に向き合っていかなければなりません。